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東大ラクロス主将の黒木颯、ラストイヤーの日本一にかける

東商戦では黒木(中央)が攻守に体を張ったプレーを貫き、チームに勢いをもたらした

五月祭試合/東商戦(第9回定期戦)

5月18日@東京大学本郷キャンパス
東大 5-7 一橋大
(一橋大の6勝3敗)

ラクロスの東京大学と一橋大学の定期戦「東商戦」が東大の五月祭に合わせて開催された。東商戦は2011年から毎年あり、今回、東大はホームの声援を力にして戦ったが、一橋大に3連敗を喫した。

前半で5点のビハインド

最初のフェイスオフを東大の岩崎遼登(りょうと4年、筑波大附属駒場)がとりきると、すぐに成田悠馬(4年、白陵)が決めて東大が先制。しかし一橋大はこの一戦を「仮想リーグ戦」と位置づけ、研究を重ねてきた。速攻と速いパス回しで東大を翻弄し、第1、第2クオーター(Q)で早くも6得点。東大はついていけず、ミスも相次いだ。1-6で試合を折り返した。

ハーフタイム。東大の山下尚志(ひさし)ヘッドコーチは「走れてない」「声が出てない」「思い切ったパスができてない」と、選手たちに指摘した。「リーグ戦でもこういう展開は想定されるし、この展開を楽しみながら逆転しよう」と励まし、後半へと送り出した。

一橋大のパスミスから、東大の間野弘暉(ひろき、3年、聖光学院)が決め、2-6。さらに成田が2点目を決め、3-6で第4Qに入った。東大を引っ張る主将の黒木(そう、4年、渋谷教育学園幕張)がセンターライン付近から駆け抜け、相手DFをかわして左からショット。これが決まって2点差に迫った。しかし、その勢いを断つように、一橋大の仲二見篤(なかふたみ、4年、桐朋)が決めて4-7。東大の間野が1点を返すも、5-7で終わった。

東商戦の第4Qでは黒木(中央)は走力を生かし、得意の左からのショットを決めた

東大主将の黒木は試合前に「いつも通りにやろう」と声をかけていた。普段の練習で培ってきたものを出しきれれば、勝てると踏んでいた。しかし、経験の浅い選手もいる。東大は試合の雰囲気にのまれてしまった。

敗戦を振り返って黒木は「課題はメンタル面です。気持ちの準備ができてませんでした。技術的なところだと、練習から、より細かい技術、激しい当たりを求めていって、よりリーグ戦に近い状態でやっていかないと。一人ひとりが自分の武器をしっかり意識して、1-6で負けてる状態でも勝負できる武器にしてほしい」。自分自身をも戒めるように言った。黒木の武器は走りと左からのショット。これらはサッカーに取り組んだ時代に培ったものだった。

頑張っても千葉のベスト16、サッカーをあきらめた

黒木は小学生の時にサッカーを始めた。3歳上の兄の影響だった。2~4歳までメキシコで過ごした。黒木自身、メキシコ時代はなんとなく記憶にある程度だが、兄はメキシコの子どもたちと一緒にストリートサッカーで足を鍛えた。その技術をもって日本に帰国。黒木は当時の兄を「周りを圧倒してる姿がかっこいい」と感じ、兄の背中を追った。中学生のときには将来プロになることも考え、サッカー推薦で進学校の渋谷教育学園幕張高校に進んだ。

勉強と両立しながらサッカーに明け暮れた日々。それでもチームはいつも千葉県ベスト16止まりだった。「けっこう厳しい環境でやってて、それでもベスト16か。サッカーで筑波や柏レイソルユースにいくようなやつには勝てないな、と思いました。自分が一番になれるスポーツがほかにあるんじゃないかと考えるようになったんです」。黒木は東大進学を機に、別のスポーツに挑戦する覚悟を決めた。

「走力が自分の武器」と黒木

新しいスポーツで最初に思い浮かべたのがラクロスだった。サッカーでいろんなポジションをこなしてきた中で、得意だったのは左のサイドハーフ。そして自分の武器は走力だ。ラクロスのMFは最も上下の動きがあり、走りの強さが求められる。小学生のときから培ってきたものを生かせると考え、最初からMF希望でラクロス部の門を叩いた。

それでも最初は思うところがあった。「サッカーの競争に負けて、逃げてラクロスを選んだんじゃないか」。1年生の最初のころはそんな思いを払拭しようと、ラクロスに取り組んでいたという。2年生の4月にはAチーム入りを果たし、得意の走りで勝利に貢献してきた。本気で日本一を目指している部の雰囲気も、心地よかった。

黒木にとって、早稲田大と戦った昨年の関東ファイナルは、いまでも忘れられない一戦だ。試合残り4分で1点差に追い上げ、最後のワンプレーで同点を狙ったが、跳ね返された。5-6で敗れ、準優勝。日本一への挑戦権を早稲田大に奪われた。「自分が活躍できてたら、勝てる試合だった。振り返ると不甲斐ない1年を送ったな、って」。ここが黒木にとってターニングポイントになった。

みんな大学から始めるから、成功体験は無限

ラストイヤーこそ、日本一になりたい。黒木は強い思いで主将に立候補した。「自分は前の主将の佐藤さんのような盛り上げるタイプじゃなくて、わりと冷静に『いまやるべきなのはこうだよね』と言うタイプ。そういう冷静さという自分の強みで引っ張ることを意識してます」。選手としても主将としても、自分の強みをよく分かっている。

かつてサッカー少年だった黒木はいま、ラクロスにすべてをかけている

1年生のときにはサッカーから逃げたというモヤモヤがあったが、いまはない。「いまは『ラクロスやっててよかったな』とか『ラクロスの方がサッカーより面白いんじゃね』って思ってます。すべてのスポーツに言えてしまうんですけど、自分が試したいプレーをやってみて、成功するサイクルが楽しい。ラクロスは大学から始める人が多いから、新しいことにチャレンジして成功体験を積む機会は無限にあります。選択肢の幅が広いです。サッカーや野球だと、ある程度やってきて自分のプレースタイルが固まってるところがあるだろうけど、ラクロスだと本当に自由だなって思いますね」。黒木から迷いのない言葉が返ってきた。

昨シーズンの東大は、守りの堅さが強みだった。今シーズンは「勝者であれ」をスローガンに、カウンターを駆使しながら、フルフィールドで戦うスタイルをとっている。「ファイナルなんかの大一番でも、1試合に2点には絡める選手になりたいです」と黒木。カウンターで駆ける東大の選手の中に、いつだって黒木の姿がある。

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