東大ラクロス 関東決勝で早稲田に完敗、涙も出ない悔しさを糧に
ラクロス関東学生リーグ戦・男子1部決勝
11月9日@東京・駒沢第二球技場
東大(Bブロック2位)3-9 早稲田大(Aブロック2位)
昨シーズン、東大は関東の決勝で早稲田大に負けた。残り20秒からのプレーで同点を狙ったが、最後のパスが通らず、5-6で敗れた。あれから1年、また決勝の舞台で早稲田に相まみえた。東大は準備を重ねてこの日を迎えたが、再び跳ね返され、準優勝で終わった。
接戦を勝ちきる中で芽生えた自信
振り返ると今年の東大はリーグ初戦となった中央大戦で敗れ、続く武蔵大戦でも接戦の末に勝利。苦しいスタートだった。「今年こそは優勝って思ってたのに、このままだと入れ替え戦だってあり得る」。鍛冶維吹(いぶき、4年、駒場東邦)は危機感を抱いていたという。しかし接戦をものにしていくうちにチームは上向き、10月5日の準決勝で慶應義塾大(Aブロック1位)を4-3で破った一戦が確かな自信になった。
決勝の相手が早稲田に決まってからの約1カ月、東大は早稲田のプレーを研究して入念に準備を重ねてきた。「去年の早稲田戦は自分のミスで終わりました。でもその悔しさを晴らすという気持ちはなくて、去年より今年は準備をしてきたから、絶対に勝てると思って臨みました」と、東大主将の黒木颯(そう、4年、渋谷教育学園幕張)。黒木は仲間に「やってきたことを出しきる。それがすべて」と声をかけ、決戦のフィールドに立った。
早稲田の猛攻にさらされて
最初のフェイスオフは早稲田の反則で東大ボールとなり、東大の攻撃から。菅原秀(4年、渋谷教育学園幕張)のシュートは外れ、早稲田ボールに。開始3分、ゴール裏から駆け込んだ早稲田の岡田康平(4年、早稲田実)に0度からシュートを打ち込まれ、先制を許した。再開のフェイスオフも東大がものにし、第1クオーター(Q)9分には東大の成田悠馬(4年、白陵)が決めて試合を振り出しに戻した。
東大は一気に逆転を狙ったが、フェイスオフを早稲田にとられてからはディフェンスが続き、連続で2失点。第1Q残り1分半で東大がチームタイムアウト。そこからの攻撃で成田がシュートを放ち、その跳ね返りを黒木が決め、2-3で第1Qを終えた。
第2Qは拮抗した展開。両者ともに一時退場者を出した。その中で早稲田はディフェンスからの速攻をかけたり、グラウンドボールをキープしたりして優位に進めた。東大は得点できず、2-5で試合を折り返した。第3Q以降も東大はディフェンスに回る時間が増えた。東大は第3Qに1点を返すにとどまり、早稲田の猛攻にさらされて3-9で敗れた。
東大の山下尚志ヘッドコーチ(HC)は「東大がやりたい展開を早稲田にやられました。ボールを大事にして、セットオフェンスで点を積み重ねていきたかったんですけど、早稲田はうまかったです」と振り返った。主将の黒木の目に涙はなかった。「完敗すぎて涙も出ない。準備してきたつもりだったけど、それでも早稲田の方が優れてました。準備しきれてなかったという悔しさの方が大きいです」と言って、うつむいた。
ゴーリー三木を支えた先輩の涙
今シーズンを振り返り、山下HCが最も成長した選手として名を挙げたのがG(ゴーリー)の三木理太郎(3年、神奈川・聖光学院)だ。もともと東大のGは松田拓也(4年、栄光学園)が担っていた。松田がけがで試合から遠ざかると、今シーズンから三木がスタメンとして出場するようになった。「それまではピンチのときに自分が出場する程度だったんですけど、リーグ戦を戦う中で自分が1本目として流れをつくらないといけないと覚悟しました」と三木。彼を支えたのが松田だった。積極的に三木に技術を伝え、試合中も「ナイスセーブ」と一番通る声で励ました。「僕が点をとられても『いつものお前なら大丈夫。楽しめよ』と言ってくれましたし、松田さんの存在はプレーする上でとっても大事なものでした」。三木は松田への感謝を口にした。
決勝は松田も試合に出られる状態ではあったが、もちろんGは一人しか出られない。試合後、松田は大泣きした。「松田も試合に出たかったでしょう。でもそういうのを押し殺して試合に臨んでくれた。いつでも出られるという準備をしてくれたので、すごく頼もしかったです」と、山下HCは松田の4年生としての姿勢をたたえた。
東大は1990年と2005年に関東を制覇してから、優勝できていない。大学からラクロスを始める選手が多いチームが、毎年強さを保つのは難しい。それでも黒木は言う。「FINAL4に進んで当たり前のチームでないといけないし、そのための力は持ってます。組織として早稲田の方が上手だったんですけど、東大もしっかりとした組織。勝てるかどうかは個人次第だと思うんです」
この悔しさを乗り越えた先に、強い東大があるのだろう。