ラクロス

東北大ラクロス・佐野清 柔道仕込みの激しいプレーで、杜の都から旋風起こす

第9回となるASPACに、東北大から初めて選手が選ばれた(写真はすべて日本ラクロス協会提供)

ラクロスのASPAC(APLUアジアパシフィック選手権大会)が6月21~29日に韓国で開催され、大学生だけで臨んだ日本男子チームは6連覇を達成した。東北大の佐野清(3年、都立駒場)はただひとり関東以外の大学から選出され、優勝にも大きく貢献。韓国から仙台へ戻る途中に話を聞くと、この大会で得た手応えと経験を東北大に持ち帰ると語ってくれた。そして8月11日に開幕する東北リーグ、その先にある全国大会への思いも口にした。

「お前は地方の星なんだから」

「JAPAN」の文字が刻まれたユニフォームに袖を通し、佐野は自身初の国際大会に挑んだ。6連覇の期待がかかり、絶対に負けられないという思いが強かった。東北大生がASPACに出場するのも初めてのことだった。「チームメイトだけではなく、OBからも『期待してる、頑張ってこい』と送り出してもらいました」と佐野。昨年、岡山大の主将を務めていた秋元康太さんからもエールが届いた。「お前は地方の星なんだから、やってこいよ」。佐野は東北だけでなく、関東以外のすべての地域を代表して戦う覚悟を持っていた。

“地方”の存在価値を示すためにも、気合いを入れて大舞台に立っていた。第2戦のオーストラリアは手強い相手だ。屈強な男たちばかり。佐野にとっては見せどころだった。高校までは柔道一直線。耳は畳でこすれ、つぶれている。身長177cm、体重75kgというガッチリ体形で、フィジカル・コンタクトの強さには自信を持っていた。しかし第1クオーター(Q)、最初の1対1の場面では、気迫が空回りしてしまった。

「相手からボールを奪って、一気にチャンスにつなげたいと思ったんですけど、あれは自分勝手なプレーでした。無理に取りにいって、かわされましたから。僕のあのミスが失点につながったんです」

元柔道部の佐野は、フィジカル・コンタクトの強さには自信を持っている

まだ序盤だ。無理をする場面ではなかった。結局、7-8で敗戦。悔やんでも悔やみきれない1点差の初黒星だった。それでも下を向くことはなかった。試合後、すぐに自分を見つめ直し、問題点を洗い出した。守備を修正し、プレーオフの香港戦では1対1の場面で冷静に相手からボールを奪取し、カウンターで自ら得点した。

「いいボールダウンから点を取れました。うまく修正ができたからだと思います。チームの先制点になったのもよかったです」

決勝ではチームとしても、個人としてもオーストラリアにリベンジに成功。1対1の局面では1度も負けなかった。DFとして相手を4点に抑え、9-4で優勝を決めた。

「負けた相手に勝てたことが素直にうれしかった。第4Qは粘り強く守り続ける展開でしたけど、しっかり踏ん張れました。課題を修正できたことを証明できました。ひとつ成長できたかなと思います」

試合終了の笛を聞くと、「終わったんだ」とホッとして頬が緩んだ。多くのものを背負って戦ってきただけに、一気に力が抜けたのだろう。

東北大の名前をラクロスで全国に

ASPACを通じて学んだことは多い。連戦の中でのコンディションのつくり方を身をもって知った。国際舞台で積んだ経験は東北大に持ち帰り、仲間たちに還元していくつもりだ。全国の頂点を目指す上で、大きなヒントをつかんだ。

「相手の戦い方に応じて、粘り強く守ることが大事なんです。チームの守り方に自分も合わせないといけない。オーストラリアと戦う中で、全員がやるべきことをやればどんな相手でも抑えられると思った。目的を明確にすれば、戦えるんです」

世界と戦った経験を東北大に持ち帰り、チームの底上げを目指す

大学ラクロスは関東を中心に回っている。関東の選手たちと話していると、東北のラクロスがあまりにも知られていなくて、がく然とすることもある。彼らは東北リーグから全国大会への道のりも知らなければ、東北大の存在もあやふやだった。現実を目の当たりにするたび、ふつふつと燃えてくる。東京都立駒場高校から東北大に進んだ身ではあるが、いまや仙台は第2の故郷だ。佐野の心にはすっかり東北魂が宿っている。

「東北にもラクロスにかけてるヤツがいて、いい結果を残せるんだと証明したい。全国大会の決勝で駒沢(オリンピック公園総合運動場)に行ければ、東北大の名前がラクロスで全国に知れ渡るはずです。関東の人たちに『東北って、すごいんだ』と思わせたい。あっと言わせたいです」

原動力は反骨心だ。ASPACの約1週間でラクロッサーとして大きくなった熱血漢が、杜の都から旋風を巻き起こす。

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