大学野球

甲子園をわかせた上野翔太郎 大学ラスト登板でベストピッチ、駒大が1部残留

駒大の上野は4年間の最後の最後に、最高のピッチング(撮影・佐伯航平)

東都大学野球入れ替え戦

11月9、10日@神宮球場
1回戦 駒澤大(1部6位)3-1 拓殖大(2部1位)
2回戦 駒大 2-0 拓大

東都大学野球入れ替え戦は、1部6位の駒澤大が2連勝で2部1位の拓殖大を下し、1部残留を決めた。過去27度の1部優勝、11度の大学日本一(全日本大学選手権6度、明治神宮大会5度)を誇る名門は今年、春秋連続で6位に沈んだが、1部に踏みとどまった。秋の入れ替え戦2回戦では、上野翔太郎(4年、中京大中京)が被安打1の完封勝ちでチームを救った。

「完封する」と言い続け、被安打1で有言実行

「今日は、ほぼイメージに近いボールがいきました。やっと4年生らしい仕事ができた。本当に、これを大学最後の試合にしたいと思って投げたんで。必死で投げて、結果的に完封できたという感じです。途中、ノーヒットノーランもあるかなぁ、みたいなこともちょっと思ったんですけど」。上野は試合後、笑顔で話した。

前日の1回戦は、福山優希(1年、八戸学院光星)が先発。2回に先制されたが、3回に若林楽人(3年、駒大苫小牧)のライト前タイムリーヒットなどで逆転。4回からマウンドに上がった竹本祐瑛(ひろあき、3年、八戸西)が残り6イニングを無失点で切り抜け、先勝した。

そして迎えた2回戦、駒大の大倉孝一監督は秋のリーグ戦でリリーフを務めてきた上野を先発マウンドに送った。上野は2年生の春、2部で先発したことはあったが、1部での先発はなかった。先発を言い渡されたのは、入れ替え戦初戦の前日だったという。
「それからピッチャー陣には『2回戦は俺が完封する』と言い続けてきました。入れ替え戦は気持ちが引いた方が負けると思ったので、そのぐらいの気の持ちようでいこうと思って」

たった1度しか二塁を踏ませなかった

神宮のマウンドで有言実行だ。1回、1死から2番田崎誠也(2年、常磐大高)を歩かせ、送りバントで2死二塁のピンチを招いたが、4番北川竜之介(3年、中京学院大中京)を三振にとった。得点圏に走者を進めたのはこの1度だけ。9イニングで110球を投げ、8奪三振。ヒットは5回に7番渡邊晶介(2年、加藤学園)に打たれた1本のみだった。

上野は中京大中京高3年のとき、夏の甲子園に出場してベスト16へ進んだ。大会後の侍ジャパンU-18ワールドカップで日本代表のエース格として活躍。鳴り物入りで駒澤大に進んだが、大学入学前に右肩を痛めていたこともあり、本来の姿を取り戻せずにいた。

この秋、開幕週の國學院大2回戦にリリーフで登板し、4回無失点の好投でついにリーグ戦初勝利を挙げた。その試合では自己最速の149kmもマーク。秋はリーグ戦13試合中11試合に救援登板し、2勝2敗。そして大学最後の登板となった入れ替え戦2回戦で見事なピッチングを披露した。

神宮のマウンドを最後まで守り抜き、叫んでは躍動した

秋は実現しなかった「翔太郎-大智」のバッテリー

「いままでいろいろ苦しんできたところがあったと思うんですけど、最後の最後に翔太郎本来のピッチングを見せてくれました。そこでキャチャーをやってるのが僕じゃないというのが、悔しいし、寂しいと思う部分はありますけど……。3年生、2年生、1年生は日本一になれる力があると思ってるんで、日本一に挑むための切符をなんとか来年も持つことができてよかったです」

試合の終了直後、上野(中央)は鈴木(1番)と抱き合った

目を赤くしながらそう話したのは、駒大のキャプテンで捕手の鈴木大智(だいち、4年、関東一)だ。愛知出身の鈴木は、上野とは小中学校時代にバッテリーを組んだ。別々の高校へ進んだが、高3夏の甲子園3回戦で関東一(東東京)vs中京大中京(愛知)の対戦が実現した。マウンドに上野翔太郎、打席に鈴木大智。二人の対決はテレビ番組でも特集された。卒業後、駒大で再びチームメイトになった。
鈴木は今春、1度は正捕手の座をつかんだ。春のリーグ戦では上野が3試合にリリーフで登板し、中学時代以来となる「翔太郎-大智」のバッテリーが実現したが、上野のピッチングは、まだ本調子ではなかった。

この秋は前田研輝(3年、広島工)が正捕手を務め、公式戦で鈴木がマスクをかぶる機会はなかった。本来のピッチングを取り戻した上野のボールを試合で受けられなかった悔しさはもちろんある。それでも鈴木は、上野の快投を誇らしい気持ちで見つめた。
卒業後、二人は別々の社会人チームで野球を続ける。社会人野球の舞台でまた、敵味方として戦う日が来るだろう。

伝統の駒大野球で巻き返せるか

この秋、駒澤大はリーグ戦13試合を戦い4勝9敗。負けた9試合のうち6試合は2点差以内の接戦だった。
「負けてても追いつく、クロスゲームにもっていく、そういう粘り強さはある。それでも(リーグ戦で)競り負けたのは、大事なところでミスが出てしまったから。けん制のミス、バントのミス、出しちゃいかんところでフォアボールを出してしまう。そういうところで失点を重ねて、得点もできてなかった」。大倉監督は苦戦の理由をこう分析する。この入れ替え戦では大きなミスがなく、接戦を勝ちきれた。

神宮のスタンドに向かって、最後のガッツポーズ

レギュラーには3年生以下の選手が多い。ショートの林琢真(1年、東邦)、セカンドの新田旬希(2年、呉)の二遊間。キャッチャー前田、センター若林と、センターラインが来年も残る。リーグ戦で4番を任された鵜飼航丞(こうすけ、中京大中京)は2年生。投手陣も先発を務めたのが3年生の竹本、1年生の福山の二人だけだった。

「3年生以下が主体のチームなので、来年は上位を狙えると思います。優勝がかかった試合を来年、見せてほしいです」。上野も後輩たちへの期待を口にした。
昨年、春秋連続で入れ替え戦を経験した中央大が、この春は2位に躍進し、秋は完全優勝を果たしている。駒澤大も戦力的には来季の飛躍が期待できるチームと言えるだろう。それでも、投打の歯車がほんのちょっと狂えば一気に下位へ転落してしまうのが「戦国東都」の厳しさだ。

打者は粘り強く出塁を狙い、機動力を使って走者を進め、たとえタイムリーが出なくても内野ゴロやスクイズなどで1点をもぎ取り、鍛え上げられた守備でリードを守り抜く。伝統の駒大野球で、来シーズンこそ巻き返しをはかる。

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