陸上・駅伝

特集:第100回関東学生陸上競技対校選手権

順天堂大学の四釜峻佑、箱根予選惨敗からの復活 関東インカレハーフマラソン

関東インカレのハーフマラソンで4位に入った順天堂大学の四釜峻佑(撮影・全て加藤秀彬)

第100回関東学生陸上競技対校選手権 男子1部ハーフマラソン

5月20日@よみうりランド敷地内周回コース(非公認20.8km、東京都稲城市)
1位 ライモイ・ヴィンセント(国士舘大4年)1:01:13
2位 チャールズ・ドゥンク(日本大3年)1:01:14
3位 ポール・オニエゴ(山梨学院大4年)1:01:15
4位 四釜峻佑(順天堂大3年) 1:02:26
5位 河田太一平(法政大3年)1:02:41
6位 佐藤航希(早稲田大2年)1:02:53
7位 津田将希(順天堂大4年) 1:02:54
8位 倉田健太(中央大4年)1:02:55

関東インカレの男子ハーフマラソンは5月20日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、本会場とは離れたよみうりランド敷地内で無観客開催された。アップダウンの激しい非公認コース。正月の箱根駅伝2区で2位と好走したライモイ・ヴィンセント(国士舘大4年)が1時間1分13秒で制した。日本選手のトップは、初出場だった順天堂大学の四釜(しかま)峻佑(3年、山形中央)が1時間2分26秒で4位に入った。

高低差あるレースで日本選手トップ

四釜は関東インカレに初めて出ただけでなく、全日本大学駅伝、箱根駅伝のメンバーに選ばれたこともない。それでも、順大の長門俊介駅伝監督は「うちの中ではダークホースではなかった。調子は1番良かった」と実績のなかった3年生の躍進を予感していた。

ハーフマラソンはアップダウンもある周回コースで行われた

レースはスタート直後から外国人選手3人が抜け出し、日本人トップ争いは第2集団に。先頭のやや後ろ、集団の端に位置取った四釜は体力を温存し、そのときを待っていた。残り3km地点。周りの選手が疲れているとみて、得意の坂道に向かい一気にスパートをかけた。他大学の箱根経験者らを15秒以上引き離す快走を見せ、4位でフィニッシュ。ゴール直後に見せたガッツポーズの理由を「かっこつけたいと思って」と初々しく話した。

箱根予選会でまさかのチーム最下位

昨年10月の箱根駅伝予選会。順大は1位で本戦出場を決めたのに、四釜だけはどん底にいた。予選会で走る12人のメンバーに入ったが、個人結果はチームで最下位。陸上自衛隊立川駐屯地の周回コース(21.0975km)で63分以上かかったのは、チームで四釜のみだった。「自分は悔しい気持ちの方が強かった。『11人は63分切りだったな』ってしばらくいじられました」

箱根駅伝予選会トップ通過の順天堂大学

そんな四釜の性格を、長門監督はこう分析している。「まじめで、結果に一喜一憂するところがあった。同級生らの結果が良いと、落ち込んでしまう。何か自分の得意な部分が出てくれば変わる気はしていた」

今季は結果を出し自信もつかみかけていた

年明けの箱根駅伝はメンバーにも落選し、仲間が活躍する姿を寮のテレビで見た。同じチームの選手が走っているのに、どこか人ごとのことのように感じる自分にも腹が立った。「メンバーから外れて、悔しいと思えるぐらい練習しないとだめ。何かを変えないといけない」

箱根駅伝は、少年時代からあこがれていた舞台だった。特に、山登りの5区。小学生のころ「山の神」と言われた柏原竜二(当時東洋大)の姿を見て、「いつかあそこで走る」と夢見ていた。

「5区を走る目標はあきらめられない」。四釜は、「山」を意識した練習を増やした。ジョギングのメニューを与えられた日は、大学周りの高低差の激しいコースで1時間走った。坂を速く上るには上半身の筋力が必要だと、これまであまりしてこなかったベンチプレスで筋力強化にも取り組んだ。

地元の山形県縦断駅伝で好走

迎えた今季。手応えを感じ始めたのは、故郷での凱旋レースだった。4月27~29日にあった「第65回山形県縦断駅伝競走大会」。3日間で29区間、計305.1kmを走る歴史あるこの大会に、山形中央高校出身の四釜も地元チームの一員で出場した。中1日で1区(17.1km)と22区(13km)を走り、結果は両区間とも大幅に区間記録を更新。四釜は「特に1区で、1km3分を切るペースで17km走りきることができた。ハーフマラソンに近い環境で思い描いたレースができたことが自信になった」

5月8日の日本体育大学長距離競技会では1万mでも28分55秒56をマークし、初の28分台に突入した。トラックでタイムを出した自信に加え、日頃からの登り練習。関東インカレでよみうりランドへのコース変更があっても、四釜はひるまなかった。

得意の上り坂でスパートし好結果につなげた

順大チームメートの躍進も四釜の原動力だ。同じ長距離ブロックの三浦龍司(2年、洛南)が、5月9日のREADY STEADY TOKYOで3000m障害の日本新記録を樹立。今や、日本を代表する選手の一人となった。昨年の箱根駅伝予選会でもチームトップで走った三浦の活躍に「自分は一つ年上なので負けられない。今はライバルにもなれてないけど、これから差を縮めないと」と奮い立っている。

めざすは駅伝シーズンでのメンバー入り。箱根では、「山の神」を輩出してきた5区と、同じく上り坂がある8区を狙う。「去年の駅伝シーズンは苦い経験だった。自分はまだエントリーすらされたことがない。最終学年になる前に必ずメンバーとして走り、チームの目標をなしとげたい」。箱根駅伝で通算11度の優勝を誇る順大に、また頼もしい選手が現れた。

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