アメフト

ラストプレーで劇的TD 佼成学園が関西学院を下し、クリスマスボウル2年ぶり4度目V

佼成学園最後のパスは、北川大智(87)と関西学院の礒田啓太郎(8)が同時にキャッチ(撮影・篠原大輔)

アメフト第51回全国高校選手権決勝・クリスマスボウル

12月26日@神戸・王子スタジアム
佼成学園(関東、東京1位) 19-13 関西学院(関西、兵庫1位)

アメリカンフットボールの高校日本一を決める第51回クリスマスボウルは12月26日、神戸・王子スタジアムであり、佼成学園がラストプレーで決めたタッチダウン(TD)で19-13と関西学院を下し、2年ぶり4度目の頂点に立った。両校の頂上決戦は4年ぶり2回目で、関学はリベンジできなかった。最優秀ラインマン賞には佼成のOL近藤剣之介(3年)、最優秀バックス賞には佼成のRB岩井零(2年)、敢闘賞には関学のQB林孝亮(3年)がそれぞれ選ばれた。

関学が先手、佼成は岩井が活躍

佼成のキックオフで試合開始。関学のファーストシリーズは自陣33ydから。最初に投げたパスが決まらず、ランを続けてゴール前9ydまで迫った。最後は第1クオーター(Q)4分45秒、QB林がTE安藤柊太(3年)に10ydのTDパスを通した。キックは失敗し、6-0と先制した。

平均身長181cm、体重105kgの大型OLを盾に、佼成もすぐに反撃。QBを併用しながら攻めて敵陣に入り、ゴール前29ydからの第3ダウン12ydでQB近田(こんた)力(3年)が右へ開いたRB岩井へパス。捕った岩井が右オープンをまくってTD。2点コンバージョンのプレーは失敗し、第2Q53秒に6-6とした。

二つのタッチダウンで最優秀バックス賞を受けた佼成学園のRB岩井(撮影・このあと全て北川直樹)

佼成は次の関学のオフェンスで攻撃権更新を許さず、自陣34ydからのオフェンス。トリックプレーも織り交ぜて前進。ゴール前19ydで第4ダウン3ydとなったが、RB岩井のカウンタープレーでギャンブル成功。最後はゴール前3ydからディフェンスの選手もブロッカーとして投入し、RB岩井がオフタックルを突いてTD。6-13とした。関学は次のオフェンスで攻めきれず、前半残り3秒から37ydのフィールドゴール(FG)を狙ったが失敗。このまま試合を折り返した。

第4Q、関学が追いつく

第3Qはともに相手ディフェンスを崩せず無得点。勝負の第4Qに入って試合が動いた。残り6分42秒、関学は自陣20ydからのオフェンス。第3ダウン10ydと最初の正念場が訪れた。ここはQB林がTE安藤へ28ydのパスを通して突破。相手の反則にも助けられてゴール前13ydまで進んだ。第2ダウン11ydでQB林がエンドゾーンへ走り込んだWR坂口翼(3年)へパスを通してTD。キックも決まって13-13と追いついた。

果敢に走った関学の左利きのQB林

試合時間は残り4分18秒だ。直後のキックオフリターンで佼成はトリックプレーを仕掛けたが実らず、自陣10ydからオフェンス開始。RB岩井のランを2回続けて攻撃権を更新。第3ダウン6ydの局面ではけがで出番の少なかったRB加嶋魁(3年)に託し、11ydゲインで攻撃権更新。さらに加嶋に託し、残り2秒でゴール前44ydまで来た。佼成が最後のタイムアウトをとる。関学も続けてタイムアウトをとった。

残り2秒、神頼みの一投

同点のまま終われば両校優勝。FGが決まる距離ではない。考えられるのは「ヘイルメアリー(神頼み)」と呼ばれるパスだ。エンドゾーンに複数のレシーバーを走り込ませ、QBが山なりのパスを投げて相手と競らせてキャッチする。かつてNFLのQBが試合終了間際の逆転TDパスを決めたあとに「投げた瞬間にマリア様に祈りを捧げた」と振り返ったことが、命名の由来の一つとされる。

ヘイルメアリーで渾身のパスを投じる佼成学園のQB近田

いざ、ラストプレー。佼成の3人のレシーバーがエンドゾーンの右へ走っていく。QB近田は右へロールアウトして時間を稼ぎ、右腕を振り抜いた。エンドゾーンには青の関学DB陣、赤の佼成レシーバー陣の塊ができた。そこへ運命のボールが飛んでくる。まず、カットにいった関学DB東田隆太郎(2年)が空振り。そしてタイミングよくジャンプした佼成のTE北川大智(3年)と関学DB礒田啓太郎(2年)が捕りにいく。二人ともボールをつかんだまま倒れ、最終的には礒田がボールを持っていた。しかし、ルールで同時キャッチはオフェンスのものと決まっている。審判団の短い協議の末に、主審が佼成のTDとアナウンスした。劇的すぎる2年ぶりの優勝に歓喜する佼成の選手たち。一気に突き落とされた感のある関学の選手たちは涙に暮れた。

2年ぶり4度目の高校日本一をかみしめる佼成の選手たち

佼成学園・小林孝至監督
「最後は北川ならやってくれると思ってました。1年生のときからあの練習はやってて、彼は試合でも2回捕ってます。背が高いですし、触ったら片手でも捕りますから。FGよりよっぽど高確率だと思って、敵陣に入ったら北川に託そうと思ってました。捕れなかったら手前に落とすか、奥にトスするよう、ほかに2人を走り込ませてありました。こういう難しい状況の中でクリスマスボウルができたのもうれしいし、しかも関学さんとやらせてもらえた幸せを感じています。フットボールを通して教えているのは、自分の思いをグッと我慢して、チームのため、みんなのためにやるという心ですね。それが一番の勉強だと考えてます」

日大時代は大活躍した佼成学園の小林監督

佼成学園・TE北川大智
「昨日もここ(王子スタジアム)で練習の最後にヘイルメアリーを一回だけやって、捕ったんです。今日とは逆のサイドだったんですけど。だから『捕れるだろうな』という気持ちがありました。試合を通じてあまり活躍できなかったんですけど、最後にいいところを持っていかせてもらいました。佼成は全員が『日本一』という目標を持って、その意識で練習してるのが強さにつながってると思います。練習の質の部分で差がついてると思います。兄(太陽、関西学院大3年のDB)は昨日、LINEで『相手に隙を見せずに3年間アメフトに費やした時間をすべてぶつけてこい』って送ってくれました。僕のあこがれであり、ライバルです。僕は早稲田に行くので、来年の甲子園ボウルで兄の関学とやりたいです」

涙に暮れる関学の選手たち

関西学院・中尾昌治監督
「ちょっとつらい結末になりました。相手の能力の高いオフェンスをあそこまで抑えて、ディフェンスはよく頑張りました。最後の状況になるまでに勝負をつけられなかったのが敗因だと思います。佼成さんは穴がない。先輩が後輩にしっかり教えて、奥深いフットボールがしっかり受け継がれてるのが強さだと感じてます。また次、頑張ります」

関西学院・OL/DL巽章太郎主将
「最後はDLで入ってて、『頼む』という思いでエンドゾーンの方を見ました。今年は春に試合ができなくて、秋の一発勝負は常に危機感がありました。関西大会の準決勝で関(大)一に1点差で勝ったところからチームが一つになってきた感じはありました。でも最後に負けて、コーチにも『負けたら、もっとやっとけばよかったという思いが出てくる』と言われてたんですけど、結局そうなってしまったな、と思ってます」

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