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特集:2021年 大学球界のドラフト候補たち

潜在能力抜群のドラフト上位候補 関西国際大・翁田大勢は猛アピールで逆境を跳ね返す

上位指名が期待される翁田。役割については先発、中継ぎ、抑え「全部やってみたい」(写真提供・関西国際大野球部)

150km/hを超えるストレートと高いポテンシャルが評価され、ドラフト上位候補との呼び声高かった関西国際大学の翁田大勢(4年・西脇工業)だが、この1年は強い向かい風が吹いていた。

ぶっつけ本番の秋に猛アピール

春は部員に新型コロナウイルスの陽性者が出たために出場辞退した試合があったことと、右肘(ひじ)のコンディション不良もあり、わずか1登板に終わる。大学最後のリーグ戦となるこの秋も、新型コロナウイルスの影響により8月24日から9月7日まで部活動は制限され、第1節は出場辞退した。しかもこの期間は全体練習ができなかっただけでなく、グラウンドを含め学校施設が使えなかった。全体練習が再開されたのは9月8日。3日後の11日には優勝候補、天理大学との大事な試合が控えていた。

ぶっつけ本番に近い形での登板を余儀なくされたが、ここから田の猛アピールが始まった。七回にリリーフとしてマウンドに立つと、1回を1安打無失点。球速は自己最速を更新する153km/hを計測した。

ドラフトへ向けての心境は「当日まで不安とワクワクとどっちもあります」(写真提供・関西国際大野球部)

「春のリーグ戦で同じような状況で登板して、(春は)試合を潰してしまった感じになったんですが、今の自分なら大丈夫という気持ちがあったんで強気で行きました。トレーニングやフォームの見直しやってきて、トレーナーの方にもまだまだ球速も球のキレも伸びると言われていたので、そこで153km/h出てしっかり抑えることでチームが前を向けるピッチングになったんじゃないかなと思います」

15日の天理大学との2回戦では2年秋以来となる先発マウンドへ。結果は七回途中を1失点、チームを勝利へ導いた。田がこの秋にかける思いは強い。「高校の時に指名漏れをしてからプロで活躍したいという気持ちがさらに高まって、大学に入ってきて、今プロ志望届を提出して待っている状態で、リーグ戦もスカウトの方々が入れていない状況なので、結果や数字でアピールしていかないといけないなという気持ちです」

「数字で結果を残す」エースの覚悟

関西国際大学が所属する阪神大学野球連盟は入場制限が厳しく、スカウトが球場で視察することができない。そのため田には客観的な数字としての結果が求められている。自身の立場を理解しているエースは次節、大阪産業大学との試合で実力の一端を示した。

1回戦は1点リードの九回のマウンドに上がり、わずか14球で圧巻の三者連続三振。短いイニングに力を集中させたストレートは平均球速で150km/hを優に超える。「ああいう緊迫した試合を抑えることを目指してやってきたので、しっかり3人で抑えられて良かった」。連投となった翌日はタイブレークの末に敗れはしたものの、188球を1人で投げ抜く。この日、チームのスピードガンで自己最速をさらに更新する155km/hを計測した。

翁田の手(右)は普通の人よりも関節1つ分大きい(左は主務の吉村優介、撮影・小中翔太)

そして上を目指しているからこそ、反省することも忘れない。延長十回、無死一、二塁から始まるタイブレークは送りバントで1死二、三塁となり、申告敬遠で満塁策を選択。相手の4番打者を2ストライクに追い込むが遊び球なしで三振を狙ったフォークが浮き、決勝打を浴びた。球数が170球に迫る中での失投を責めることはできないが、「ああいうところで変化球でも空振りが取れる制球力だったり、質を上げていかないとまだまだ通用しないんだなと課題が見つかりました。やっぱり自分が投げて勝ち切れなかったところも課題が見つかりました」。

大学で飛躍、恩返しのピッチングを

田の投手歴は小学校6年時からと一見長いようだが、中学校では内野手を務め、マウンドに上がるようになったのは3年になってから。高校でも入学直後から野手として活躍し、本格的に投手となったのは最上級生となった2年秋から。高校引退後は制球力改善と右肘への負担を考慮しサイドスローに挑戦していた。

大学入学後に投手陣を指導する野村昌裕コーチからアドバイスを受けて試行錯誤を繰り返し、2年春終わりに現在のスリークォーターに落ち着いた。大学でウエイトトレーニングに力を入れて体がしっかりしたことで、最大出力が上がり球速アップ、188球を投げた後に残る疲労度も軽減された。

インターバル走で汗を流す(撮影・小中翔太)

打者としても飛距離やスイングスピードは野手顔負け。大きなロマンを秘めている。第3節終了時点で18回1/3を投げて24奪三振、防御率1.47。抜群の安定感でチームを引っ張るエースは残りのリーグ戦も「今までけがだったり他のピッチャーに迷惑をかけました。今投げられる状態になったのもトレーナーさんとの出会いがあったので、ここまで支えてくださった人に勝つことが恩返しだと思っています。チームが勝つ投球をすることでアピールにもつながると思うので、チームが勝つためにしっかり投げられるようにします」と意気込んでいる。

上位指名の可能性は充分

逆風の強かったドラフトイヤーだったが、最後の最後に追い風が吹きそうだ。緊急事態宣言が今月末で解除となり入場制限が緩和されれば、スカウトの直接視察が可能となる。10月4日、ドラフト1週間前という直前ではあるが、そこでの内容次第では2位以上で名前が呼ばれても不思議ではない。

目指す選手像は関西国際大学OBの益田直也(ロッテ)。「緊迫した試合で投げられる選手になりたい」(写真提供・関西国際大野球部)

鈴木英之監督も「まだ底を見せてない部分があるんでそこが魅力。本来なら修羅場をくぐらすのは3年秋とかにやらせたかったんですけど、コロナとか故障とかで間際になってフル回転してくれてるんで、そういった意味ではこの経験が上に行ってから生きるんじゃないですかね。巡り合わせと各球団の補強ポイントもありますけど、うまくいけば24人ぐらいには入ってもいいぐらいの力はあると思いますね」と期待を寄せる。最大の魅力はボールの強さ。1イニングなら150km/h台中盤を連発出来るポテンシャルの持ち主は、即戦力であると同時に伸び代も大きい。

田はグラブに刻む文字を人と違うものにしたいとのこだわりがある。関西国際大学は略称で「かんこく」と呼ばれることが多いため、韓国語で「大丈夫」を意味する「ケンチャナヨ」を選んだ。思うように投げられなかった肘の状態も、高校時代に悔しい指名漏れとなった実力ももう心配は要らない。4年間で培った確かな実力でどんな逆境も跳ね返す。

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