陸上・駅伝

男女混合駅伝優勝の順天堂大学 チームの絆見せる快走、この勝利をきっかけに飛躍を

「J」ポーズを作り写真におさまる左から清水、甲本、伊豫田、二川、野口、白石(すべて撮影・藤井みさ)

第1回全国招待大学対校男女混合駅伝 

3月21日@大阪・長居公園内特設コース
優勝 順天堂大学  1時間1分53秒
1区(3km) 清水颯大  8分29秒(区間5位)
2区(2km) 甲本まお  6分34秒(区間6位)
3区(5km) 伊豫田達弥 14分04秒(区間賞)
4区(3km) 二川彩香  9分44秒(区間賞)
5区(2km) 野口雄大  5分27秒(区間賞)
6区(5km) 白石由佳子 17分35秒(区間9位)

3月21日に記念すべき第1回が開催された全国招待大学対校男女混合駅伝(以下、男女混合駅伝)。緊急事態宣言の影響などもあり、当初の2月21日から1カ月延期しての開催となったが、当日は20チームが参加し、初めての大会で力走を見せた。レースは3区でトップに立った順天堂大学がそのままリードを守り、第1回優勝校となった。

普段から男女仲がいいチーム

順天堂大学は陸上競技部が男子部、女子部と分かれているわけではなく、普段からグランド整備や、朝の集合、部のイベントなども男女合わせて行っている。男子は長門俊介監督、女子は鯉川なつえ監督がそれぞれ練習を指導し、走力が異なるため一緒に練習することはほぼないが、部員同士は良く話し、仲がいい。お互い、誰が調子いい、誰が頑張っているなども見えるため、刺激しあい、切磋琢磨している環境だ。

アンカーの白石は志願の出場だったという

この大会に向けてともに練習したということは特になく、前日にホテルに集まってミーティングをしたぐらい。だが長門監督と鯉川監督は意思疎通を図りながらここまでこれていたので、特に問題はなかったという。メンバーは清水颯大(洛南)、野口雄大(市立柏)、白石由佳子(長崎南)と4年生が3人。そこに甲本まお(3年、八王子)、伊豫田達弥(2年、舟入)、二川彩香(2年、水城)という布陣。清水、白石はともに前主将。4年生の思い出づくりという面もありつつ、しっかりと優勝を狙うつもりで臨んだ。

アクシデントもありつつ挽回

天気予報では春の嵐と言われ、雨が降ったりやんだり、風も時折強く吹き付ける悪条件の中でレースはスタート。1区は3km。清水は始めから先頭に飛び出し、積極的にレースを引っ張った。城西大の熊谷奨(2年、大分東明)、立命館大の前川紘導(ひろと、4年、網野)とともに先頭集団を形成するが、清水と熊谷が2kmすぎでコースを間違えるアクシデント。ここで清水は「少し心が折れてしまった」と振り返る。だがラストスパートで追い上げ、先頭と6秒差の5位で2区甲本に襷(たすき)リレー。長門監督は「後ろの位置で来て、甲本は戸惑ったんじゃないかな」と苦笑する。

1区は激しいラストスパート勝負になった

2区は2kmと短く、日本体育大の宮内志佳(1年、 茨城キリスト)が飛び出してトップに立ち、区間賞を獲得する快走。甲本はトップと23秒差の4位で、3区5kmを担当する伊豫田へ。長門監督は伊豫田について「他の4年生も(メンバーの)候補にしていましたが、ここまで来たら優勝を狙うつもりで投入しようかなと。キーになるポイントだと考えていました」と期待をかけていた。

その期待通り、大きなストライドでぐんぐんと追い上げ、2.2km付近で先頭に立つ。本人の「だいぶリズムも違ったので、後ろにつかずに走ったほうがいい流れになると思った」との言葉通り、そのまま後続を引き離し、2位と21秒の差をつける区間賞、トップで襷渡し。4区二川、5区野口も区間賞を獲得する快走でトップを守り、6区白石が笑顔で優勝のゴールテープを切った。

前主将清水「終わりよければすべて良し」

これが学生ラストランとなった清水は、箱根駅伝では6区区間2位の激走。箱根駅伝前はとにかく根を詰めて練習をしていたため、レースが終わってからしばらく休んでいたが、ここに向けて合わせてきた。トップを走っていたが、集中するあまり先導車が入っていかない曲がり角でそのまま直進してしまった。「最後ぐらいいい感じで終わりたかったんですけど、自分らしくていいかな」と笑いながらも「チームが優勝したので、これを実業団に行っても生かして順大OBとしていい成績を残せるようにしたいです」と次に向けて目標を語る。

中学校から陸上をしている清水だが、女子と襷をつないだのはこれが初めてだ。「男女が協力しあって一つのことに向かうこともなかなかないので、今後もっとこの大会の注目度が高まってくれたら第1回優勝校として誇らしいと思います」。清水自身もこの大会を楽しめたという。「4年間苦しかったけど、箱根駅伝も笑って終われたので、『終わりよければすべて良し』という形になりました。いい学生生活だったなと思います」

ゴールした白石を、甲本と二川が笑顔で迎え入れた

チームの主力に成長した伊豫田

伊豫田は前週にも学生ハーフマラソンを走り、1時間3分31秒で6位入賞。「疲労もあったんですけど、それ以上に駅伝ということで、普段一人で走るよりもいい力が出せたと思います。楽しかったです」と充実した表情。前週は晴れていたが暴風、今回は雨風ともに吹きつけるなど、2週連続悪条件の中でのレースとなったが、連続して結果を出せたことにより「悪天候の中でも走れる力がついてきたかなという感じがあります」と手応えも口にした。

箱根駅伝では3区を走り5位。「(箱根駅伝が)一番のピークだったので、そこをしっかりおさえて、1月はゆっくり走ってそのあと学生ハーフに向けて取り組んでました。長い距離の練習をしていたので、今回の5kmはいい意味で短く感じました。いい走りができたんじゃないかな。4年生の最後のレースだったので、しっかりといい順位で笑っていただけてよかったです」と笑顔を見せた。

伊豫田は長門監督の期待通り、キーマンとなる快走を見せた

新シーズン、男子は箱根駅伝総合優勝を目標にしている。「その一員として役割を果たせるように、区間賞を取っていきたいです。近いところだと関カレのトラック入賞を目指して、スピードのキレを戻してやっていきたいです」。チーム内では三浦龍司(1年、洛南)、野村優作(2年、田辺工)の力が抜けているが、ここに来て力をつけてきた伊豫田がさらに総合力を押し上げることは間違いない。

順大は1980年代に箱根駅伝で無類の強さを誇ったが、2007年の第83回を最後に総合優勝から遠ざかっている。女子はまだ全国優勝の経験はない。今回、現役学生は誰も経験していない「優勝」の結果に、長門監督は「優勝という味をしめて、女子も男子も学生駅伝で優勝できるように。そういうきっかけになればいかなと思います」と話した。今後の順大の快進撃に期待がかかる。

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