大学ラクロス

東大ラクロス、関東決勝で早稲田に敗北 守護神・大嶋省吾が得たもの

大嶋は俊敏さとセーブ力を武器に、東大のゴールを守り続けてきた

関東学生男子1部リーグ戦 決勝

11月10日@駒沢オリンピック公園
早稲田大 6-5 東大

関東の頂点を決する一戦。私には3つの驚きがあった。リーグ戦1試合平均11.8得点で慶大との準決勝でも10点を奪った早大が6得点にとどまったこと。東大が怒涛の攻撃で試合を振り出しに戻したこと。そして、リーグ戦1試合平均3失点という関東最強の「東大の守護神」が、思っていたよりも小柄だったことだ。G(ゴーリー)は大きな人がやるというイメージがあった私は、俊敏な大嶋省吾(4年、栃木)のプレースタイルに引き込まれた。

守りの固さが支えた“攻撃の東大”

序盤に力を示したのは“攻撃の早大”だった。パスを回しながら東大の守備陣を動かし、少しずつスペースが生まれたところを一気に狙った。試合開始3分にMF森松達(とおる、4年、麻布)が先制点をあげると、第2クオーター(Q)残り5分までの間に3連続得点で4-0に。完全に早大のペースだったが、東大もやり返した。前半残り3分でMF間野弘暉(2年、神奈川・聖光学院)が、さらに残り1分30秒でAT(アタッカー)矢野皓大(4年、城北)が決め、4-2で試合を折り返した。

後半も東大の勢いは続いた。MF成田悠馬(3年、白陵)と矢野が立て続けに決め、4-4。“守備の東大”が4点のビハインドを追いついてみせた。しかし勝負の第4Q、早大は立ち上がりに1点、さらに9分にはゴールの裏から回り込んだAT尾花一輝(4年、早稲田実)がまくりシュートを決め、6-4と東大を突き放す。もちろん東大はあきらめない。残り4分、MF栗嶋寛基(4年、開成)が右サイドから突き刺し、1点差。東大は残り20秒でタイムアウト。気持ちを高めて最後のワンプレーにかけたが、パスが通らず試合終了となった。

ゴール前での動きを封じ、点を許さない

試合後、東大主将のDF佐藤隼(4年、立教新座)は「スコアでは1点差ですけど、気持ちとしては完敗だったな。早稲田が全部上回ってました」と話した。しかし、早大からすると攻めきれなかったという思いがあるだろう。4-0から東大が追い上げられたのも、それ以上の得点を許さなかった守備陣の奮起があってのことだ。

東大の守備は、一人ひとりの距離感を縮めてゴール前を固め、外から打たせる。この戦法の前提となるのが大嶋のセーブ力の高さだ。攻撃力の高い早大が相手ということもあってか、大嶋はこの試合、ゴール前を離れるシーンはあまりなかったが、ヘッドコーチの堀友洋(大学院2年)は「大嶋はクリアやパスカットなど、フィールドを縦横無尽に駆け回れる選手」と話す。持ち前の俊敏性とセーブ力をあわせ、「日本で一番うまいゴーリー」と太鼓判を押す。

去年の4失点と今年の4失点

東京大学運動会ラクロス部男子「BLUE BULLETS」は1987年9月に創部。慶應に次いで2番目に日本に誕生したラクロス部であり、学生日本一を2度経験している強豪校だ。現在の部員100人で高校までのラクロス経験者は1人だけ。大嶋も高校まで野球に青春をかけたが、東大では「やってみたら、すげえ楽しかった」とラクロスの道を選んだ。

入部当時、日本代表の経験もあるOBのG鈴木貴大(FALCONS)がラクロスを教えてくれた。大嶋は鈴木の影響でGを選んだ。 男子のトップ選手のシュートは時速160kmにもなる。怖さはなかったのかと聞くと「最初は怖かったけど、慣れました。元々キャッチャーでしたし」と大嶋。ラクロスはサッカーとは違い、得点が10以上になることもままある。「その中の1点をゴーリーの力で0点にしたときは、『仕事したな』って感じで、自分としては気持ちいいんですよ」と言って、笑みを見せた。

スタメン入りをした3年生のとき、日本一を目指して本気で取り組んでいる先輩たちとプレーをする中で、大嶋に変化が起きた。自分の中で現実味のなかった日本一が、「先輩たちとなしとげたいもの」に変わっていった。そんな思いで挑んだ昨年のリーグ戦、東大はBブロック3位でリーグ敗退となった。最後の一橋大戦で大嶋は早々に4失点。交代となり、チームが負ける姿をベンチから眺めることしかできなかった。先輩たちの恩に報いたいという気持ち一心で戦ってきた一年だった。「めっちゃ落ち込んで、正直やめようかと思いました。でも、同期と一緒にまた日本一を目指したい、って」。大嶋は4年生になり、関東最強守備陣の要としてフィールドに立ち続けた。

関東ナンバーワンをかけた大一番。相手は違えど、早々に再び4失点。しかし、あれから1年、自分はうまくなっているという自信が大嶋にはあった。もう1点もとらせず、オフェンスが盛り返すのを待てばいい、と。あの挫折から精神的な強さも身につけた。その通り東大は果敢に攻めて4点を返し、第4Qでの2失点後も1点を返したが、あと一歩届かなかった。結果的に「あと1、2点俺が防いでれば」と、大嶋は悔やんだ。

試合後、毅然とした態度を崩さなかった大嶋(左)だが、主将の佐藤(右)の側では違ったようだった

東大生が大学からラクロスにチャレンジする熱意はなんだろうという疑問が私にはあった。その問いに対してヘッドコーチの堀は言った。「2種類あると思います。ひとつは東大でも日本一になれるということ。いままでスポーツで悔しい経験をしてきて、大学では日本一になりたいと思ってる人が東大にもいるんです。もうひとつは、チームの戦略や運営などすべて現役の学生が中心なので、面白いんだと思います。ほかのスポーツだと監督に頼るところが大きいチームもあると思うんですけど、東大ラクロス部は選手一人ひとりが組織をつくってます」

その話を大嶋にしたら「そういうのもありますけど、でもそれは後付けで、単純にラクロスが好きだからですよ。4年間で人間的にも成長させてもらった。一生モノの仲間もできたし。結果は残せなかったけど、この4年間をラクロスにかけるという選択をしたことは間違ってなかったです」とほほ笑んだ。ラクロスが好き。それだけ。うん、それで十分だと思う。