慶應義塾大CTB山本大悟 対抗戦の試合重ねるごとにチームが自信 雑草魂で早慶戦へ
高校時代から活躍する傍ら、一般入試で慶應義塾大学に入学した山本大悟(3年、常翔学園)。フィールドでは常に明るい表情を見せ、チームの雰囲気を作りながら、自身は得点の要として大活躍する。彼の大学生活と試合への意気込みについて聞いた。
「人との直接的なつながりは、言葉以上に意味」
―コロナ禍を振り返って、どんな日々でしたか?
高校生の時はモロに食らって、今と比べて人とつながってる感じが薄かったなと思うところがあって。高校時代、僕はキャプテンをしていたのですが、練習が対面でできないことになって、そう思う部分が強かったです。去年ぐらいからちゃんと練習が始まって、人と人の直接のつながりを肌で感じて、言葉以上に意味のあることではないかと感じました。またラグビーの競技特性上、必要なことであると感じます。
―コロナ禍がなかったら今とは違う道を歩んでいたと思いますか?
コロナがあってもなくてもここに来たのではないかと思います(笑)
―コロナ禍の自分に向けて何を伝えたいですか?
もっとできることがあるよと伝えたいですね。環境が大きく変わって、それに対応できず時間を持て余していた感じはありますね。もっと時間を有効活用しろと言いたいです。自分は趣味が多いのでそれに時間を使ってましたね。料理とかもしてました。
―コロナ禍が過ぎ、何か変化はありましたか?
ラグビーの部分ではそこまで変化はなかったですが、自分の足を使うということは心掛けていたと思います。オンラインで買い物を済ませられるものであっても、直接外出して買いに行ったりとかはありましたね。物理的、フィジカルな方を意識するようになりました。
苦しい時期も、ラグビー愛を原動力に
―この1年間で後悔していることはありますか?
「後悔はなしにしよう」と常に思ってるので、基本ないですけど、強いて言うなら、春に結果が出たのに、夏も対抗戦も、うまく流れを持ってこられなかった。チームにポテンシャルはあるのにそれをうまく引き出せず、もう少しできることがあったのではないか、という後悔はありますね。
―この1年で自分が変わったことは何ですか?
今年からリーダーグループに入ったことです。去年とだいぶ違うところで、チーム運営側に意見できるような立場になって、自分も積極的に意見をぶつけられますし、思っていることもいろいろ言えるっていう部分は、一番変わったと思います。
―対抗戦が何試合か終わって、苦しい試合が続いていますが、その中で山本選手にとってのラグビーの原動力とは何ですか?
ずっと続けてきたラグビーがやっぱり好きだ、という思いもありますし、大学3年になってくると試合に出られない選手を気に掛ける時間ができたと思います。1年では試合に出られたらもう十分だっていう感じだったんですけど、3年生になってだいぶ主力に定着するようになると、それ以上に何か原動力が働いて、試合に見に来てほしいだったりとか全体を気に掛ける力ができてきたと思います。
後で「妥協しなくてよかった」と思える道を
―大学生活も折り返しですが、今、大学生活は楽しいですか?
毎日充実しているかと思います。もともと慶應に入ったのもラグビーだけでなく、大学の雰囲気とかも好きだったので、とても大学生活も楽しいです。
―具体的に、ラグビー以外で楽しかったことは何ですか?
音楽のライブとか服とかも好きで、よくお宝ものみたいなのを探してきます。少し一つに決めるのは難しいです(笑)。最近は就活で忙しい日が続いているのですが、時間が許す限り色々やってます。
―今ハマっていることは?
最近特に音楽は好きで、ちょっと時間が取れない中でも「ながら聞き」はやってます。
―試合前に音楽を聴いたりしますか?
僕は一人のミュージシャンが好きというよりは、広く浅くいろいろな分野に手を出すんですけど、青山学院大学戦の前に聴いたフランク・シナトラの「That’s Life」という曲は、1週間前に見たジョーカーの映画で流れていた曲で、結構そういうところで影響されて音楽を聴くっていうのはありますね。
―1年後の自分に何か聞きたいことはありますか?
自分は「後悔だけはしたくないな」と思ってて、そういうニュアンスの言葉を使うことが多くて、多少しんどくても、後で「妥協しなくてよかったな」と思える道を選べればと思いますね。
「仲間への思い プレーを通して伝えられたら」
―もうすぐ建て替え工事によって秩父宮ラグビー場がなくなりますが、何か思うことはありますか?
小学生のころからずっと正月の対抗戦などをお父さんとテレビで見てて、ずっとあこがれの舞台で、そういうところがなくなるのは悲しいです。ラグビー専用のスタジアムなんで、観客席とフィールドがすごく近いんです。大阪の花園ラグビー場もそうなんですが、そこに臨場感を感じられてとても強い印象を持ちます。これから建て替えられてまた同じ建築になるかもしれないのですが、あの独特な雰囲気がなくなるのは悲しいですね。
―仲間に伝えたいことは何かありますか?
今年1年間は立場が変わったりで、良くも悪くも僕がいい影響を与えられたり、悪い影響を与えうる立場であると自覚しています。試合が始まったらそうも言ってられないので、言葉よりもプレーを通して仲間に伝えられたらと思っています。
―大事にしている言葉はありますか?
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉は、できることはやらなければいけないとは思うんですけど、自分でコントロールできない面というのは、ラグビー以外でも多いと思います。完璧を求めるのではなく、流れに身を任せれば何とかなるというマインドは、常に大事にしています。
「スター選手が多くないからこその雑草魂を」
―春に優勝(関東大学春季大会Bグループ)した時の気持ちはいかがでしたか?
慶應に入ってから優勝を経験したことはなかったので、単純な優勝よりも大きな喜びがあったと思います。
―対抗戦に向けて、夏にどんな準備をしましたか?
春はいい感じで終えられたので、そこをどうやってつなげるかを意識してやっていった感じです。
―今月は早慶戦が控えていますが、今までの対抗戦で何か得たものはありますか?
自分たちのやってきた部分が全く通用しないわけではないっていうことです。その気持ちは最初の2戦であやしくなってたんですけど、その後の試合で自分たちが通用する部分も出てきて自信を持てました。慶應は内部進学がほとんどで、大舞台を経験した人が少なくて、初めて対抗戦出た人が結構な人数いたっていう感じで。その初めて出た人たちが最初のほうであまりうまくいかず、自分もサポートしきれなくて、という部分があったので、秩父宮で対抗戦をやって大舞台での経験値を積めたことが、早慶戦につながると思います。
―4years.の読者の方々にメッセージをお願いします。
慶應ラグビー部は、学生スポーツを一番体現できる場所かと思います。スポーツ推薦がないので、他大学とその点でまず違っていて、スター選手が多くなくほかのチームと比べると個の質が落ちるのですが、雑草魂みたいのが働いて、その気持ちが結果に結びつくのかという面が、見ている人も注目していると思います。僕たちも雑草魂で食らいつくプレーを見せられれば、と思っています。皆さんがそのプレーを見て心動かされたのならいいのではないかと思います。