女子サッカーを知ってもらいたい 大東大女子サッカー部が今だからできること
大東文化大学女子サッカー部楓昴(ふうすばる)は昨年度、インカレ3年連続の出場や関東リーグへの昇格など目覚ましい成績を残した。今年度は「躍進」というスローガンを掲げ、新チームを始動。しかし新型コロナウイルスの影響は大きく、新体制で今年2月下旬に練習が始まったものの、そのわずか1週間後に大学の部活動自粛と入構禁止が決定し、部活としての練習はできなくなった。
指導者の多くは3密回避を徹底した上で、一部の練習を続けることを大学に求めていたが、厳しい入構禁止措置は変わらなかった。その後、3月の卒業式と4月の入学式の中止も決まり、卒業生の門出を祝う行事や、新入生と親睦を深める行事もできないまま、月日は過ぎていった。
オンラインでつながり、手作りマスク200枚を寄贈
楓昴では現在、Zoomを用いてオンライン上での指導に切り替えている。週2回はオンライン筋トレに取り組み、週1回は戦術トレーニングと学年ミーティングを行っている。学年ミーティングは自粛期間前からしていたが、なかなか会って練習ができない中で状況を共有したり今の悩みを相談したり、ときには他の人には話しにくいことも信頼する仲間に打ち明けたりしている。そういったチーム内のコミュニケーションは、みんなに会えない今だからこそ大事な機会になっている。
また彼女たちはこの自粛期間を使い、各自が家でマスクを手作りし、大学がある埼玉県東松山市に200枚を寄贈した。この活動について川本竜史監督は、「自粛期間中に“今やるべきことでできることは何か”ということを選手たちに考えてもらったのですが、その問いかけに対する、選手たちなりの答えの一つだと思います」と言う。
楓昴は「よきチームたる上で強きチームたれ」という理念を掲げており、サッカーだけでなくチーム力、人間性の向上を目指して活動している。主将の合田蒼乃(4年、文教大明清)が「このような状況の中、自分たちにできることは何かと考え、楓昴の活動で少しでも誰かの役に立てられたら、と思いました」と言うように、今回の活動はその理念に基づいた、普段支えてもらっている方や地域への感謝を込めた行動だった。
大好きなスポーツを未来の子どもたちへ
また合田は「試合ができない今も、このような活動やSNSなどを通じて、少しでも楓昴や大学女子サッカーを知ってもらい、再開後を見すえて大学女子サッカーを盛り上げていきたい」という思いを口にした。
プロに比べると、大学サッカーを見に試合会場まで来てくれる人はまだ少ない。特に女子サッカーの場合は観客が家族やOGなどという関係者に限られがちで、集中応援のために大学内でチラシを配っても、学生に足を運んでもらうことは難しい。しかし大学スポーツを盛り上げるためには、見に来てくれる人、つまりファンの力が必要だ。そんな人を増やすために今できることはなんだろうと考えた結果、楓昴、そして大学女子サッカーを知ってもらうことだという思いに行き着いた。
全日本大学女子サッカー連盟の理事長でもある川本監督もこう話す。「今回の新型コロナウイルスでスポーツは脆(もろ)いということを痛感した。脆く儚(はかな)いから、スポーツは美しくて尊い。今こそ『みなさん』でもう一度力を合わせて、大好きなスポーツを未来の子どもたちへ引き継いでいきましょう」
選手たちはもちろん、選手や大会を支えるスタッフ、そして何より、スポーツを楽しみにしている人々。そんな「みなさん」とともに力を合わせて。今現在もスポーツを存分に楽しめない状況ではあるものの、コロナ禍が収束した際にはぜひ、大学女子サッカーをはじめたくさんの大学スポーツの試合を見に来て、声援を送っていただきたい。そうすることで選手たちはきっと、今まで以上の感動を見せてくれることだろう。