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中京大アメフト・大橋誠HC「法政戦にすべて突っ込む。その覚悟がどう出るか楽しみ」

九州大学戦の試合前、コイントスに臨む中京大の松元キャプテン(2番)ら(すべて撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの全日本大学選手権は11月23、24日に準々決勝の4試合がある。中京大学イーグルス(東海)は、2年連続20度目の甲子園ボウル出場を狙う法政大学オレンジに挑む。社会人Xリーグ・オービックシーガルズのヘッドコーチ(HC)として通算19シーズンで6度の日本一に導いた大橋誠さん(59)をHCに迎えて2年目の秋。昨年のリーグ戦で敗れた名城大学に圧勝し、選手権でも北海学園大学(北海道)、九州大学(九州)に快勝している。大橋HCは「ウチは守るものは何もない。もし次に進むことになっても上級生は削れちゃって下級生しか残ってない、そんな状況になったとしても法政さんとの試合に全部突っ込む。その覚悟がどう出るか楽しみにしています」と話している。

オフェンス最初のプレーでキャプテンがTDラン

11月16日の選手権2回戦(福岡県営春日公園球技場)で、中京大は38-9で九州大学を下した。オフェンス最初のプレーでRB(ランニングバック)の松元奏キャプテン(4年、愛工大名電)が18ydの先制タッチダウン(TD)ラン。続く九大オフェンスにドライブを許したが、DB(ディフェンスバック)河合輝空(そら、2年、南山)のインターセプトで断ち切った。第1クオーター(Q)終盤には自陣で短いパスを受けた松元が2人のタックルをかわす。前が開けて独走TDになった。

中京大OL、TEのナイスブロックでRB松元が駆け抜ける

第2Qに入り、河合が二つ目のインターセプトを決め、ゴール前4ydまでリターン。RB高橋快斗(3年、愛工大名電)が持ち込んでTD。パント時のスナップが「ホームラン」してのセイフティで2点を失い、TDパスも許して21-9となったが、その後は危なげなく試合を運んだ。OL5人の平均サイズは身長184cm、体重101kg。QB(クオーターバック)はパサーの石堂凌我(2年、中京大中京)と内藤賢吾(3年、中部大春日丘)の併用。ディフェンスはLB(ラインバッカー)の花野哲平(4年、愛工大名電)を中心にスピード感にあふれる。

九大戦で二つのインターセプトを決めたDB河合。法政戦のキーマンの一人だ

4年生は去年から比べると格段に成長した

中京大・大橋誠HCの話

――就任2年目、どんな思いでここまでやってこられましたか。
去年やってみて東海リーグ優勝すらできなかったんで、そんなに簡単じゃないなと。まずは1年かけて、選手の気質だったりチームの風土だったり根っこのところが変わらないと、うまいシステムなり何なり乗っけたとしても難しいなということは考えてたので、今シーズンはどこまでいけるかなと思いながらやってきたというのが本音ですね。

――根っこのところで何が問題でしたか。
世の中で言われてることの中で、彼らはある種の相場感を持ってフットボールをしています。こういう感じだったら勝てるし、こうなったら負けると。そういうところから切り離して、1プレーをどうやって完成させるのかというところにフォーカスさせる。基本的には流れとかモメンタムとか勢いといったものに乗っかってフットボールをしているうちは勝ったり負けたりするし、本来勝てる相手にも勝てないってことが起こる。こういうことを1年間ずっと言ってきて、ある程度みんな分かり始めてきたのかなと思ってはいます。

九大戦でランプレーに対する強さを示した中京大ディフェンス陣

――選手の中で大橋さんのフットボールを最も理解してるのはキャプテンですか。
キャプテンが一番大きいと思いますし、今年の4年生は去年から比べると人として格段に成長したと思います。一番変わったのは自分に厳しく、人に厳しくできるようになった。勝つにふさわしい人間だったらどういう言動をするのかというようなことが、勝手にやれてるとは思わないですけども、そういう会話だったり、そういう瞬間を垣間見ることが増えましたんで、だいぶ成長したなと思います。松元はほんとにいいキャプテンになったと思います。

――キャプテン、副キャプテンはどうやって決まったんですか。
いろんな決め方をしてきたと聞いていたんですが、今年に関しては僕が決めました。今年のキャプテンは松元にやらすと。理由はほんとに分かりやすくて、このチームで一番のフィジカルエリートをどういう風にメンタルエリートに育てるかっていうのが今年の僕のテーマだったんで。割と早いタイミングで変わってくれましたね。いまはもう何も言わなくても僕がイメージしてた以上のキャプテンシーを発揮してくれています。

――彼に関して、変わったなと感じた瞬間はどんなときだったんですか。
もともとは他人に興味がないタイプで、自分を磨くことに関しては興味が強かったんですけども、春シーズンのあたりから「こういうチームであろう」と話すことが昨シーズンより増えました。そこで変わったと思いましたし、シーズン内でもけがなどを乗り越えていまがあって、そんな中、彼自身がずっとチームを第一で会話をして鼓舞してくれました。そういうのを見て、1年で人間はだいぶ成長するなあというのを感じてますね。

――高校時代までの野球経験者が多くて、いいアスリートがいますね。
はい、あとはサッカーです。松元なんかはサッカーで、彼とディフェンスの中心選手の花野は愛工大名電のサッカー部で、当然バリバリのレギュラーではなかったんですけど、今年選手権出場が決まって、二人がお世話になった先生に「おめでとうございます」と電話をしたそうで、「そんな電話をかけられるぐらい大人になったんだな」って喜んでいらっしゃったみたいです(笑)。

ティーチングとコーチングを織り交ぜることで成長率が変わる

――選手権で関東、関西勢と当たるのは、いまの4年生が1年生のとき以来です。そこへの心意気はどうですか。
年間を通じてどこを見てやるのかっていうことに関しては「チャンスがある以上は甲子園やろ」と言ってきましたし、選手たちもそう言ってます。中には全然イメージない中でとりあえずそう言ってるみたいな選手もいるとは思います。ただ少し違ってきてるのは、去年の冬から中大さん、立教さん、京大さん、桃山学院さんなんかと合同練習をして、関東関西の1部でやってるヤツらがどれぐらいのもんなのか、彼らよりも強いチームとやるのはどういうことなのか。ちょっと肌感は持てたチームなのかなと思います。まあ、でもきっと、来週はガッチガチだと思いますよ(笑)。ウチは何も守るものがなくて、向こうは「負けるなんてあり得ない」と思って戦いに来るはずですし、僕らとの試合で疲弊して関学さんと当たるのは嫌だと思っているはずです。そんな中で僕らは一戦必勝なので。関学さんと試合ができることになったときに上級生は削れちゃって下級生しか残っていないような状況になったとしても、法政さんとの試合に全部突っ込むという話はしてるので、その覚悟がどう出るかは楽しみにしています。もともと社会人でもド弱小のチームからやってきたので、こういうのはなんか楽しいですよ。

――学生を教える楽しさをどんなところに感じていますか。
ティーチング、コーチングを織り交ぜながらやっていくことで成長率がパーンと変わる。社会人はやっぱりコーチなんですよね。どう気づいてもらうかという関わり方で。とくに以前いたオービックシーガルズみたいなチームはいい選手がちゃんと来てくれるチームになってたので、何かを教えるというよりは何かに気づいてもらう、一緒に考えるというのが僕の役割でした。いまは教えてそれを浸透させる、その上で気づいてもらうというようなサイクルで会話していくケースが多いので、変わるヤツは劇的に変わる。そこに醍醐味(だいごみ)があります。あとは、ほぼ毎日接しているってことがあります。だんだんしんどくなってきましたけど(笑)。いまのところはそれが楽しさかなと思っています。

チーム発足当初はミーティングを中心に

中京大・松元奏キャプテンの話

――今日は独走もありましたが、もともとパワーランナーだったんですか。
もともとは逆で、スピードを武器にやってたんですけど、ランニングバックってインチを取るときとか、パワーが必要な部分が出てくると思うので、今年は体重を5、6kg増やしました。体重を乗せて、スピードは維持してという走りを今年は意識してきました。

――自分たちのチームに大橋さんが来る、となったときはどう感じましたか。
ビックリしましたね。トップの人じゃないですか。なんで!?ってなりましたね(笑)。いろんな縁があって来てくださって、それから練習内容も考え方も変わりました。それを土台としてチーム作りもやってきたので、ほんとにすべてがプラスに働いてると思います。

――意識の面で一番変わったのはどんなことですか。
フットボールにかけること、時間だったりお金だったり。いろんなことをフットボールにかけることで譲れなくなる。負けたくないという気持ちが芽生える。気持ちの面ではそこが一番変わりました。それと、チームが始まったばっかりのときは練習せずにミーティング中心で、チームがどう進んでいくかを話し合う時間があったので、選手発で「こういうことをしていこう」という話をするようになったところですね。

――大橋さんからキャプテンに指名されてどう思いましたか。
正直、3年のころから「自分だろうな」と思ってたんですけど、まだまだキャプテンにはふさわしくない人間だったので、自分もかなり努力して頑張らないといけない状況だったから、腹をくくって新チームに入りました。

――チームの目標はどこに置いたんですか。
甲子園ボウル出場というのは去年からだったんですけど、東海も制覇できずに悔しい思いをして新チームが始まりました。目標は変えず、引き続き甲子園ボウル出場としました。

――そのためには関東、関西勢に勝たないといけません。経験として1年生のときに立命館と試合をしていますけど、そのときの感覚からしてどれぐらい難しいものですか。
1年生のときは少しだけ出たんですけど、まったく通用しなくて。スコア(7-49で敗戦)的にもまだまだ足元にも及ばないっていう状況だったんですけど、2年になり3年になり、フットボールのことも知りつつ、関東と関西の状況も知ると、勝てない相手ではないなと。いまの学生フットボールは関東、関西がメインで、それ以外はあまり日の目を浴びない。僕はそれを変えたくて、甲子園ボウル出場という目標に決めました。

松元は来春からX1 SUPERのチームでプレーすることが決まっている

――大橋さんが言うには松元君がだいぶ他人のことを考えるようになったと。
下級生のころはとにかく自分中心で、「自分が活躍すればいいでしょ」と思ってました。でもやっぱり「甲子園ボウルに行きたい」という意志は自分が一番強いと思ってて、チームで一つになってやらないといけないので、チームに自分の気持ちを伝えて、信頼してもらって甲子園ボウルへ行くという声かけはずっとやってきました。

――ともに引っ張ってくれた部員というと誰ですか。
最初は4年生の意識を変えることに結構苦労しました。自分たちの代はちょっと自己中のヤツが多いというか、先輩についていく後輩タイプが多かったので、4年になったときに「自分たちが引っ張っていこう」という人は少なかったんです。だから下級生に声をかけるよりもまずは4年の俺らが姿勢で見せて、言葉をかけてやっていこうってのは、初めから意識してきたポイントです。

法政に勝ったら歴史が変わる

――法政大学にどうやって勝ちますか。
法政とやるからこういうことを始めるってのはもうなくて、新チームが始まってからやってきたことを全力でやるという考えです。

――法政戦でオフェンスはどうありたいですか。
1プレーに集中すること。「勝ってようが負けていようが、目の前の1プレーに集中しよう」と言ってやってきたので、意識の面はそこです。プレーとしてはフィジカル、ファンダメンタルに重きを置いてやってきたので、そこはもうファーストシリーズからやり続けたいです。

――なぜサッカーからアメフトに転向したんですか。
高校時代はけがが多くて、サッカー部なのに筋トレばっかりやってたんです。そしたらたまたま推薦の話が来て。中京のアメフト部から。それでやりたいことも絶対に行きたい大学もなかったので、始めようかなという軽い気持ちでした。

――サッカーのポジションは。
FWでした。僕らの代は選手権予選で初戦敗退しちゃって。サッカーではあんまり活躍することもなかったんですけど、アメフトを始めたらどっぷりはまってしまって、いまに至ります。

――アメフトをやってみて、何がおもしろかったですか。
試合のワクワク感です。最初は痛いし、こわかったんですけど、そこを克服して試合に勝ったときに、「楽しいな」って。サッカーとは違う楽しさがあったんですね。

――中京大学イーグルスの名を知らしめる法政戦にしたいですね。
ほんとに法政に変わったら歴史が変わるというか、常識が覆ると思うので、ほんとにそれが目的で新チームが始まったんで、次は死んでも勝つぐらいの気持ちで挑みます。

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