ラクロス

慶應大の進化する「変幻自在なラクロス」 全てをささげ、日本一に挑む

関東学生ラクロス2020特別大会、慶應大は優勝を成し遂げた(写真は全て慶應義塾體育會ラクロス部男子提供)

昨年度は新型コロナウイルスの影響で全国大会がなくなった大学ラクロス。慶應義塾大学男子ラクロス部は、代替として開催された関東特別大会で優勝した。今年度日本一を掲げて新チームが始動。5月16日の早慶戦は緊急事態宣言の延長を受けて日程が延期となったが、選手たちは次の戦いに向けて士気を高めている。

関東決勝の早慶戦を慶應が制す 慶應・立石真也「点取り屋」よりも「主将」として

スローガン、「DEVOTE」を掲げ

主将・八星輝(4年、慶應義塾)率いる今年度の男子ラクロス部が新たに掲げるスローガンは、「DEVOTE」。一人ひとりがラクロスに全てをささげ、チームに尽くす意識を持って日本一へ臨む、そんな決意を表した言葉だ。新体制になってから、いまだ数カ月。しかし、六大学戦を終えた今、この「日本一に対する当事者意識」はすでに形になりつつある。

そのことを端的に表す変化の一つがミーティングだ。コロナ禍で思うように練習ができない期間、選手はオンラインを通じて、自らの戦術を見つめ直し、また他大学や海外のプレーを研究・分析するなど、膨大な時間をラクロスにささげてきた。選手の間では自発的な意見交換がより活発に行われるようになっている。

コロナ禍でさらに磨かれた、バリエーション豊かな戦術

慶應の一番の持ち味は、個々の技術が作り出す多彩な戦術だ。チームは経験者と初心者で構成され、選手たちは互いに異なるバックグラウンドを持っている。各々のラクロス観、プレースタイルが一つのチームに集約されることで、戦術面において、他大学では見ることのできない多彩さを生み出している。

また、兄・中名生三四郎(4年、慶應義塾)、弟・幸四郎(3年、慶應義塾)の兄弟コンビをはじめ、今年は試合出場経験豊富な選手が数多くチームに残っている。「(彼らからは)プレーに自信がつき、自由にチャレンジする姿勢が見て取れる」と八星は話す。挑戦が新たな発想を生み、それに伴い技術や戦術はさらに磨かれた。

こうしてできあがったのが、ありとあらゆるシチュエーションを想定した「バリエーション豊かな戦術」である。以前からもチームを象徴してきたこの武器は、コロナ禍を経てさらなる進化を遂げた。まさに「変幻自在なラクロス」。アナライジングスタッフを務める大石やまと(3年、慶應NY)は、慶應のラクロスをこのように表現した。

鍵となるのは貝柄海大

昨年から活躍する選手たちが今年もチームに残る慶應。中でも、鍵となる選手として名前が挙がったのは、貝柄海大(3年、大宮)だ。昨年、2年生ながら特別大会初戦で初得点を飾った注目のMFは、2020年度ラクロス男子19歳以下日本代表にも選出された実力の持ち主である。

貝柄(左)は、自分の役割について、積極的に1on1をしかけて武器であるランニングシュートを決め切ることだと話す

活躍の幅を広げてきた彼の最大の武器はランニングシュート。昨年よりもシュートレンジが広がり、相手DFにとって脅威となることは間違いない。貝柄にとって、早慶戦は「目標の一つ」。「そこで決勝点を決めることをイメージしながら、シュート練習をしたこともあった」という。膨大な努力と磨き抜かれた技術が裏付ける、絶対的な自信を胸に、慶應の重要な得点源としてチームを支える。

2年ぶりの開催となる早慶戦に向けて

「集大成をぶつけ合う、絶対に負けられない戦い」。部員たちが早慶戦に懸ける思いは並大抵のものではない。そしてそれは選手だけでなく、スタッフにも共通して言えることだ。大石と共に、ここまでチームを支えてきたマネージャー・上田真緒(3年、慶應女子)は「私たちにとっても早慶戦の舞台は憧れ」と、2年ぶりの開催となる今大会への熱い思いを語った。

抜群に優れたオフボール技術を持つ主将・八星(右)が、チームを勝利に導く

早慶戦が中止となった昨年、早大と戦ったのは特別大会決勝の一戦のみ。5-3で勝利したものの、「いっときも油断できない、緊迫感のある試合」だったという。伝統ある両校のぶつかりあい。部員たちの士気はライバルとの戦いに向けて高まっている。

チームをまとめあげる八星は、「思いの丈をぶつけて必ず勝利をつかむ」と、熱戦への決意を表した。その言葉の裏ににじむのは、主将としての強い覚悟だ。鉄壁の慶應DF陣を支える大黒柱の活躍に期待がかかる。

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