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法政大ラクロス部、創部31年目で体育会加盟 歴代の先輩たちの思いをつなぎ

創部31年目で、法政大ラクロス部は男女ともに第一体育会加盟を果たした(すべての写真提供・法政大学ラクロス部)

今年度より、法政大学第一体育会に男女のラクロス部と、水上スキー部が加盟した。ラクロス部は創部から31年。立ち上げメンバーの一人で、現在、総監督としてチームを支えている加藤武さん(49)は言う。「奇跡のようだという思いと、感謝の気持ちで一杯です」。この31年の歩みと、新型コロナウイルスの影響下で学生たちが何を考え、どう行動しているのかを聞いた。

創部時は5人、河川敷や公園からスタート

1986年に慶應義塾大が国内で初めてラクロスを始め、時を同じくして多くの大学が新しいスポーツへの挑戦を始めた。その流れが法政大に入ったのが90年、加藤さんが入学して間もないときだった。加藤さんは法政大学第二高(神奈川)時代にラグビーをしており、県大会で準優勝を経験。当時はラクロスが国内に入って間もなかったこともあり、「いまから始めたら日本代表も狙えるんじゃないか」という期待があったという。

初期メンバーは加藤さんを入れて5人。授業前の朝7時から多摩川の河川敷や都内の公園に行き、仲間とパスをし合ったり、壁打ちをしたりと、日々トレーニングをしていた。ときには他校の練習に混ぜてもらう“武者修行”も決行。「場所も時間もなかったですけど、純粋にパスができるようになるのも楽しかったですね」と当時を振り返る。

創部当時は、河川敷や公園が練習場所だった(左端が加藤さん)

2年目には同じ附属校の学生を呼び込み、部員は一気に25人になった。1、2年生だけで挑む初めての公式戦で2部を勝ち上がり、1部入りを果たす。3、4年生のときには関東の決勝リーグ(FINAL4)を目指していたが、ともにあと一歩で逃した。とくに3年生のとき、東大に勝てば決勝リーグという大事な試合で、加藤さんが最後に放ったシュートが相手ディフェンスに阻まれ、7-8で敗れた。「ボールが空に高く上がって終わったんです。いまでもあの光景は忘れられないんですよね」。法政大卒業後、クラブでラクロスを続け、日本代表にも選ばれたが、あのときの悔しさはずっと胸にある。

在学していたときにも一度、第一体育会入りを志したことはある。しかし大学に相談してすぐに、容易なことではないと気付かされた。加藤さんが過去を調べてみると、62年に創部した少林寺拳法部が第一体育会に加盟できたのは創部から15年程度経ってからという状況だった。そのため、当時のラクロス部は同好会として運営していた。

体育会加盟に向けて男女一体運営、それが法政の強みに

ときが流れ、2008年、学生たちの中で改めて第一体育会加盟を目指す機運が高まった。この年に第二体育会に加盟。当時の加藤さんはラクロス界からすでに離れていたものの、学生たちの思いを受け、OBとして学生たちに手を差し伸べた。まずは第一体育会の準加盟を目指す動きの中、加藤さんは13年より月に数回、練習にも顔を出すようになった。翌14年にはOBOG会長となり、OBOGも一体となって第一体育会を目指す体制を整えた。

加藤さん(中央)は2016年より男女の総監督として指導している

また大学から「男女一体運営での第一体育会加盟が望ましい」というアドバイスを受け、14年には一体運営に切り替えた。日々の練習は別々ではあるものの、新入生のオリエンテーションや4年生の送別会などで、年に数回、一緒にイベントを実施。17年には向上委員会を立ち上げ、月に1度、男女の各学年2人ずつが出席し、現状の課題を共有し合う場を設けるようになった。その会には加藤さんたちコーチ陣も参加する。加藤さんは言う。

「向上委員会ではプレーそのものだけではなく、マナーとかコミュニケーションとか、学生生活そのものについても話し合っています。最初は私たちコーチがファシリテーターになって議論を促していたんですが、いまでは学生たちが積極的に意見を述べていますね。最初は互いに照れがあったり、やりにくさを感じていたりしていたと思いますけど、いまは学生自身が向上委員会の意義を考えて行動しています」

他大学では男女は別の組織として運営しているところが多い中、法政大は第一体育会を目指すという共通の目標の下、互いに切磋琢磨(せっさたくま)できる環境が整っている。それが法政大の特長であり強みでもあると、コーチ陣も学生たち自身も強く感じている。

16年、男女のラクロス部は第一体育会準加盟として承認された。「第二から第一になることで、補助金などの支援体制が大きく変わるわけではありません。学生たちには正式に体育会として認められることで就活に役立てたいという気持ちもあったと思いますが、学内の最も大きな組織の中で部活ができるということで、みんなのモチベーションを高めたいというのが大きかったと思います」。この年に加藤さんは男女の総監督に就任。第一体育会として正式に加盟が認められるために、さらに強固な組織作りに取り組んできた。

男女関係なく互いに意見し合える環境が、法政大ラクロス部にはある

学生チームは毎年メンバーが変わる。世代が変わりながらも学生たちは歴代の先輩たちの思いを受け継ぎ、第一体育会加盟に向けて前進を続けてきた。その一方でOBOGや保護者たちの絆(きずな)も毎年、深まっていた。そして今年度、大学の関係者やラクロス協会の協力も得て、男女が正式に第一体育会として承認された。創部から31年。「男女とも31年間に亘(わた)り、OBOGや現役生たちが襷(たすき)をつないできてくれたことに感謝感謝の思いで一杯です」と加藤さんは改めて口にした。

先行きは見えない、それでも後輩に何を残せるか

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、部は現在、練習を全面中止にしている。2月27日には、体育会加盟の申請が通ったという連絡を大学から受けた。当時は人数を制限した上で、時間交代制で練習をしていたが、男女ともに2月28日から練習中止となり、いまに至る。

現在は個人での自主練習に切り替え、学生たちはLINEやZoomでコミュニケーションを取り合っている。自分の練習風景を動画で撮り、それをコーチ陣も含めた仲間に送信。指摘をしてもらったり、モチベーションを高め合ったりと、離れていてもチームとしてできることを日々考えている。また、いまは頭を鍛えるときと考え、チーム内で課題を共有し、海外プレーヤーの動画を見て議論もしている。

とくに4年生は、もしかしたらリーグ戦がなくなり、公式戦ができないことも考え出している。今年でラクロスを終える選手が大半だ。それでも胸にあるのは「自分たちが後輩に何を残せるか」という思い。3年生もそんな先輩たちの思いを受け止め、来年、自分たちがどんなチームをつくっていけるのかを、いまのこのときから考え始めている。「新型コロナウイルスの影響下でも、学生たちは前向きにやっています。この2カ月の間でも確実に成長していますよ」と加藤さんは言う。

一人ひとりがチームのために何ができるかを考え、行動している

男子ラクロス部は昨シーズン、1部5位で2部2位だった明治学院大との入れ替え戦にまわり、3-4で敗れた。今シーズン、チームは「Win the day」というコンセプトを掲げている。残り5秒で逆転されたあの悔しさを忘れず、一人ひとりがあの日の自分を超えていく。目指すは「1部昇格」だ。女子はここ数年、2部との入れ替え戦を勝ち抜いて1部をキープしていたが、昨シーズンは1部4位でシーズンを終えた。今シーズンは「驀進(ばくしん)」というコンセプトを掲げ、「学生女王」を狙っている。

新型コロナウイルスでの緊急事態宣言が延長され、練習再開の目処(めど)はまだ立っていない。それでもいまできることをやり切る。学生一人ひとりの思いと結束は揺るがない。

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