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駒大の主砲・平野英丸、最後の秋へ固めた覚悟 東都1部が9日開幕

平野にとって春は苦しいシーズンだった

野球の東都大学秋季リーグ戦が9月9日、神宮球場で開幕する。駒澤大は春のリーグ戦で最下位に沈み、入れ替え戦で辛くも1部に残った。秋にどん底からの浮上をかける駒大。ラストシーズンを迎えるひとりの4年生の思いを聞いた。【追記:台風の影響で、東都の開幕日は10日となりました】

いい結果をほしがり、苦しんだ春

「自分はいままでたくさん試合に出させてもらった。経験でチームを引っ張りたい」
立正大に破れた昨秋の優勝決定戦のあとまもなく、駒大の副将になることが決まったとき、平野英丸(ひでまろ、4年、静岡)が口にした言葉だ。

そう意気込んでいた平野の春は、苦しいシーズンとなった。開幕試合は自身初となる4番に座った。オープン戦での感触は悪くなかったが、リーグ戦が始まってからは、どうしてもいい結果をほしがってしまい、徐々にスイングが小さくなっていった。開幕カードの亜大との3戦、そして2カード目の中大2回戦まで、4番なのにわずか2安打にとどまった。3カード目の東洋大2回戦で3安打しているが「偶然かな」と苦笑い。手応えのあるヒットがなかなか出なかった。しかし大倉孝一監督からは「いずれどこかで1本出る。思い切りいけ」という声をかけられていた。リーグ戦が進むにつれ、打順は5番、6番そして最後には7番まで下がったが、「気持ちはそんなに変わらなかった」という。

入替戦回避をかけ、打順を4番に戻して迎えた最終カードの立正大戦。2回戦で放った犠牲フライに、自分の中での変化を感じた。「いつもなら『凡退したらどうしよう』と考えて、思い切りよく振れていなかった」という場面で、その日はファーストストライクから気持ちよくバットが振れていた。そしてこの場面での最低限と考えていた犠牲フライを打てた。試合には負け、入れ替え戦行きが決まったが、個人として「何か見えてきたものはあったのかなと思います」と話した。

入れ替え戦まで、やれることをやった

入れ替え戦までは2部の優勝校決定と全日本大学野球選手権の終了を待った関係で、約1カ月の準備期間があった。「自信を持って打席に立ちたい」と、スイングの量を増やした。後がない中で、やれるだけやることを意識した。それは平野だけでなく、チームも同じだった。リーグ最下位という事実は受け入れたが、落ち込まなかった。受け入れたらあとはやるだけ。全員にやれることをやって次へ臨むという姿勢があったことで、雰囲気が悪くなることもなかったという。

打てない間も、平野はサードの守りでチームを支え続けた

リーグ戦ではチャンスを生かせないことが多かった。「打ててたら、最下位になることはなかったのかも、と思います」と平野。しかし入れ替え戦では、リーグ戦の最終カードでつかみかけた何かが確信となって好結果につながった。

ようやく4番の仕事

1戦目は勢いのある2部優勝校の専修大を相手に敗戦。崖っぷちに立たされたが、平野は3安打して打点もついていた。第1打席からセンター前ヒットで出塁してチームを勢いづけると、6点差をつけられた8回にも反撃の一打となるセンター前へのタイムリーヒットであきらめない姿勢を示した。

覚醒したのは2戦目。この日から4番での起用となった。1回に先制されたが、その裏1死二、三塁からのタイムリーヒットで1点を返し、試合を振り出しに戻した。その後もツーベースを放つ好調ぶり。そして同点で迎えた9回裏、1死一、二塁の場面だった。初球を振り抜き、サヨナラスリーラン! 直前に自身のエラーも絡んで追いつかれていたこともあって「絶対に自分が決める」と意気込んで入った打席だった。1勝1敗で迎えた3回戦でも「いままでやってきたことを信じて」との思いで試合に臨んだ。なんとか勝って残留を決めたが、1部の最下位だったことに変わりはない。その事実をしっかり受け止めつつ、「秋は優勝します」と力強く語った。

入れ替え戦で勝ち、喜ぶ駒大の選手たち

「調子で野球をやらない」

「人より多く打ってやろう、とは思わない」。平野に副将、そして経験豊富な4年生としての意識を尋ねた際の言葉である。昨シーズンは周りに4年生が多く、引っ張られる側だった。しかし今年、内野手のレギュラーの4年生はサードの平野だけ。この春は積極的にピッチャーに声をかけ続け、ルーキーの福山優希(八戸学院光星)や経験の少ない竹本瑛祐(3年、八戸西)らを精神面で支えた。自分の打撃成績が振るわないときも「打てなかったら守備で貢献しよう」と切り替えた。調子が悪くても表情や態度には出さない。「調子で野球をやらないようにしよう」と意識していた。バッティングには苦しんだが、この春はノーエラーだった。

平野たち4年生にとって最後のシーズンがそこに迫っている。高校時代、最後の夏は3季連続の甲子園出場がかかっていたこともあり、周りからの期待も大きかったという。しかし、当時の監督には「そういう考えは捨てよう。いつも通りのことをやれば結果はついてくる」と言われ続けた。その教え通り、いまでも「結果は後からついてくる」という考えが強く、ラストシーズンも個人的な目標はない。「首位打者やベストナインを取れるくらいの練習量をこなせばいいと思う。いつも通りやるだけ」と、リーグ優勝のためにチームに貢献する覚悟を語った。

駒大は9月9日からの第1週で國學院大と対戦する。

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