異彩放つ東海大ラクロス佐藤理子、大化けの気配漂わせる1年生ゴーリー
関東学生女子1部リーグ戦 開幕戦
8月12日@神奈川・富士通スタジアム川崎
東海大(勝ち点1) 10-10 慶應義塾大(1)
ラクロスの関東学生女子1部リーグの開幕戦が8月12日にあり、東海大は昨年度覇者の慶應に挑んだ。点の取り合いの末、10-10で引き分け。昨年はファイナル4で2-9と大敗した相手を、十分に苦しめた。
点とり合戦、譲らず追いついた東海大
東海大は第1クオーター(Q)の序盤から前に出て、2点を先取。その後は得点を奪い合う展開が続き、第2Qに入って14分に5-5の同点に追いつかれた。東海大はその直後、MF佐々木泉(4年、富谷)のショットで勝ち越して、前半を終えた。
後半も目まぐるしくスコアが動いた。第3Q2分、東海大はキャプテンのAT片桐まりな(4年、東海大相模)が追加点。4分後にはMF黒柳水稀(1年、伊奈学園総合)が決めて3点差をつけたが、ここから慶應が意地を見せる。7分に主将のAT荒井理沙(4年、慶應女子)、14分にはAT髙木麻由(3年、同)にシュートを決められリードは1点に。さらに第4Qに入って早々に2連続失点し、8-9。東海大はこの日初めてリードを許した。
流れは慶應に傾きかけていたが、東海大は譲らなかった。9-10で迎えた第4Qの12分、AT大城史乃(4年、糸満)がゴールネットを揺らし、追いついた。このまま試合終了。慶應を相手に堂々たる戦いぶりを見せた東海大の選手たちに、笑みがこぼれた。
大学初の公式戦は「授業参観みたい」
東海大には、異彩を放つゴーリーがいた。佐藤理子(1年、東京成徳大)。試合開始早々に慶應のフリーショットをセーブし、観衆をうならせた。ゴール前でボールを受けたときのアクションも堂々としていた。相手のチェックを巧みにかいくぐり、前線の味方へロングパスを通す。ルーキーとは思えない冷静なプレーぶりに、思わず目を奪われた。
佐藤にとっては、これが大学で初めての公式戦。緊張はしなかったんですか? と尋ねてみると「しなかったです。全席埋まるくらい観客がいて楽しかったですし、授業参観みたいな感じでしたね」と言って、笑った。
佐藤は中学に入るとすぐラクロスを始めた。小学生のころは水泳を習っていたが、同じ中学でラクロス部に所属していた2学年上の姉に誘われ、入部を決めた。「すごくラクロスをやりたいと思って始めたわけじゃなくて、ただ新しい競技をやってみたいなと思って」と佐藤。そこからゴーリーに目覚めた。フィールドプレーヤーの経験もあるが、「シュートを決めたときより、ゴーリーとしてセーブしてるときのほうが楽しい」と感じて、いまに至る。
「ゴールサークルの中だけにとどまりたくない」
佐藤にはゴーリーとして一つこだわりがある。それは、フィールドプレーヤーのように振る舞うことだ。当然、ゴールを守るのが本来の役目だが、佐藤は「ゴールサークルの中だけにとどまってるゴーリーにはなりたくない」と言いきる。サークルから積極的に飛び出していくプレーは、高校時代に身につけた。その当時のコーチから教わり、自らの武器にしようと思った。いまでは「ほかの人には負けたくない部分」と自負する。
持ち味を十分に見せた慶應戦の自己評価を聞いてみると「8割くらいですね。10割だったら、フリーをあと2本は止めてるので」と佐藤。のびのびプレーできる東海大ラクロス部の環境が気に入っているようで、高校にくらべて技術もスピードもワンランク上のラクロスにも、うまく順応している。
世界選手権に行けず、東海で日本一になって見返す
ここまで順風満帆な大学生活を送っているように見える佐藤だが、すでに挫折も味わっていた。8月10日までカナダで開かれていた19 歳以下の世界選手権。4年に一度の大会の代表候補には入っていたが、大会直前に落選した。悔しさとショックで涙を流したそうだが、すでに気持ちは切り替えた。
佐藤は言う。「落ちたことはすごいショックだし、世界大会に行きたかったなと、いまでも思うんですけど、世界基準で練習してきたんだから、日本一になんないと。何で選ばなかったんだろうと思わせなきゃ、と思って。逆にいま、東海で活躍して日本一になって見返したいなと。恨んでるわけじゃないんですけど、それくらいしないと、落ちた経験が自分の糧になんないと思ってます。東海ではスタメンでもベンチでも、チームに貢献することを考えてやっていきたいです」
1年生ながら、堂々と目標を語る姿が頼もしい。佐藤の大学ラクロスはまだ始まったばかり。今後どう化けていくのか、楽しみなルーキーだ。