ラグビー

特集:第101回ラグビー早慶戦

慶應義塾大・小城大和副将 仲間の存在と副将としての責任感がラストイヤーの原動力に

慶應の「スター選手はいないけど強豪を倒す」姿が元々好きだったという(すべて撮影・慶應スポーツ新聞会)

今年創部125周年を迎えた慶應義塾大学の副将・小城大和(4年、北嶺)は、高校3年生まで追い続けていた医者になる夢から路線変更をし、蹴球部に入部した。そんな彼のラストイヤーとなる今年、1人の大学生「小城大和」に、そして蹴球部を引っ張る敏腕SH「小城大和」に迫る。

第101回ラグビー早慶戦
大学から始まり世界へ 日本ラグビー125周年

「ここ1年、自分がしてきたことに後悔はない」

―この1年間で後悔していることはありますか?

考えてみたんですけど、正直ここ1年で後悔していることは本当になくて。もっと頑張れば良かったなとか、やりかたをこうした方が良かったなって思う瞬間はあるんですけど、本当にそこに戻ってどうこうしたいっていう後悔ではなくて、シーズンの初めに副将っていう形でみんなのリーダーに選ばれて、一日一日大切にして全力でやっていこうということを最初に決めてやってきたので。自分がしてきたことに対する後悔っていうのはなく、今のところまで来ているかなと思います。

―プライベートでも後悔はないですか?

もうちょっと大学に行って友達作っておけば良かったかなと思うくらいですね(笑)。

―この1年で自分が変わったことは何ですか?

一番変わったなって思うのは、よく親とかにも言われるんですけど、結構人に興味を持つようになったことですね。

正直去年までは、自分のプレーに良かった悪かったってすごく執着していて、周りの選手の調子いい、悪いとかは自分の中で思うことはなく、ひたすら自分にフォーカスを当てて頑張ってきました。でも、やっぱりリーダーに選ばれたことを一つのきっかけに、バックスをまとめていく中で、みんなにうまくなってほしいっていう気持ちはあって。この選手は落ち込んでいるからカバーしようとか、人のプレーに対して言えることはどんどん言っていこうとか。

人に対するアプローチを増やしていくっていうことが、そういうところにつながった1年だったなと思います。

―対抗戦が何試合か終わって苦しい試合が続いていますが、その中で小城選手にとってのラグビーの原動力とは何ですか?

同期とか後輩とか本当にいい人たちばっかりで、そんな仲間と一緒に勝ちたいっていう思いが一つ。もう一つは、このチームの副将に選ばれたという責任感がすごくあって、チームを前に進めるために自分が動かなきゃいけないっていうのはありますし、そういったところもすごく自分の原動力になっています。

副将になったこの1年で、周りの選手に対してアプローチしていくようになったという

「同期とご飯に行く時間が楽しい」

―大学生活も終盤に差し掛かっていますが、いま大学生活は楽しいですか?

はい、楽しいですね(笑)

―具体的に、ラグビー以外で楽しかったことは何ですか?

部活の時間以外も、同期といることが多いんですけど、飲みにいく時間とか。(部活以外に)大学の友達も何人かはいて、ご飯食べに行ったりとか、そういった時間はすごく好きです。

―今ハマっていることは?

くだらないゲームを少しやっています。広告に出てくるゲームとか、スイカゲームっていうやつとか。そういうゲームを暇な時に無心でやっていたりすることがあります。

「医学部ではなくラグビーを選んだことは正解だったか」

―1年後の自分に何か聞きたいことはありますか?

大学でラグビーをやるっていう選択肢は高校3年生までなかったので、ラグビーを選んだことは良かったのかなっていうのを、1年後の自分に聞きたいですね。

―高校3年生までは大学で何をしようと考えていたんですか?

昔からの夢が医者だったんですけど、医学部に行きたくて勉強していたので、ラグビーをやるっていう選択肢は全くなかったっていうことです。

―何をきっかけに慶應でラグビーをやろうと思ったんですか?

もともと慶應ラグビーの、「スター選手はいないけど強豪校を倒す」という感じがすごく好きでした。高校2年生の最後に慶應からお声掛けをいただいて、1回日吉のグラウンドに来て練習をしたんですけど、その時に「ここでラグビーをやらなきゃ4年間後悔するだろうな」って思ったことがきっかけです。

医者を夢見ていたが、「ここでラグビーをやらなきゃ4年間後悔するだろうな」と感じ、慶應蹴球部を選んだ

「いい仲間に巡り合えたことは一生の宝物」

―もうすぐ建て替え工事で秩父宮ラグビー場がなくなりますが、何か思うことはありますか?

秩父宮がなくなるわけじゃないので、どうこうっていうのはないんですけど、秩父宮でラグビーをするっていうのが自分の中で特別なこと。一番ラグビーをしていて気持ちがいいというか楽しい会場が、秩父宮ラグビー場で。観客と距離が近いっていうところや、自分は1年生の早慶戦で初めて対抗戦に出たんですけど、その試合も秩父宮で。グラウンドに入っていく瞬間とか、本当に秩父宮の雰囲気が忘れられなくて。自分の中では特別なスタジアムなので、きれいに建て替えされるんだったらすごくうれしいですし、うまくいってほしいなと思います。

―仲間に伝えたいことは何かありますか?

難しいですね。みんなで飲む時にそういう熱い話をしちゃうような代なので、いつも伝えてるからあんまりないんですけど、まあラグビー部の仲間には、すごく自分がきつい時もずっと支えてもらって、逆に自分が人を支える時もあって、こんなにいい仲間に巡り合えたことは一生の宝物というか。そういうことを心の底から思っているので、感謝と、あとは残り2カ月くらいですけど、「勝とう」っていうのを仲間に伝えたいなと思います。

―大事にしている言葉はありますか?

楽しむことをすごく大事にしています。きつくても楽しめばなんとかなるっていう。そう思っていればすごく救われる自分もいて、自分の中ではすごく助けになっているかなと思います。

―どんな瞬間に楽しむことを意識していますか?

昔から大事にしてきたことなので。楽しむっていうことを特に意識しているのは、チームが負けている時とか、きつい時とか、苦しい時、そういう時でも楽しむっていうのを自分の中で意識して言い聞かせているようなことはあります。

―試合前に音楽を聴いたりしますか?

聴いてますね。FUNKY MONKEY BABY’SとかWANIMAを聴いてます。

―どうしてそのあたりの曲を選んでいるんですか?

昔からあるバンドじゃないですか。それで自分がずっとスポーツしてきたので、ずっと試合前に昔から聴いてる曲なので。これを聴かなきゃ勝てないとは全く思ってないですけど、聴いていれば落ち着くなっていうか、そういう感じで聴いています。

―音楽以外にルーティンみたいなものはありますか?

ありますね。一つ目は、試合前日にめちゃめちゃご飯を食べるっていう。あとは試合前は塩をなめるとか、お守りを持つとか。そういうことをしています。

「きつくても楽しめばなんとかなると思っていれば、すごく救われる自分がいる」

「これからどんどん強くなっていく姿を見てほしい」

―春に優勝(関東大学春季大会Bグループ)した時の気持ちはいかがでしたか?

素直にうれしかったっていうのが一番大きいですね。中学高校はあまり強いチームでやってこなかったので、優勝を経験したことがなくて、大学3年生まで優勝っていうものをみんなで喜んだ経験は一度もなかったので、初めてリーグ優勝という形でシーズンを終われたのは、純粋に、素直な気持ちでうれしかったです。

―対抗戦に向けて、夏にどんな準備をしましたか?

自分はバックスなので、どうやったらアタックが良くなるかとか、あとは外側を守るディフェンスが、どうやったら強豪に通用するようになるのか。そういうところを夏に考えながら準備した記憶があります。

―今月は早慶戦が控えていますが、今までの対抗戦で何か得たものはありますか?

やっと、自分たちがするべきラグビーが、この数試合を通して固まってきたというか、いいディフェンスをして陣地を前に進めながら、春から強化してきたアタックでトライを取って勝つという、そういった慶應ラグビーの流れを体現できてきたのが一つ。あとは筑波、帝京、明治、青学とやってきたんですけど、正直、大敗したところもあれば青学にはギリギリの勝利と、自分たちの立ち位置が、自分たちの目指しているところにはまだまだ届いていないと実感できたことが、プレー面以外で一つ得たことかなと思います。

―4years.の読者の方々にメッセージをお願いします。

自分自身大学4年生で、社会人ではラグビーをしないので、残り2カ月くらいがラストになるんですけど、自分の持っているものを全て出し尽くす覚悟で、毎日練習しているので、慶應っていうチームが「選手権ベスト4以上」という目標に向けて、これからどんどん強くなっていく姿を見てほしいですし、必ず強くなっていきたいと思うので、期待して見てほしいなというふうに思います。

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