野球

引退試合で交わった「最初で最後」 名古屋大の金児誠也と同朋大の馬渕歩空

最後の公式戦で投げ合った名古屋大の金児誠也(左)と同朋大の馬渕歩空(撮影・全て上山浩也)

全国各地の大学野球は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を様々な形で受けながら秋季リーグを終えた。愛知県の緊急事態宣が解除された直後の10月、愛知大学野球2部の名古屋大学と同朋大学の試合では、二つの「最初で最後」が交錯した。

最後の公式戦で初勝利

両校の4年生にとっては引退試合だった。名大の先発は、今季初登板の金児(かねこ)誠也(4年、四日市)だった。直球は最速で130kmほど。それでも、丁寧にコースを突き、被安打7の3失点と好投。チームは11-3で七回コールド勝ちし、念願だった大学での初勝利を手にした。

金児は約1年半前に名古屋市立大学から名大3年に編入学した。「旧帝国大学が集う『七大戦(全国七大学総合体育大会)』に憧れた。旧帝大に進んだ高校の先輩から話を聞き、自分も出たいと思った」。編入試験に専念するため、名市大では野球部に入らなかったという。

この一戦の前日、東京都内で就職先の内定式に出席した。名古屋に戻った夜、連絡網で先発を知った。自粛期間中は一人で走ったり、公園で仲間とキャッチボールをしたりしたという右腕。2年間のブランクもはねのけ、大学最後の公式戦でつかんだ初白星に「本当に出来過ぎです。みんなが打ってくれ、勝たせてくれた」と喜んだ。

金児は名古屋市立大から名古屋大へ編入し、マウンドを目指した

名大の後輩に最速149kmの右腕、本田健悟(3年、明和)がいて、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)してきた。この日はブルペンで待機していた本田は「練習試合を含めて『完投』は初めて。最後の試合ですごいですね」とたたえた。

金児は後輩たちに向け、「一生懸命に野球ができる場があるなら、その時間を大切に過ごし、悔いのない野球人生を送って欲しい」とエールを送った。

唯一の公式戦で監督と選手に幕

一方の同朋大は、この一戦が今秋、唯一の公式戦となった。先発は、馬渕隆雄監督の息子、歩空(ほだか)(4年、帝京大可児)。最速148kmの右腕は2回を投げて1失点。高校2年のとき、プロ野球西武の元選手だった父のもとで野球をしようと決めた。

「プレーに悩んでいたとき、背中を押してくれた。『自分のやってきたことに自信を持て』って」。同じユニホームで戦う最後のシーズン。登板後、ベンチの中で2人はグータッチをかわした。

21年秋、同朋大唯一の公式戦は馬渕親子に忘れられない一戦に

馬渕監督は「今シーズン最初の試合が最終戦になった。もっと練習をして、満足な状態でやらせてあげたかったけど、1試合でもプレーができたから良かったと思う」。試合後、ユニホーム姿で写真に納まる部員たちを見ながら目を細めた。

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