大学野球

いちど輝き失った甲子園のスター、駒澤大・上野翔太郎 ラストシーズンに復活の兆し 

甲子園での輝きを取り戻しつつある上野(現在の写真はすべて撮影・佐伯航平)

東都大学野球秋季リーグ戦第4週、駒澤大-東洋大のカードは12回戦とも延長タイブレークにもつれこむ熱戦となった。1回戦は東洋大が、2回戦は駒澤大がそれぞれ10回表に勝ち越して勝利。3回戦は1-17回、1死二塁から緒方理貢(3年、京都外大西)のツーベースで駒澤大が勝ち越し、これが決勝点に。21敗で今年初の勝ち点を奪った。駒澤大の上野翔太郎(4年、中京大中京)は3試合ともリリーフで登板し、計11イニングで178球の力投。3回戦でリーグ戦通算2勝目を挙げた。

「ここまできたら技術より気持ち」

3回戦、上野は同点の7回、2死二、三塁のピンチでマウンドに上がった。最初の打者にぶつけて満塁にしたが、続く打者にはカウント1-2から145kmのストレートを投じて三振にとり、ピンチを切り抜けた。8回は三者凡退に抑え、9回は2死から四球を与えたが、東洋大の4番、ドラフト候補の佐藤都志也(4年、聖光学院)をセカンドゴロに仕留めた。

「やっと勝ち点が取れました。ここまできたら技術より気持ち。勝ちたいと強く思う方が勝つんだと思います。どうしても今日は勝ちたくて、その気持ちだけで投げました」。上野は喜びをかみしめながら話した。

東洋大3回戦でリーグ戦通算2勝目を挙げた

この春、駒澤大は勝ち点0で最下位に沈み、2部1位の専修大との入れ替え戦に勝って1部残留を決めた。秋も開幕から2カード連続で勝ち点を落としていた。チームにとって、これが昨秋の第8週、國學院大戦以来の勝ち点奪取となった。

大事な場面で乱れたコントロール

今シーズン、上野はリリーフを任され、ここまでの8試合中7試合に登板している。東洋大との1回戦では1点リードの6回、2死満塁でマウンドに上がり、フォアボールで同点に追いつかれた。10回には、タイブレークによる無死一、二塁から最初の打者に当てて満塁に。2連続三振でツーアウトまでこぎ着けたが、またフォアボール。押し出しで勝ち越し点を与えてしまった。

2回戦では同点の5回から登板。68回に味方打線が得点し2点をリードしたが、9回に上野が3連打を浴び、1死満塁になったところで越智泰弘(3年、大阪桐蔭)にマウンドを譲った。そして越智が2点タイムリーを打たれ、2試合連続の延長タイブレークとなった。

学生ラストシーズンを懸命に生き抜く

ストレートは走っている。変化球も効果的に使えている。ところが大事なところで制球を乱し、抑えきれない。そして迎えた東洋大3回戦。「今日こそは、絶対やってやるぞ」の気持ちで23分の134球を投げ込んだ。

中京大中京高時代はジャパンでエース級の活躍

上野は高3の夏、中京大中京(愛知)のエースとして甲子園に出場した。身長174cmは投手としては小柄だが、コーナーを突くストレート、質の高い変化球を武器に12回戦で完投勝利。ベスト16へ進んだ。3回戦ではオコエ瑠偉(現・プロ野球楽天)らがいた関東一(東東京)と対戦。0-09回裏、相手の5番長嶋亮磨(現・神奈川工科大)にサヨナラホームランを打たれた。この試合では、小・中学校時代にバッテリーを組んだ関東一のキャッチャー鈴木大智との対決がテレビで特集され、高校野球ファンに強い印象を残した。鈴木も駒澤大に進学し、再びチームメイトになった。

中京大中京高3年の夏、甲子園のマウンドで叫ぶ上野(撮影・上田潤)

夏の甲子園のあと、上野は侍ジャパンU-18代表の一員に選ばれ、U-18ワールドカップに出場。当時のチームメイトには高校からプロへ進んだオコエ瑠偉、小笠原慎之介(東海大相模→中日)、高橋純平(県岐阜商→ソフトバンク)、今秋のドラフト1位候補である明治大4年の森下暢仁(大分商)らがいた。上野は3試合に登板、計18イニングを投げて自責点ゼロ。最優秀防御率のタイトルを手にするエース級の活躍で、日本の準優勝に貢献した。

高校野球雑誌の表紙にも登場し、鳴り物入りで駒澤大に進んだが、入学前に右肩を痛めていた。1年生の春にリーグ戦(当時、駒澤大は2部)初登板を果たしたが、本来のピッチングとはほど遠い内容だった。夏には右肩の痛みはなくなっていたが、また痛くなるのではないかという不安をなくすのに時間がかかった。

1年生の春秋、2年生の春は2部で計8試合に登板。2年生の秋にチームは2部で優勝し、日大との入れ替え戦に連勝して、翌春からの1部復帰を決めたが、上野の登板機会はなかった。3年生の春も登板なし。その秋は3試合、4年生の春は3試合に登板したが、いいときのピッチングの感覚は、なかなか戻ってこなかった。

「高校での実績で、少し自信はあったんですけど、それが通用する世界ではなかったです。周りの期待もありましたし、中には厳しいことを言う人もいましたけど、それも原動力にして、やるしかないと思って頑張ってきました」

社会人野球の世界でプロ入りを目指す

カットボール習得が浮上のきっかけ

今年の夏、社会人に進んだ駒澤大の先輩からカットボールの投げ方を教わったのが、浮上のきっかけになった。

「軸になる変化球を覚えたことによって、ほかの球種、とくにまっすぐが生きてくるようになりました。春まではまっすぐを投げようとすると、ちょっとスライダー回転してしまってたんです。それが、カットボールを意図的に投げることによって、カットボールとまっすぐのリリースの違いを(体で)覚えることができて、まっすぐがスライドしてしまうのがなくなりました」

この秋の初登板となった第1週、國學院大2回戦では6回から登板し、4イニングを投げて被安打3、無失点でついにリーグ戦初勝利を手にした。この試合の7回には自己最速を4km更新する149kmもマークした。そして前述のように東洋大3回戦で2勝目を挙げた。

卒業後は社会人野球に進むとを決めていて、プロ志望届は出さない。社会人野球でさらに自分を磨き、2年後のドラフトでのプロ入りを目指す。いちどは高校時代の輝きを失ったが、間に合った。学生ラストシーズンに、完全復活とさらなる飛躍を狙う。

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