ラクロス

中大・小松勇斗 ラクロスを通じて生まれたプライドと野心で世界を目指す

サドンビクトリーで早稲田大に敗れ、小松(中央)の今シーズンが終わった(すべて撮影・松永早弥香)

関東学生男子1部リーグ戦 準決勝

10月5日@東京・駒沢第一球技場
早稲田大(Aブロック2位) 8-7 中央大(Bブロック1位)

10月5日にあった関東学生男子1部リーグの準決勝は、中央大にとってリベンジをかけた一戦だった。2年前の準決勝では5-9で、昨年のリーグ戦では11-12で早稲田大に敗れている。今年こそはという思いで挑んだ中央は、第3クオーター(Q)から怒濤(どとう)の3連続得点で7-7に追いつくと、サドンビクトリーに持ち込んだ。流れは中央にあった。しかし試合残り30秒を切ったところで早稲田に得点を許し、敗れた。

野球の技術をラクロスにも 中大・佐々木淳はフェイスオフにかける

「逆転の中央」食い下がる

中央は1部リーグBブロックで武蔵大には敗れたが、4勝1敗で1位通過を果たした。勝った試合を見てみると、初戦の成蹊大戦以外は逆転だった。自分たちで「逆転の中央」と呼んでは士気を高めてきた。今回の早稲田戦でも各Qで先に点をとって自分たちの流れをつくること、そしてどんな状況になってもいつも通り粘り強い試合をすることを意識した。

迎えた準決勝、中央は早稲田に先制点、さらに試合開始6分には追加点も許した。中央は津久井健太(3年、Brookswood Secondary School)からの絶妙なパスを、小松勇斗(3年、佼成学園)がしっかり決めて1-2。得点後のフェイスオフを長屋諒(りょう、4年、中大杉並)が取り切ると、そのボールから松木悠(3年、中大杉並)が2点目。残り2分で失点したが、主将の佐々木淳(4年、日大二)がフェイスオフから流れをつくり、相手ゴールを脅かした。2-3で第1Qを終えた。

佐々木(左端)がフェイスオフを勝ち取り、中央大に攻めの流れをつくった

第2Qでも先制点を挙げたのは早稲田だった。それでも中央はフェイスオフを優位に進め、塩谷祐生(4年、金蘭千里)が決めて3-4。同点を狙うも、その後のフェイスオフを早稲田がとると、そのままシュートを決められ、また2点差。3-5で前半を終えた。

最後まで粘って戦うのが中央らしさ

どうやって現状を打開するか。そこでチームは後半からペースを上げて一気に同点に持ち込むことを意識した。しかし開始3分、またしても先にとられた。3-6。中央はペースを上げて速い展開に持ち込んだ。相手の攻撃にプレッシャーをかけ、ボールを奪うと一気に駆けた。第3Q残り3分、速攻から島川皓丞(こうすけ、4年、中大附属)が決めたが、直後に早稲田に返され、4-7。追い上げムードの中での失点が重くのしかかったが、小松はAT(アタッカー)として「絶対自分が流れをもってくる」という強い気持ちで挑んだ。失点後のフェイスオフのボールを拾うと一気に攻め、左斜めからのロングシュート。中央に勢いをもたらした。

第4Qに入っても小松の勢いは止まらなかった。残り9分、小松が3本目のゴールを決めて6-7。流れは完全に中央のものとなり、立て続けに荒井優斗(3年、中大杉並)がゴール。7-7と初めて追いつき、サドンビクトリーへ。両者一歩も譲らない攻防となる中、早稲田は時間をかけて攻め、一瞬の隙を狙った。岡田康平(4年、早稲田実)が右サイドから揺さぶりをかけて中央ディフェンスを崩すと、小林大祐(3年、早稲田)が左からシュートを放ち、試合を決めた。

一瞬の隙を狙われ、中央大は早稲田大に敗れた

肩を落とす中央のメンバーの中で、佐々木は眉間にしわを寄せてうなだれ、悔し涙をぬぐった。「負けて悔しい気持ちはあるけど、それでも中央らしいプレーはできた。相手の方が一枚上だった」と早稲田をたたえた。「中央らしいプレーができた」という気持ちは小松も一緒だった。ただそれでも、目指していた日本一にたどり着けなかった悔しさの方が大きかった。「野球をやってた高校のときは、負けたって『そんなもんか』って思ってたところがあったんですけど、いまはただただ悔しくて、もう負けたくないって気持ちがめちゃくちゃあります」と小松は言う。負けず嫌い、プライド、そしてラクロスへの愛情は、この大学生活の中で大きくなった。

試合に出られない悔しさは、痛いほど分かる

小松は小学校から高校までずっと野球一筋。しかし佼成学園(東京)時代は3年間、ベンチにも入れずスタンドで応援するだけだった。そして最後の夏、チームは日大三高に逆転負けを喫して終わった。大学では絶対に試合に出て結果を残したい。そう考えたときに、多くの学生が大学入学から競技を始めるラクロスに興味を持った。高校時代、小松は身長173cm、体重は62kgだった。コンタクトスポーツであるラクロスで力を発揮するには、体をつくるしかないと考え、大学に入ってからはフィジカルトレーニングに積極的に取り組んだ。いまは身長175cm、体重75kgになったが、「まだまだ小柄なんで、もっと鍛えないといけない」と語る。

大学2年生のときにはスタメンに選ばれ、公式戦にも出場するようになった。小松は試合に出られるうれしさの反面、出られない4年生の分まで戦う責任を感じていた。先輩たちは口に出さなかったが、高校時代に自分の感じていたあの無念さが痛いほど伝わったからだ。

試合に出られる自分が果たすべき責任を小松(中央の10番)は感じていた

しかし中央はリーグ最終戦、成蹊大に3-11で敗れ、ここでリーグ敗退となった。「本当に4年生に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。ATという絶対に点をとらないといけないポジションだったのに何もできなくて、悔しいというか自分が情けなかったです。だからこそ次は絶対に学生日本一になりたいと思いました」。いつの間にか負けられない理由が増えていた。

初めての日の丸、思いは世界大会へ

今シーズンのリーグ戦が始まる前の6月、ASPAC(APLUアジアパシフィック選手権大会)が韓国で開催され、日本代表に準ずるナショナルデペロップメントスクワッドチーム(DS)だけでアジアに挑んだ。中央からは佐々木と小松の二人が選ばれ、日本男子チームは6連覇を達成。その試合で小松は10得点を挙げている。日本一になりたいと思っていた小松にとって、日の丸をつけて戦うこともまた夢だった。

「夢がかなったという気持ちはありました。ただ、決勝の相手だったオーストラリアにはフィジカルの違いを見せつけられました。確かにチームとしては勝ちましたけど、日本人は世界に出ると小柄で、自分はまだまだだって痛感しましたね」

中央に帰ってからは、佐々木とともにチームを引っ張ることでASPACでの経験を積極的に還元してきた。今シーズン、中央は実力の差でAチームやBチームなどと分けるのではなく、拮抗したレッドチームとホワイトチームという二つのチームをつくって練習に取り組んできた。勝った負けたを繰り返す中で、常日頃から切磋琢磨(せっさたくま)し、公式戦にはレッドチームからもホワイトチームからも選手が選ばれてきた。そうした中で「僕たちはチームで強くなれた」と小松は振り返る。

ATとして点を取るのは当たり前と小松は言い切る

今シーズンの挑戦はこの早稲田戦で終わった。佐々木は小松たちに「劣勢でも粘り強く戦えるというのが中央の強み。これからも伝統として残して、来年以降、僕たちが達成できなかった学生日本一を目指してほしい」と思いを託した。

ラストイヤーとなる来年、小松は学生日本一という夢とともに、DSの一員として2022年以降の世界大会で戦えるプレーヤーへの土台をしっかりを築きたいと考えている。ASPACでの活躍もあり、いまではほかの大学の選手からも知られる選手になった。「プレッシャーもありますけど、逆にモチベーションにもなってます。負けてられないですから」

いろいろな人の思いを受け継ぎ、小松はそれを力に変えていく。

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