中央大ルーキー・阿部陽樹 「次のチーム」を担う戦力が全日本大学駅伝で駅伝デビュー
秩父宮賜杯 第53回全日本大学駅伝対校選手権大会
11月7日@名古屋市熱田神宮西門前〜三重・伊勢市伊勢神宮内宮宇治橋前(8区間106,8キロ)
8位 中央大学 5時間17分06秒
阿部陽樹 2区区間12位 32分43秒
中大にとって9年ぶりの本戦出場をかけ挑んだ全日本関東地区選考会。2組に出走した阿部陽樹(1年、西京)は見事2位でフィニッシュ。伊勢路行きを決定づける力強い走りでチームに貢献した。迎えた本戦では2区に出走、3大駅伝初出場ながら終始落ち着いた走りを見せた。阿部にとってデビュー戦となった伊勢路での奮闘を追っていく。
エース吉居から託された襷
1区の吉居大和(2年、仙台育英)が先頭で襷(たすき)を持ってくることが想定されたため、焦らず自分の力を発揮するよう監督から指示を受けた阿部。その想定通り、吉居は27分05分と区間新記録を更新する快走を見せ、駒澤大と同タイムでの2位で襷をつないだ。「後ろから強い選手が追いついてくることは分かっていたので、少しでも耐えて、前の人が見える位置で襷を渡すことを心がけた」とスタート直後を振り返る阿部。第一中継所地点で先頭とシード権内の8位との差はわずか16秒で、その後1km地点で阿部を含む先頭の4人は、東京五輪3000mSCで7位入賞した順大の三浦龍司(2年、洛南)もいる2位集団とひとつになり、先頭集団を11チームで結成するという前代未聞の展開に。しかし、ここで追いつかれることは想定内だった阿部は、まずは集団から離れないように、冷静にレースを進めた。
他大学のエースと競り合い「タフな練習が必要」
しかし8kmを過ぎたところで、早稲田大の井川龍人(3年、九州学院)が先頭に立ちペースを上げると、それについていくことができず先頭集団から離脱。2位集団で懸命に前を追ったが、順位を7つ落として9位で襷を渡した。他大学のエース級の選手たちとのレースを振り返って「細かいペースのアップダウンが大の苦手だったので、よりタフな練習が必要だと思った」と大舞台で戦うことの厳しさを語った。
また、藤原監督が「阿部、中野(翔太、2年、世羅)、助川(拓海、3年、水城)、がもう一段強くなるためには、この区間に出てくるレベルの選手と競り合うことが当たり前になっていかなければならない。そのためには多少チームとしてビハインドを背負ってでもチャレンジさせようと考えた」と述べるように、チームとして阿部をはじめ新戦力となる選手の成長は不可欠であるとともに、阿部にとって今後に向けた貴重な経験なったことは間違いない。
掴んだシード、そして箱根へ
その後中大は、5区の三浦拓朗(4年、西脇工)が区間3位の快走で8位に順位を上げたあと、一旦は順位を落としたものの、再び7区の中澤雄大(3年、学法石川)がシード権内に順位を押し上げ、そのまま最終8区でも譲ることなく、8位でゴール。9年ぶりに返り咲いた全日本の舞台で見事シード権を獲得した。阿部個人としては課題も多く見つかった大会となったが、チームとしては新たな歴史を刻む輝かしい日となった。
大会前、「駅伝は何があるかわからないし、培ってきた我慢強い走りを繋いでいけばチャンスは出てくる」と藤原監督がメンバーに伝えたように、箱根予選会からわずか2週間にもかかわらず、選手たちは疲れを感じさせないタフな走りで好結果を残した。そして、いよいよ2カ月後に迫った箱根駅伝。今大会の自信を胸に、中大は悲願のシード権獲得に向けて古豪復活の狼煙をあげた。