ラクロス

京大ラクロス主将・椎橋広貴 学生日本一の目前で散った悔しさを、力に

椎橋(右)は1回生の時からATとしてアグレッシブに攻めてきた

双青戦(第7回定期戦)

6月15日@京大農学部グラウンド
京大 4-8 東大  (東大の5勝2敗)

男子ラクロスの東大ー京大の定期戦は、2012年に始まった。13年を除いて毎年開催され、昨年まで4勝2敗で東大が勝ち越している。京大のホームゲームとなった今年、京大は応援団やアメフト部員からの声援も受けて戦ったが、4-8で敗れた。

雌伏4年、はい上がった京大

攻めた第4Qに痛い失点

京大は前半からボールをキープして得点し、リードして後半を迎える展開を思い描いていた。しかし試合開始のフェイスオフから東大に優位に進められ、先制点も決められた。流れをつかみきれないまま、2-4で試合を折り返す。後半開始のフェイスオフも取りきれず、早々に失点。3-6で迎えた第4クオーター(Q)には、オールコートディフェンスでAT(アタッカー)が相手陣でボールを奪い、オフェンスが続く流れはつかめたが、いかんせんシュートが決まらない。一瞬の隙を突かれてカウンターを許し、4-8で試合を終えた。

ときおり雨も降る中、農学部グラウンドには多くの人たちが駆けつけ、京大の背中を押してくれた。そんな人たちを前にして、京大主将のAT椎橋広貴(しいはし、4年、県立船橋)はまず、感謝の気持ちを伝えた。そして「自分たちの甘さを認識した試合でした。ここから立て直していきます」と、険しい表情のまま前を向いた。

学生日本一を目前に跳ね返された昨冬

京大は2014年、2年間の公式戦出場停止と3部リーグへの降格という処分を受けた。そこからストレートで勝ち上がり、1部リーグに返り咲いた昨シーズンで関西制覇。早稲田大と学生日本一を競う舞台にまでのぼりつめた。試合ができずに卒業していった先輩たちの思いも背負ったこの一戦、京大は2-16という大敗を喫した。椎橋はこれまでATとして大量得点を挙げて快勝する試合を何度も経験している。そんな成功体験よりずっとずっと深く、早大戦の大敗が椎橋の頭に深く刻み込まれている。

「去年のチームは関西リーグでも苦しんだ場面が多かったんですけど、一つ上の代のみなさんが引っ張ってくださって、それで全学決勝という舞台にも立てました。そんな舞台で、応援してくださってる方や、自分が入学する前の代、公式戦で日本一を目指すこともできなかった代の方々に恩返しできなかったのがすごく悔しくて……」

椎橋(右)は今年こそ学生日本一を勝ち取るため、主将としてチームを引っ張る決意をした

自分たちが幹部になるにあたり、「どこを目指し、何を理念にして、ラクロスをするのか」を語り合った。先輩たちの学生日本一の夢を引き継ぐだけではなく、自分たちの思いで学生日本一を目指したい。みんなの思いが一致した。チームを誰が引っ張るのかという話の中で、椎橋は主将を志願した。「日本一をつかめなかったのが本当に悔しくて、自分がチームを引っ張って今度こそ日本一になりたいって思ったんです」。それは椎橋がラクロスを始めた理由にも重なる思いだった。

オフェンスをつくる難しさ

小学校から高校まで野球一筋で外野手。いまも「パワプロアプリ」が日々の癒やしだ。大学でも野球を続けることを考えたが、ラクロスの魅力が勝った。「すごく単純なんですけど、ラクロスという競技自体がかっこいいな、日本一を目指せる環境でプレーできるってすごいなって思ったんです。もともとめちゃくちゃ野球がうまいというわけではなくて、どうせだったら日本一を目指せるレベルでやりたいという気持ちが大きかったですね」

1回生の時からATだった。野球がラクロスに生きているところはありますか? と聞くと「速いスピードの球技ってところはありますけど、それ以外にも、グローブでのキャッチはクロスで柔らかくキャッチするのに通じますし、クロスを振るのもバットを振る感覚に似てるかな」と、悩みながら答えた。

昨シーズン、椎橋は同期のAT庄晋太郎(川越)とともに、大量得点を挙げていた一人だった。ただこの東大戦、椎橋も積極的にシュートを打ったが、ゴールネットを揺らせなかった。その一方でボールを回してディフェンスを散らしたり、強いライドをかけてディフェンスからボールを奪ったりと、攻撃の起点になるプレーは多く見られた。

ディフェンスにプレッシャーをかけてボールも取りきるライドも、椎橋(左端)の強みだ

「もうちょっとアグレッシブにいきたいんですけど、いけてないのがよくない部分ですかね。去年は4回生がうまく回していかせてくれてました。いまは自分でオフェンスをつくって流れもつくる、というバランスがまだとれてないんです。それが最近の課題です。でも今年のチームは去年よりも比較的1対1が強かったり、シュートレンジが広い選手が多かったりするので、そういう強みを生かせるオフェンスをしていきたいです」。強い京大をつくるため、点取り屋は悩みながら新チームのオフェンスに向き合っている。

増えた期待、結果で応えたい

厳しい表情でチームメイトを鼓舞する一方、ラクロスを離れれば、工学部情報学科の学生だ。「ただ単に情報という分野に興味があって、研究というプロセスが面白いんですよ」と椎橋。それでもラクロスに熱が入りすぎてしまい、まだ取りきれていない単位がある。「ほんとに僕はあまり効率がいいタイプじゃなくて……。ラクロスもめちゃくちゃ時間をかけて、勉強もやるときは時間をかけて、バランスをとるのがうまくないんです」と苦笑い。さらに今年は大学院の入試もある。椎橋にとっていろんなことが詰まったラストイヤーになるのは間違いないだろう。

昨シーズン、椎橋は一時期金髪にしていた。わけがあった。「リーグ中でミスってしまって、『これはもう、坊主か金髪だな』ってコーチから冗談で言われたんですけど、僕も申し訳ないなと思って、スッと聞き流せなかったんですよね。だから髪形を変えて切り替えようと思って……」。突然の金髪に、チームメイトからは「いかつい! 」の声。ただ、バイトにも支障が出たため、3カ月で黒髪に戻した。

昨シーズンは恩返しの気持ちで学生日本一を目指した。今シーズンは感謝の気持ちで頂を目指す

悲願の学生日本一まであと一歩に迫った昨シーズンを経て、チームを取り巻く環境に変化を感じているか? その問いに椎橋は笑顔で答えた。

「いろんな方が注目してくれるようになって、今日もいろんな方に応援してもらえて、素直にうれしいですね。感謝の気持ちを忘れずに、そういった注目してくださる、応援してくださるという土台の上に、日本一という結果がついてくればすごくいいかなと思います」

目指すべき場所は定まった。あとはもう、突き進む。仲間と自分を信じて。

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