早稲田大・小野史裕主務 憧れた早慶戦、選手に恥じないハードワークでチーム支える
早稲田大学ラグビー蹴球部。150人を超える部員が集う名門が常に輝き続ける裏には、精密に組織化された学生スタッフの存在が欠かせない。そして、そのスタッフを統括し、選手たちを最も近くで支え続けているのが、今年度、早大ラグビー部の主務を務める小野史裕(4年、本郷)だ。早慶戦の舞台に魅了され、その夢を抱いて入部した彼が、主務として迎える学生最後の伝統の一戦に託す思いとは。
「3年の早慶戦までは選手を続けたかった」
―ラグビーを始めたきっかけを教えてください。
中学3年の時に、後に慶應義塾大学に進学してトヨタ(ヴェルブリッツ)でラグビーをしている福澤慎太郎という友達がいたのですが、高校の部活で迷ってるという話をしたら誘われました。ラグビーは何も知らなかったのですが、ノリと勢いで始めました。
―3年生で次期主務として副務に選ばれましたが、その経緯を教えてください。
学年で話し合いをして誰が副務になるかと相談した結果、僕でした。チームに対してコミットできる人間というところで真面目さが基準になるので、自分は選手として自分と向き合いながらやってきたという自負はあるので、そういうところを見てくれたのかなと思います。最終的に決定した監督がいうには、小野が協会の人や招待試合のスポンサーとなる企業などと話しているところが想像がつくということでした(笑)。
―3年時の副務と選手の兼任の経緯はどのようなものでしたか?
元々早慶戦に出たいという思いでラグビー部に入部していて、実は大学1年生の頃はラグビー部に入っていなかったのですが、その頃に福澤が早慶戦に1年生から出ると言うことで見に行ったんです。福澤が試合に出ている姿と当時の自分を比べた時に、自分ももっと頑張らなきゃなというか、早稲田大学に入ったからにはラグビー部に入って早慶戦でこいつと戦おうと思いました。それを目標にやってたので入部当初から3年生の早慶戦に出ますと言っていたんですね。なので3年生の早慶戦まではどうしても続けたくて。これはずっと監督にも言っていたので自分の希望をくんでいただいて兼任していました。
―選手としての引退試合がCチームの早慶戦でしたが、どのような気持ちで臨みましたか?
結果的に対抗戦の早慶戦には出られず、その後にたまたま行われた慶應との練習試合を引退試合という形でやらせていただいたんですけど。元々の予定では11月23日までであったところを12月9日まで続けさせていただいたところとか、副務をやりながら選手もやるというところで、色んなところでしわ寄せがあったと思うんですけど、そこに対して誰も文句を言わずに支えてくれたというところの感謝を込めて、自分のラグビー人生の中での一番の試合にしようと意気込んで試合に出たのは覚えています。
主務という役割で感じた「やりがい」
―現在の主務の業務はどんな仕事ですか?
本当にやれることは全部やるんですけど、まず全体のスタッフのマネジメントや、遠征や試合のスケジュール調整、あとは渉外業務というところで、遠征や招待試合の時のスポンサーの方とのコミュニケーションや、現地の協会の方や地域の方だったり、部に関わってくださる方に対してコミュニケーションをとって、自分が顔になるというところが主務の大きな業務です。
―苦労を感じるのはどんな時ですか?
公式戦のスケジューリングは大変な業務です。選手がどういう風なスケジュールであれば結果が出しやすいかというのをSCコーチやヘッドコーチと考えたり選手にヒアリングをしたりとか、自分がハブになって調整をしていくので。そこは大変だしやりがいがあると思います。
―やりがいや、モチベーションは何かありますか?
僕の目標として、「小野が主務になってくれてよかった」「小野が主務だから日本一になれた」というような主務になれたらいいなと思っていて。これを目指すために自分がどのようなことをすればいいのかを自分で考えて実践していくのがやりがいのある業務だと思います。
―選手を引退し主務一本になったことで、どのような変化がありましたか?
去年と今年の違いは視野が広がったということです。去年から全体のマネジメントには携わらせていただいていたんですけど、補佐的な立場で動いていました。今年主務になって自分が責任を持たなければいけない部分が広がったことで、自分が変えていける部分がすごく大きくて。全体を見渡してどういう問題点があるのかというところをすごく見れるようになったと思います。
早慶戦は「人生を変えてくれた舞台」
―早慶戦に対してどのような思いを現在持っていますか?
自分が一番憧れだった舞台ということで特別な思いもありますし、やっぱり早慶戦って慶應さんも早稲田と試合する時は目の色が違うというか。今までのリーグ戦と比べて別のチームと戦っているようなやりづらさや難しさを毎年感じている試合になっているので、そこについては早稲田が日本一になる上で落とせない重要な試合になってくると思います。
―自分が出たかったという悔しさ、憧れはありますか?
もちろん出たかったですし憧れはありますけど、選手として割り切らせてもらったというところと、選手をやめて主務になって選手に恥じないようなハードワークをしてプライドを持って業務に当たろうとは思っているので、主務として自分が仕切って試合をするというようなところでは、出場するという時と同じ気持ちを持っていますし、それが今僕が誇りに思っている部分です。
―主務から見た慶應の印象はいかがですか?
スタッフ陣で話していてもやはり優秀な方々なので、やりとりにやりやすさを感じます。社会人スタッフを含めてすごく動きが速いところもいくつかみられるので、僕も見習って主務としての業務やスピード感で負けないように、自分が日本一の主務であるようにというのは心がけてやっているので、刺激を受けていたりしますね。
―印象に残っている早慶戦はありますか?
ラグビー部に入ったきっかけの早慶戦もありますが、やっぱり去年の早慶戦は覚えていますね。自分が出ると決めてた舞台だったので悔しさも含めて。あと僕はその日引退するってみんな知ってたので、まあ実際しなかったんですけど(笑)。ケンジ(佐藤健次主将、4年、桐蔭学園)が「もしこの試合でPOMをとったらお前にメダルをあげようと思ってた」と言われて、実際ケンジは取らなかったんですけど、それをケンジに試合後に言われたのは印象に残ってますね。
―小野主務にとって早慶戦とはなんですか?
人生を変えてくれた舞台というか、大げさじゃなくそうなので。早慶戦を見なければラグビー部にも入っていないし、もちろん主務にもなってなくて何してたかわからないので。大げさじゃなくて人生を変えてくれたところですね。
支える立場として、ラストシーズンへ
―佐藤主将に対しての印象はいかがですか?
最近のケンジをみているとさすがだなと言うか。天性の人懐っこさや人あたりの良さもありつつ、グラウンド内ではすごくストイックで、周りを巻き込む力というか圧倒的な実力と努力量で勝手に人がついてくるので、リーダーになるべくしてなってるなあと思っています。
―同期、4年生へ一言お願いします。
紆余(うよ)曲折ありながら4年間を共にすごした仲間は大切で特別だと思っていて、僕は選手兼任含めてみんなに支えてもらって、今年はみんなのことを支えて日本一を目指して導いていけるような主務になれるように頑張っているところなので、あと3カ月も無いですけど共に切磋琢磨(せっさたくま)して日本一をとりましょう。
―ありがとうございました!