陸上・駅伝

特集:第100回関東学生陸上競技対校選手権

立教大・道下美槻、目指すはパリ五輪! 夢への挑戦へ走り続ける

関東インカレ女子1部800m決勝で優勝した道下(撮影・藤井みさ)

第100回関東学生陸上競技対校選手権

5月20~23日@相模原ギオンスタジアム

道下美槻(立教大2年)
女子1部800m決勝 優勝 2:07.28(PB)
女子1部1500m決勝 4位 4:27.61

道下美槻(みづき、2年、順天)の快進撃はいまだとどまることを知らない。ルーキーだった昨年は9月の日本インカレ800mでは6位、1500mでは8位でそれぞれ入賞。初出場となった10月の日本選手権1500mでは、自己ベストが出場選手のなかで1番遅かったにもかかわらず、決勝進出を果たし9位となった。そして11月の関東インカレ女子1500mでも2位に入った。2年生シーズンの初戦となった5月8日の日体大記録会では4分20秒58の自己ベストを更新し、日本選手権の参加申込記録を突破。そして5月20日からの関東インカレでは1500m4位、800mでは優勝を果たした。

日本最高峰の景色

初めての日本選手権はうれしさもあり、悔しさも残る結果だった。予選では日本記録保持者の田中希実(豊田自動織機TC)がスタートから飛び出して前に出たが、焦らなかった。第2集団の3、4番手を維持。得意のラストスパートで5着に入り、道下自身も驚きの決勝進出を決めた。

迎えた決勝。田中希実、後藤夢(豊田自動織機TC)、2019年優勝者の卜部蘭(積水化学)と肩を並べても「緊張はしないでリラックスして挑めた」。号砲がなると、高松智美ムセンビ(名城大4年、大阪薫英女学院)を先頭に、序盤はスローペースに。しかし、残り約600m地点で田中が一気にスパートをかけた。第2集団の後方にいた道下は、急に上がったレースのスピードに対応できなかった。7位から9位に順位を落とし、ラスト300mでスパートをかけて8位になるも、ゴールまであと50mのところで福田有以(豊田自動織機)に抜かれ、9位。入賞まであと0.38秒、約1mだった。

試合後、「今年出ることができただけでうれしかった。決勝にも残ることができると思っていなかった。日本記録保持者の田中希実さんと走ることができて、すごく楽しく走れました。でも9位だったので、入賞まであと一歩というのはすごく悔しかったです」と憧れの舞台に立てたことを喜びつつも悔しさをにじませた。

自分の課題と向き合ったオフシーズン

9月から11月の日本インカレ、関東女子駅伝、日本選手権、関東インカレ、U20全国陸上などの連戦は道下の体にダメージを与えていた。「長距離の職業病」である腸頸靭帯炎になり、今年1月中旬ごろまで練習に参加できなかった。

昨年から今年にかけて、高い調子を維持している道下。今後にも期待だ

本格的な練習を再開したのは2月。オフシーズンの練習に少し遅れを取る形になったが、焦らず課題の「持久力」を鍛えた。今までは得意のスピード練習を多めに取り組んでいたが、方向を転換。インターバル走などの中強度のメニューを意識的に取り入れた。

4月18日の東京六大学戦では女子の長距離種目がなかったため、補助員をしていた彼女に最近の調子をたずねた。「まだ日本選手権の標準を超えられていないんです」。 昨年より4秒ほど標準記録が引きあがり、昨年9位の実力者でも、4月時点では日本選手権に出ることができない状況だった。タイムリミットの5月末まで残り約1カ月半。しかし、彼女の表情に不安の色は全くなく、むしろ自信に満ちていた。

自分の持ち味を「スピードだと思っているのですが、今は持久力の練習に特化していたので持久力のほうが自信あります」と言うことができるくらい、弱点を強化してきた。その経験が、道下の自信につながっていた。そして5月8日の日体大記録会1500mで4分20秒58をマークし、申込資格記録(4分22秒80)を切り日本選手権の出場資格を得た。

収穫を得た関東インカレの負けと勝ち

関東インカレでは1500mと800mに出場。「対抗戦なので記録というよりも勝ちのレースを目指します」と挑んだ。

1日目は本職の1500m予選。「決勝の前日刺激」とラスト300mでスパートをかけ、危なげなく決勝へ。決勝は序盤がスローペースになることを予測し、ラスト600mでスピードをあげて、他の選手を疲れさせる作戦だった。翌日のレースは予想通り、1周目の400mが72秒、2周目が75秒とスローペースに。残り700m地点となったところで集団の真ん中の外側から少しずつ順位を上げ、先頭に立つ。

そしてレースプラン通り、残り600mでスパートをかけた。しかし、ホームストレートの向かい風で体力を使ってしまい、もう1度スパートをかけることはできず、他の選手に置いていかれてしまった。結果は4位。優勝を狙っていただけに、悔しさが残った。

1500mでは4位となり、悔しそうな表情を見せる(撮影・藤井みさ)

一方で、培った持久力を信じ、「残り600mで前に出たことはいい収穫だった」とプラスにも捉えた。3、4日目に「チャレンジャーの気持ち」で臨んだ800mは「まさか」の優勝とベスト更新。ゴール後思わず笑顔がはじけた。関東インカレでの敗北と勝利は日本選手権の勝利の糧となるだろう。

もっと上の舞台、オリンピックへ

「去年日本選手権に出てもっと上に行きたいと思うようになって、どうせやるなら次のオリンピックに出たいと思いました。その夢をかなえたいので頑張っています」。なぜ、日本選手権に向けて頑張ることができるのか。正直な疑問をぶつけると道下は、最初は恥ずかしそうに、だがはっきりとした声色で夢を語ってくれた。

「オリンピックに出る年には、日本記録に近い記録で走りたいという風には思っていて、今年か来年には4分10秒台前半。今年も来年も日本選手権のメダルを狙っていきたいです」

日本選手権、さらにその先の目標について語ってくれた

昨年初めて見た日本最高峰の景色は、道下の向上心に火をつけた。「日本選手権に出ることができただけでうれしかった」とはにかむ彼女はもういない。世界を目指すことを決断した19歳は今後も活躍を見せてくれるだろう。

パリオリンピック出場を決めた瞬間—。日本中が、「道下美槻」の名を叫ぶことになる。

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