オービックシーガルズが7年ぶりの日本一、3TDの関西学院大学及ばず ライスボウル
日本選手権プルデンシャル生命杯第74回ライスボウル
1月3日@東京ドーム
オービック 35-18(14-6、0-6、14-0、7-6) 関西学院大学
アメリカンフットボールの日本選手権プルデンシャル生命杯第74回ライスボウルは1月3日、東京ドームであり、社会人Xリーグ王者のオービックシーガルズが35-18で学生代表の関西学院大学ファイターズを下し、7年ぶり8度目の日本一に輝いた。前半は12-14と健闘した関学だったが、後半に三つの一発タッチダウン(TD)を許し、19年ぶりの頂点はならなかった。MVPにはオービックのWR野崎貴宏(中央大)、MIPには関学のRB三宅昂輝(4年、関西学院)が選ばれた。ライスボウルは社会人の12連勝となった。
キックオフの奇襲で関学に流れ
試合開始のキックオフで、関学のキッカー永田祥太郎(3年、浜松西)が強いゴロを蹴った。これがリターンチームの最前列にいたオービックのRB望月麻樹(関西学院大)に当たってフリーボールに。すかさず関学LB都賀創(3年、関西学院)がおさえた。「当たったらラッキー」(大村和輝監督)というゴロキックが実り、関学のオフェンスから始まることになった。
自陣48ydと願ってもないフィールドポジションから、まずはQB奥野耕世(4年、関西学院)からWR糸川幹人(2年、箕面自由学園)へのパスで攻撃権を更新。主将のRB鶴留輝斗(4年、啓明学院)がOLのナイスブロックで開いた穴を抜け、タックルをかわして27ydゲイン。最後はワイルドキャットフォーメーションのQBに入ったRB前田公昭(3年、関西学院)が10ydを走りきってTD。キックは失敗したが、チャレンジャーとしては願ってもない先制に成功した。
出ばなをくじかれたオービックだが、しっかり攻めた。続くオフェンスでQBジミー・ロックレイ(カリフォルニア大デービス校)がWR前田眞郷(関西大)とWR野崎にパスを通し、最後はRB望月がリバースプレーで8ydのTDラン。キックも決めて7-6と勝ち越した。
続く関学のオフェンスで痛恨のミスが出る。自陣40ydからの第4ダウンで蹴ったパントがオービックのDL平澤徹(関西学院大)にブロックされた。ゴール前14ydからの攻撃権を与えてしまい、最初のプレーでQBロックレイがTEホールデン・ハフ(ボイシー州立大)へTDパスを決めた。オービックは第1クオーター(Q)8分19秒、14-6とリードを広げた。
RB三宅が84yの独走TD
第2Qはともに得点なく時間が進み、このまま前半終了かと思われたときに関学の飛び道具が炸裂(さくれつ)する。自陣16ydからの第3ダウン2yd。この日、ランで時間を使うために多用したワイルドキャットフォーメーションで、QBに入った鶴留が右のインサイドレシーバーから左に走ってきた三宅にハンドオフ。三宅は味方のブロックでできた穴を縦に突き、一気にスピードに乗って相手LBのタックルをはじき飛ばす。左オープンに出て相手の最後のタックラーをかわすと、エンドゾーンまで独走。前回大会に続く独走TDを決めた。関学は同点を狙って2点コンバージョンに出たが、QB奥野のパスは失敗。14-12で試合を折り返した。
意気上がる関学だったが、後半最初のオービックのオフェンスでQBロックレイからWR野崎へ53ydのTDパスを決められ、21-12。続くオービックのオフェンスでもWR西村有斗(日本大)の右オープンランをタックルできず、49ydを走りきられて28-12とされた。
関学はDB竹原虎ノ助(3年、追手門学院)のインターセプトで敵陣47ydからの攻撃権を得たが、第3ダウン17ydに追い込まれて投じたパスをDBブロンソン・ビーティー(日本大)に奪われた。そして次のオービックのオフェンスでQBロックレイからWRハフへ42ydのTDパスを決められ、第4Q1分41秒で35-12。これで大勢は決した。
RB前田が意地のTD
続く関学のオフェンスは自陣25ydから。QB奥野がプレーが崩れてからの阿吽(あうん)の呼吸でWR鈴木海斗(4年、横浜南陵)へ23ydのパスを決め、攻撃権を更新。奥野のスクランブルや鶴留のランなどで攻め込み、最後はステップ巧みに密集を抜けたRB前田が13ydのTDラン。2点コンバージョンはトリックプレーでQB三宅からWR鈴木へのパスを狙ったが、長すぎて決まらず。試合残り5分12秒で35-18。続くキックオフで関学はオンサイドキックに出たが、オービックに抑えられて万事休した。
関学の大村和輝監督 「前半は非常にラッキーな入りでそのままスコアできた。ワイルドキャットでボールコントロールしながらロースコアで後半迎えたいと考えていたが、うまくいった。上出来だった。後半はシーガルズさんが目が慣れ、ディフェンスがしっかりアジャストされてきたところでちょっと地力の差が出てきた。ディフェンスはよく、ランプレーはほぼ止められていた。よく頑張ったと思うが1対1の実力差。あとは自分たちのアジャストミスで失点したので、その辺はシーズン通して詰め切れなかった。1、2年生に若いポテンシャルの高い選手が多いので、彼らにどうやって経験を積ませるか。コロナ禍でどうなるかわからないが、何とかうまく経験積ませてポテンシャルを発揮させたい。4年生は、今年よくも悪くもこういう状況で例年の4年生が経験できていたことができなかったし、逆に今年だから経験できたこともある。そこはしっかり振り返って下級生のために残していってほしい」
関学の鶴留輝斗主将 「今シーズンの詰めの甘さが出た。オフェンスに関しては自分たちのミスで得点ができなかったり、パントブロックされたり、本当に自滅で流れよかったのを自分たちで切っていた。もっといい試合ができたと自分では思っている。そこまで引き上げられなかった自分の責任だと思っている。自分が主将になってどんな状況でもやると決めたことに対して責任を持ってやることが大切で、それをこのチームで学ばせてもらった」
関学のQB奥野耕世 「やってみたら(オービック)DL(35番の)の佐藤さんが一番嫌でした。スピードがあるし、いつも嫌なところに佐藤さんがいたって感じです。たぶん去年まで立命のディフェンスコーディネーターだった池上さんがいるからだと思うんですけど、両サイドのエンドがいつもしっかり外に張ってて、外に出してもらえませんでした。研究されてるな、と思いました。もっと鈴木海斗に決めたかったですけど、海斗が前半にけがをしたのもあって……。終わった瞬間は思い出がよみがえって、泣いてしまいました」
MIPに選ばれた関学のRB三宅昂輝 「試合前から自分が目標にしていたのは独走してTDすることだったので、それがしっかりできたのでよかった。何回か相手のディフェンスラインにタックルされてロスされ、ゲインできない場面があったので、そこで自分の個人技でもっとゲインできればよかった。中学から10年間、アメフトを関西学院でやって人間的に成長できた部分などがいっぱいあるので、それを社会人になって活用したい」
オービックの地村知樹主将(関西大学) 「チームの勝利がうれしいと思うと同時に、関学さんが本当に泥臭く、最後の最後までプレーしていたのが印象深い試合となった。僕たちも前半、苦しめられましたし、関西学院大学さんのあの姿勢というのは見習うべきだなという風に再認識できた試合だった」