全日本ジュニア王者、同志社大・本田ルーカス剛史の挑戦 4回転習得へ意欲
シーズンの締めくくりとなる世界国別対抗戦が幕を閉じ、選手たちは北京オリンピックシーズンに向けて準備を始める。羽生結弦(ANA)や宇野昌磨(トヨタ自動車)らトップ選手を追うのが同志社大学1年の本田ルーカス剛史(つよし)だ。コロナ禍で練習や試合が制限された2020年、本田は全日本ジュニア選手権優勝、シニアのグランプリ(GP)シリーズNHK杯3位と飛躍した。24、25日には所属の木下アカデミーのアイスショーに出演する。来シーズンへどう挑むのか、意気込みを聞いた。
NHK杯3位「自信になった」
大阪府出身の本田は小学2年のとき、浪速アイススケート場(大阪市浪速区)で本格的にスケートを始めた。滋賀県の綾羽高校に進学し、部員は本田だけのスケート部に所属、全国高校選手権(インターハイ)などに出場した。高校3年の20-21年シーズンは全日本ジュニア選手権優勝、GPシリーズNHK杯3位と結果を残した。
「結果を見ればすごくいいシーズンでした。新型コロナでなくなった試合もありましたが、ジャパンオープンやNHK杯に出場し、貴重な経験ができて自信になりました」
現在は京都府宇治市の「木下アカデミー京都アイスアリーナ」を拠点に、トップ選手を育成する濱田美栄コーチのもとで練習を積む。全日本ジュニア王者、NHK杯メダリストとして新しいシーズンを迎える。
理想は楽しんでもらえるスケート
本田の持ち味は高さと幅のあるジャンプ。特にトリプルアクセル(3回転半)ジャンプは豪快でダイナミックだ。小さいころから好きだった力強いジャンプを追い求め、自分のものにした。
スケートを見るのも好きで、参考にした先輩たちを数えれば切りがない。ジャンプの質は羽生結弦、スピンはステファン・ランビエル(元スイス代表)、スケーティングはパトリック・チャン(元カナダ代表)、表現は高橋大輔(関西大学カイザーズフィギュアスケートクラブ)やハビエル・フェルナンデス(元スペイン代表)、ジェレミー・アボット(元アメリカ代表)。偉大なスケーターの映像を繰り返し見ては自分の映像と照らし合わせて滑りを磨いた。
理想は表現で見せられるスケーター。「見ている人に楽しんでもらえるスケートがしたい」という。現役選手では例えば、ジェイソン・ブラウン(アメリカ)や閻涵(ハン・ヤン、中国)のような、3回転ジャンプだけで演技構成しても観客の心を動かすことができる選手だ。「僕がスケートを始めた頃はいまのような4回転時代ではなくて、表現だけで見てられる選手がいた。そのころの理想があるのかなと思います」
だが、上位に行くためには4回転ジャンプなしでは戦えないこともわかっている。「今の時代にどう勝つかを考えると4回転が複数種類、複数本必要になります。回転があまり速くない分を高さでカバーしてきましたが、4回転になると高さ以外も必要になります。いまは回転力や瞬発力をつけるようにいろんなことを試しています」。チューブを使って回転の基本動作を確認したり、効率のよい体の動かし方を考えたり。新たな武器として4回転トーループを習得している途中で、将来的には4回転ルッツにも挑戦したいという。
解剖学や心理学にも興味
今春、同志社大学スポーツ健康科学部に入学。滋賀を拠点に練習していた頃、同志社大学の先輩を見て、通ってみたいと思うようになった。同志社と言えば、今春卒業した学部の先輩でもある2018年世界選手権5位の友野一希や昨年の全日本選手権に出場した商学部2年の森口澄士(すみただ)ら上位選手もいる。
学業では栄養学や解剖学に興味がある。「効率のよい体の動かし方、けがをしない体づくりを学びたいです。根拠や理屈があるアプローチをしていきたい。それをしている中で新しい課題も見えてくるかもしれない」と語る。メンタルが重要なスポーツという観点から心理学にも関心を持っている。多方面から競技の向上に必要な知識を存分に吸収するつもりだ。
フリーは高橋大輔と田中刑事の曲から
来シーズンへ向けてプログラムづくりも始まっている。ショートプログラム(SP)の「苦悩する地球人からのSOS」は継続、フリーは変更する予定だ。そのプログラムは偉大な先輩2人の曲から構成する。高橋大輔の「ブルース・フォー・クルック」(2011~12年シーズンのフリー)と、田中刑事(倉敷フィギュアスケートクラブ)の「メモリーズ(ザ・プロフェット)」(2017~18年シーズンのSP)を組み合わせた作品となる。音楽にはこだわるという本田が選(よ)りすぐった2曲だ。「ハードルが高いと思いますが、納得いくものにしたい」と意気込む。
来シーズンに向けて、年末の全日本選手権6位以内を目標に掲げる。「まだ北京オリンピックは狙える選手じゃないと思うので代表争いの雰囲気をちょっと知ることができたらいいなと思います」と控えめ。だが、上位争いには意欲的だ。「4回転を習得して、演技構成に組み込む。そうしないと6位以内は目指せない。そしてけがをしないこと。そのための体づくりをしていきたいです」
伸び盛りの18歳がどんな成長を遂げるのか、注目したい。
◆下記画像から木下スケートアカデミーへの応援・寄付ができます。
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