野球

ルーキー福山優希の力投で東都1部残留の駒澤大、最下位の事実受け止め復活を

2、3回戦はルーキーの福山が粘った

東都大学野球1部2部入れ替え戦

6月18~20日@神宮球場
1回戦 駒澤大 3-7 専修大
2回戦 駒澤大 7x-4 専修大
3回戦 駒澤大 6-1   専修大

東都春季1部2部入れ替え戦は駒澤大(1部6位)が専修大(2部1位)に2勝1敗で勝ち越し、1部残留を決めた。1回戦はリーグ戦通算16本塁打、118安打を誇る専修大打線に圧倒され、4-7で敗戦。あとがない状況から、2回戦は4番平野英丸(4年、静岡)のサヨナラスリーランで勝利。3回戦は2回戦で133球を投げた福山優希(1年、八戸学院光星)が、大学で自身初となる完投を果たし、打線も6得点と援護して勝った。

リーグ戦の課題そのままの1回戦

1部リーグ最下位が決定してから約3週間の準備期間を経て、駒澤大は入れ替え戦の初戦を迎えた。リーグ戦で計8試合に登板した竹本瑛祐(3年、八戸西)が先発したが、4回途中まで投げて被安打5、3失点で降板。その後、山本寛太(2年、松山商)、上野翔太郎(4年、中京大中京)と細かくつないだが、勢いづいた相手打線を止められず、計7失点。与えた四死球も7となり、みすみすチャンスを与えてしまうパターンは改善されなかった。

打線は2回に鈴木大智(4年、関東一高)のレフト前タイムリーヒットで1点を返したあとは沈黙。8回に菅力也(4年、崇徳高)、平野のタイムリーヒットで2点を返したが、反撃はここまでだった。ただリーグ戦では打率1割4分6厘と苦しんだ平野がこの日、3安打3打点をマーク。「最後は4年生が意地を見せるしかない」との言葉通り、最後にタイムリーも放った。

大一番で見せた4年生の意地

あとがない状況で迎えた2回戦。この日は前日登板のなかった福山を先発のマウンドへ送った。自ら「もともと緊張するタイプではない」と話すが、入れ替え戦では「100球は200球と同じ」と言われるほど、心身ともに疲れる。1回、先頭打者にヒットを打たれると、その後も四球を出し、立ち上がりに苦しんだ。しかし、1回は4番にスクイズを許しただけの最少失点で切り抜け、6回にホームランを打たれるまで、打たせてとる投球で相手に追加点を許さなかった。福山がこの日投げたのは133球。8回途中までを投げきり、被安打4、2失点だった。

苦しい時に平野が意地の一発で試合を決めた

1年生投手の頑張りに応え、打線は奮起した。1回、林琢真(1年、東邦)のヒットと四球などで1死二塁とすると、4番平野がタイムリーを放ち1点。犠飛でさらに1点を追加。4回、5回にも1点ずつを重ね、専修大を突き放した。しかし6回、福山がホームランを打たれて1点差になると、9回にも代わった上野が一発を浴びて同点に。4対4のまま迎えた9回。打順は初回と同じ1番林からだった。センター前ヒットで出ると、犠打と四球で1死一、二塁。打席にはこの日4安打の平野。初球のストレートを迷わず振り抜き、右翼ポール際へ運んだ。「4年生が意地を見せよう」。言い続けてきたその姿を、大一番で見せられた。

ルーキーの2戦連続先発に、打線も奮起

これで1勝1敗。状況をイーブンに戻し、3回戦に臨んだ。この日の先発も、前日の先発で133球を投げた福山。前夜、監督からの「明日、いけるか? 」との問いに「肩に張りがあるかもと思ったけど、そんなことは関係ないです」と返し、マウンドに上がった。前日の投球数をものともしないピッチングで1失点完投を果たし、元横浜DeNA監督で駒大硬式野球部OB会長である中畑清氏に「後光が差してた」とまで言わしめた。

打線も福山の力投を援護した。1回から林がセンター方向へのヒットで出塁すると、相手の失策の間に返り、1点。3、5、7回にもヒットや四球で1点ずつ重ね、ここまで計4得点。さらに8回には2死満塁で新田旬希(2年、市立呉高)。1回戦では4番に座りながらも無安打。この日もここまで無安打と苦しんだ。狙い球は考えず、来た球に反応することを意識した結果、右へダメ押しの2点タイムリー。さらに突き放した。試合はそのまま終了。駒澤大の1部残留が決まった。試合後には、ホッとして泣く選手もいた。

「この経験を強さにしないと」

試合後、主将の鈴木は残留してうれしい気持ちがあるとしながら「入れ替え戦に行ってしまうほどリーグ戦で負けてしまい、悔しいという気持ちもあります」と話した。残留を決めてホッとする一方で、今シーズンのリーグ順位が最下位であることに変わりはない。選手たちの心境は複雑だった。副将の菅は「これで秋に日本一になる権利は残った。そこしか見てないです」と話した。

残留に安堵しつつも、リーグ最下位の悔しさを力に

「この入れ替え戦を強さにしなくてはならない」。大倉孝一監督は、そう話した。この試合をどう受け止めていくのか。本当に大事なのはそこだ。この経験を無駄にせず、チームが一丸となって目指してきたリーグ優勝、日本一へ。秋への戦いはすでに始まっている。

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