野球

亜細亜大学の後藤貴大主将、誰よりも大きな声でチームを引っ張る

亜細亜大学の後藤貴大新主将。公式戦未出場だが信頼は厚い(写真は全て亜大野球部提供)

東都大学野球春季リーグ戦が3月29日に神宮球場で開幕します。昨秋は下部への降格をなくしたため、今季、1部は7校による2回戦総当たりの勝率で競います。春のリーグ戦に臨む7校の主将に意気込みを聞きました。昨秋8季ぶり26度目の優勝を成し遂げた亜細亜大学の後藤貴大主将(4年、神戸国際大附)から。「全力疾走」をチームスローガンに掲げ、連覇に挑みます。

公式戦出場経験なしのキャプテン

「自分のアピールポイントは声だと思っています。誰よりも声を出してチームを引っ張っていきたい。声だけは負けません」
後藤は、3年秋までの5シーズンでまだ公式戦出場経験がない。数多(あまた)の名選手を輩出してきた東都屈指の名門・亜大野球部では、下級生のときから公式戦に出場し、3年秋の段階でチームの中心になっている選手が新チームの主将に就任するケースが多い。公式戦出場経験のない選手が主将に就任するのは異例のことだ。それでも、主将を任せるにふさわしい人間力を後藤が備えているということなのだろう。

後藤は神戸国際大附高時代、セカンドのレギュラーとして3年春夏の甲子園でも活躍した。しかし、大学では選手層の厚いチームの中で試合出場機会を得ることができなかった。

神戸国際大附高校時代の後藤(撮影・朝日新聞社)

「確かに自分はまだ公式戦に出たことがありませんが、そこに不安とかは一切ありません。バントでも守備でも走塁でも、どこで出してもらってもそこで自分に与えられた役割を果たすつもりですし、もし、たとえ試合に出られなかったとしても、声でチームを引っ張ります」と後藤は言い切る。

打診は昨夏、何ができるかを考え続けた

生田勉監督から次期キャプテンとして考えていると聞かされたのは昨夏のことだった。秋のリーグ戦中、後藤は先輩たちが引退したあと、どうやってチームを引っ張っていくかを考え続けた。1学年先輩の主将・矢野雅哉(広島)はプレーで引っ張るタイプのキャプテンだった。尊敬する先輩とはタイプの違うキャプテンになるが、自分は声をガンガンに出してチームを引っ張っていこう。

広島入りした矢野前主将(右)とは違う主将像を描く

「矢野さんには引退されてからもいろいろ相談に乗ってもらいました。高校の先輩である平内さん(龍太=巨人)も『消極的になるな。お前は声を出して元気を出してガツガツいったらいいよ』と言ってくれました」

日の出町から一体感

2月、リーグ戦連覇と大学日本一を目指すチームは、例年とは違った形でスタートを切った。前年までは1軍は鹿児島キャンプ、2軍は日の出町のグラウンドと、分かれて練習をしていた。今年は緊急事態宣言下のため鹿児島キャンプは中止となり、全員が日の出町の合宿所で練習に打ち込んだ。

「去年までは鹿児島組と日の出組に分かれていたのですが、今年は日の出のグラウンドで一緒のメニューに全員で取り組むことができました。チーム全員がレベルアップし、チーム力は確実に上がったと思います」と後藤はこの逆境をプラスに考えている。

声を出し全力でチームを引っ張る

平内、内間拓馬(楽天)と中心投手だった2人が卒業したが、亜大の投手陣は今年も強力だ。1年生の秋から公式戦のマウンドに立つ青山美夏人(3年、横浜隼人)、2年秋に10試合登板と獅子奮迅の働きを見せた松本健吾(4年、東海大菅生)が投手陣の軸として期待される。昨秋までは登板機会の少なかった最速152キロ右腕・加藤竜馬(4年、大阪偕星学園)もプロ野球スカウト注目の逸材だ。

打線では長打力のある木倉朋輝(4年、星稜)、右田稜真(2年、二松学舎大付)、天井一輝(あまい・いっぺい=2年、広島商)らが中軸を打つ。一昨年、昨年とセカンドを守ってきた野球センス抜群の内野手・田中幹也(3年、東海大菅生)は、今年はショートを守ることになる。

「全力疾走が亜細亜大のチームスローガン。何事にも全力でやるところを見てほしいです」と後藤はチームの見どころをアピールしてくれた。全力疾走の亜細亜大が、今春も全力で頂点を奪い取る。

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