大学ラクロス

慶應・石井慶治はフェイスオフからシュートも決める超攻撃的なルーキー

石井(右)はフェイスオフから一連の流れをつくれるのが自分の強みと言い切る(撮影はすべて松永早弥香)

関東学生男子1部リーグ戦 開幕戦

8月12日@富士通スタジアム川崎
慶應義塾大(勝ち点3) 5-4 早稲田大(0)

関東リーグの開幕を飾った早慶戦で、慶應は昨年の学生日本一である早稲田を破った。その大会で慶應はFINAL4で早稲田に敗れ、そして今年5月の早慶戦でもサドンビクトリーの末に敗れた。リベンジを狙った今シーズンの開幕戦で、慶應は大きな勝利をつかんだ。

【早慶戦】慶應ラクロスのアタッカー立石、どこからでもゴールを狙える熱い男

勝負の第4Q早々にFOから一気にシュート

試合開始とともに雨が降る中、先制点を挙げたのは、6月に韓国で開催されたAPLUアジアパシフィック選手権大会に唯一の1年生として出場した慶應のアタッカー(AT)、小川司(慶應NY)だった。しかしその直後のプレーで早稲田が決め、1-1と試合を振り出しに戻した。第2クオーター(Q)の間に雨がやみ、両者得失点のないまま試合を折り返す。第3Q開始のフェイスオフを早稲田が取り切るも、シュートからのこぼれ球を拾った慶應がパスを回しながら攻めて1点、さらにもう1点を決め、3-1で第3Qを終えた。

第4Q開始のフェイスオフを慶應の石井ヴィクトール慶治(1年、慶應NY)が取り切ると、そのまま駆け抜けてシュート。会場にはどよめきが起き、フェイスオファー(FO)の大きなガッツポーズに仲間も笑顔で応えた。その後のフェイスオフも石井がものにし、そのボールから慶應は追加点をあげて5-1。しかしそこから早稲田が慶應のミスを逃さず攻めに攻め、3点連続で得点を決めると流れは早稲田に傾いた。慶應は2度、タイムアウトをとってはチームに冷静なプレーを促す。早稲田のチェックで苦しめられながらも慶應は最後まで逃げ切り、5-4と開幕戦勝利をつかんだ。

第4Q早々に得点を決め、仲間と喜びを爆発させる石井(左)。FOはフェイスオフが終わるとすぐに交代するため、珍しいシーンとも言える

5月の早慶戦の敗戦から、慶應は悔しさを忘れず何が足りなかったのかを一人ひとりが考え、8月4~10日に実施した福島夏合宿でもその課題に取り組んできた。1年生ながら5月の早慶戦にも出場した石井は、リードをしていた場面でフェイスオフから流れを生み出せなかったところを課題とし、FOとしてボールをすくう技術に加え、そこから攻撃をつくるパスやショットも意識しながら練習に向かった。試合後の石井は「今回の試合は自分のフェイスオフの勝率よりも、要所要所で勝ってチームの流れをつくることを意識してました。それがいいタイミングで実現できたという意味では、いい仕事ができたかな」と、満面の笑みを浮かべた。

下半身を鍛え、体重は約10kg増

石井が慶應義塾ニューヨーク学院でラクロスを始めたのは「スポーツに熱中したい」「高校から始めても一番になれるスポーツ」という思いからだった。アメリカで過ごしてきた石井はそれまでもテニスの経験があったものの、部は同好会に近いレベルだったという。アメリカでは幼少期からラクロスに触れる機会があるが、日本では大学で初めてラクロスに触れるという人が大半だ。高校から初めても遅くないラクロスに魅力を感じた。

当初のポジションはATやミディ(MF)だったが、2年生の後半から次第に試合の流れをつくるFOに魅力を感じ始めた。週末にはアメリカ代表FOでもあるグレッグ・グレンリアンに学んでは技術を身につけ、腕力に加えて下半身を徹底的に鍛えた。ラクロスを始めた当初は身長181cm、体重70kg前後だった体は、いまでは体重82kgまで大きくなった。

FOは出場時間が短い分、1発で試合の流れを変えられる(中央が石井)

慶應義塾大学進学後は「より自分の力をチームに生かせるのはFOだ」と心に決め、FOにポジションを変えた。ラクロス文化が根付いているアメリカでプレーをしてきたものの、大学というステージに上がったということもあり、より戦術が求められる環境に最初はとまどった。

それでもFOとしての技術が認められ、今回の開幕戦ではスタメンに選ばれた。喜びとともにこれまで先輩が担ってきたスタメンの場をもらったことに、「自分が勝たなきゃいけない」というプレッシャーもあった。思うようなプレーができずにいた中、4年生の原敏(藤島)から「いつも通りのお前なら絶対勝てるから。いつも通りに落ち着いてやれ」と言葉をかけてもらえたことで落ち着けたという。そこから自信をもって挑め、第4Qにはあのシュートが生まれた。「原さんには感謝してます」と石井は言う。

先輩の原(右の63番)から、アドバイスと力を受ける石井(左)

慶應の黄金期を築く

同じ1年生の小川も慶應義塾ニューヨーク学院出身だ。石井は「僕は高校の時は運動音痴だったけど、彼はラクロスを始めた時から天才みたいな感じだったんで、ずっと彼の背中を追いかけてきて、彼を追い抜こうという一心でやってきました」と小川の実力を認めている。そんな小川もリーグ開幕戦で先制点を挙げる活躍を果たしており、ふたりは「自分たちでこれからの4年間、慶應の黄金期をつくろう」という野望を抱いている。

慶應はスタメン10人中、4年生は3人だけと比較的若いチーム。石井(右から3人目)はこれから慶應の黄金期を築くと意気込む

石井は開幕戦早々に点を決めたが、フェイスオフ専門のFOは必然的に出場時間が短い。「出場時間が少ない分、自分がボールを取り切って、さらにゴールも決めたら1発でチームの流れを変えられます。チームの流れを左右できるのがFOの醍醐味で、自分も楽しいなと思うところです。毎試合は難しいとしても、3~5試合に1回は得点を決めたいです」と意気込む。

鍛えた腕力と下半身を武器にフェイスオフを制し、さらにゴールまで狙う。超攻撃的なFOが慶應に勝利の流れを呼び込む。