野球

大事な4冊のノート、何度も見返した リーグVのヤクルト高津監督

セ・リーグ優勝を決め、選手たちの真ん中でバンザイするヤクルトの高津臣吾監督(撮影・西畑志朗)

 就任2年目のヤクルト・高津臣吾監督(52)が、2年連続最下位だったチームを頂点に導いた。胴上げ前にひとこと、選手に言葉をかけた。「本当におめでとうと言いました。選手のがんばりが全てなので」

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 際立つのは、こうした選手へのこまやかな気遣いだ。

 4番の村上宗隆が不調だった7月、居合わせたトイレで「期待しているけど一人で背負いこむことはないよ」。2カ月後、21歳は史上最年少で通算100本塁打に到達した。ポジションを外した選手にも「やることをやれば成績は後からついてくる」と励ました。

 広島市出身。広島工高3年時に春夏の甲子園に出場したが、2番手投手だったから登板はなかった。

 亜大でも、エースの陰に隠れる存在だった。そんな経験も、選手への接し方に生きている。

 現役時代はヤクルトの抑え投手としてリーグ優勝5度、日本一に4度輝いた。「遅いシンカー」をひっさげ、35歳で大リーグに挑戦。日米通算313セーブを記録した。

 現役時代から、ずっと大切にしている4冊のノートがある。故・野村克也監督の教えを書き留めたものだ。「技術以外にも人として組織として大事なことが書いてある」

 43歳まで韓国、台湾、日本の独立リーグと渡り歩いた間も、支えだった。ぼろぼろになったノートを今季、改めて見返した。

 文字を書くと、心が落ち着く。

 優勝目前にチームは重圧からか足踏みした。「腹くくっていったれぃ!!」と筆でつづった紙をロッカー室に貼って鼓舞。再び前進した選手の手で、5度、宙を舞った。

(藤田絢子)

=朝日新聞デジタル2021年10月26日掲載

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