アメフト

関西学院大学のWR梅津一馬、続くか連続日本一 神戸大戦でスーパーキャッチ

スーパーキャッチをみせた関学のWR梅津一馬は捕った後のランも期待できる(撮影・廣田光昭)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は11月28日、トーナメントの決勝が大阪・万博記念競技場であり、関西学院大学と立命館大学がぶつかる。今年は全日本大学選手権が中止となり、同選手権の決勝にあたる甲子園ボウルは2008年までの東西対決になった。関学が勝てば5年連続、立命なら5年ぶりの甲子園だ。最大のライバルとの一戦を前に、関学の若手WR(ワイドレシーバー)が頭角を現してきた。準決勝の神戸大学戦でスーパーキャッチを含め、チームトップの7キャッチを決めた梅津一馬(2年、佼成学園)だ。

リーグ史に残る華麗なプレーで初TD

梅津はトーナメント1回戦の同志社大学戦で公式戦初スターターとなり、2回のキャッチで35ydを稼いだ。神戸大戦でもスターターで、この日は序盤からQB(クオーターバック)奥野耕世(4年、関西学院)のパスが梅津へ飛んだ。

早くも5回のキャッチで106ydをゲインして迎えた第2クオーター(Q)の終盤、ゴール前11ydからの第2ダウン残り10yd。奥野は右サイドを縦に抜き、エンドゾーン右奥へ走り込む梅津へパス。奥野は梅津が相手にカバーされていることを想定して高めに投げた。実際に神戸大のDB(ディフェンスバック)東野諒太(3年、伊丹)が梅津についていた。

ボールが来る。東野がどう判断したのかは分からないが、ボールの方向へ軽く右手を出しただけだった。梅津はボールに対して正対し、後ろへのけぞりながらジャンプ。必死で右腕を伸ばし、手で引っかけるようにしてキャッチ。着地するとき左足をエンドゾーンに残した。梅津の大学公式戦初タッチダウン(TD)は、関西学生リーグ史にも残りそうな華麗なワンハンドキャッチになった。無観客の王子スタジアムで、関学のサイドラインは沸いた。SNSでも絶賛され、梅津一馬の名は全国区になった。「とくに何も考えてなかったです。『あっ、入った』という感じで。高校時代にも1回、試合でやりました」。梅津は淡々と話した。

高い球に飛びつくが、このボールは落球(撮影・廣田光昭)

このゲームの数日後、社会人Xリーグでプレーする関学出身のWRが梅津のスーパーキャッチについてこう言った。「何がすごいって、関学であれをやったのがすごい」。面白いなあ、と思った。関学はどんなチームよりも基本を徹底するチームだ。当たり前だが、パスは両手で捕りにいかないといけない。その選手は続けて言った。「僕やったら両手出して、捕れんと終わってたと思う。とくに4回生のときにあんなことやったら、ヤバいです。下級生だからできたんかもしれないです」と。大村和輝監督はこの試合の直後に「基本的に『両手で捕れ』って言ってますけど、あれは片手でしか捕れませんから。ナイスキャッチですね」と梅津をたたえた。

「アイシールド21」の主人公に憧れて

投げた奥野は「梅津は練習でもあきらめずに片手で捕りにいくってのがあったので、捕ってくれるだろうと思いました」と言って笑った。「僕も梅津も小さいときからアメフトをやってきたので、息が合うところはあります」。アメフトは大学から始める選手も多い競技だが、やはり長く携わっている選手にしか分からない境地があるのだろう。

ラストイヤー迎えた関学司令塔の奥野耕世

奥野が小学1年生で始めたのも早いが、梅津は幼稚園の年長からだ。アメフトをテーマにした漫画でテレビアニメにもなった「アイシールド21」を見て、QBの蛭魔妖一にあこがれたのがきっかけだった。小学6年生まで富士通のフラッグフットボールチーム(神奈川)でプレー。佼成学園中、高(東京)では部活で競技を続けた。高校日本一を決めるクリスマスボウルで3連覇を支え、最初に声をかけてくれた関学への進学を決めた。もともと東京ドームにライスボウルを観戦に行き、目の前で見た関学の強さに心をひかれていた。

佼成学園高では3年連続日本一(撮影・松嵜未来)

ほぼ負け知らずで終えた高校時代。自分自身がその中心選手だっただけに、関学でもルーキーイヤーから活躍できる自信があった。しかしキャッチはうまくてもルートの走り方に問題があり、練習のマンツーマンでDBに勝てない。けがも重なって同期のWR糸川幹人(箕面自由学園)に先を越された。

一人で黙々と反復練習

昨冬の全日本大学選手権・西日本代表決定戦の直前に足を痛め、そこからはリハビリに専念した。その間、WRの先輩である山口遥平(4年、関西学院)にマンツーマンでの体の使い方を教えてもらった。新型コロナウイルスによる自粛期間中に、一人でそれを反復練習した。チームでの練習が始まると、マンツーマンの勝負の中でも、うまく動けるようになっていた。

最初に声をかけてくれた関学に進んだ(撮影・篠原大輔)

神戸大戦を振り返り、大一番へ向けて梅津が言った。「捕れるパスを一回落としました。次の試合でそんなことをしたら勝てない。緊張せず、いつも通りにやりたいです」。高校3年間はずっと日本一、昨年も自分自身は貢献できなかったとはいえ学生日本一。ワンハンドキャッチ男の日本一シーズンは、まだ続いていくのだろうか。

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