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特集:第68回全日本大学野球選手権

イノシシ軍団明治、4年生の奮闘で令和初の王者に 全日本大学野球選手権

優勝を決め、善波監督を胴上げする明治大の選手たち(写真はすべて撮影・佐伯航平)

全日本大学野球選手権最終日

6月17日@神宮球場
決勝 明治大(東京六大学)6-1 佛教大(京滋大学)

第68回全日本大学野球選手権決勝は、明治大学が佛教大学を6-1で破り、1981年以来38年ぶり6度目の優勝を果たした。2回戦の福井工業大戦は中盤に得点を重ねて7回コールド勝ち。準々決勝の東洋大戦はエースで主将の森下暢仁(まさと、4年、大分商)が完封。準決勝の東農大北海道オホーツク戦は2回からロングリリーフの伊勢が7回無失点の好投。打線は8回に一挙4点を勝ち越した。そして決勝の佛教大戦は3回に3点を先制し、9回に3点を追加。森下が1失点で完投する完勝だった。

エース森下がMVPと最優秀投手賞

最後の打者を146kmの外角直球で空振り三振に取ると、明治大のエース森下は高くジャンプし、駆け寄るキャッチャーの西野真也(4年、浦和学院)に抱きついた。

要所でギアを上げて三振を奪った森下

準々決勝で東洋大を完封した森下は、中3日で立った決勝のマウンドでも見事というしかないピッチング。3回までは1人も走者を許さず、4回から8回までは毎回安打を打たれながら、要所を締めて無失点。9回、リードが6点に広がり、今大会2度目の完封の期待が高まる中、2本の二塁打を打たれて1点を失った。最後は2者連続空振り三振で締めた。被安打7、10奪三振での完投勝利。大会2勝を挙げ防御率は0.50だった。森下は最高殊勲選手賞と最優秀投手賞を獲得した。

チームの不安、振り払う喜多の一打

序盤に3点を先制し、リードを保ったままの展開だったが、善波達也監督は不安を感じていた。4回以降は佛教大の3番手投手、速球派の福森建(たてる、4年、水口)の前になかなかヒットが出ない。佛教大は1回戦の八戸学院大戦、準々決勝の東北福祉大戦、準決勝の東海大戦と、3度も、3点のビハインドをひっくり返して勝ち進んできたチームだ。
「3点先制したあと、こっちのヒットが止まって、森下も毎回ランナーを背負ったピッチングが続いてました。今回も大逆転が始まるのでないかと不安でした」と善波監督。

ようやくその不安を振り払ったのは、準決勝でダメ押しの2ランを放っていた5番喜多真吾(4年、広陵)。9回、1死満塁から右翼線へ走者一掃のツーベースを放ち、勝負を決めた。

喜多の走者一掃のツーベースで試合は決まった

大会通算13打数7安打、打率5割3分8厘の成績で首位打者に輝いた4番北本一樹(4年、二松學舍大附)は、決勝でも2安打。リーグ戦首位打者の1番ショート、添田真海(4年、作新学院)は準決勝まで1安打と調子を落としていたが、決勝では3回に二塁打、9回に四球で出塁し、2点目、4点目のホームを踏んだ。

決勝の登板はなかったが、伊勢大夢(4年、九州学院)の復調も大きかった。春のリーグ戦では先発登板のなかった伊勢だが、2回戦の福井工大戦に先発して6回2失点と好投。準々決勝の東農大北海道オホーツク戦では3回からロングリリーフし、7回を被安打1、無失点に封じて勝利を呼び込んだ。伊勢の好投があったから、エース森下を準々決勝、決勝の2試合に万全の状態で投げさせられた。

「4年生にまとまりがあって、力を発揮できるチームは強い」とは、大学野球の監督たちが口をそろえて言う言葉だ。野球に限らず、大学スポーツ全般にあてはまるだろう。
「4年生がよくやってくれた。ベンチ入りメンバーだけではなく、就活中の4年生たちもよく手伝ってくれた」と、善波監督はラストイヤーにかける部員たちの頑張りをねぎらった。

秋にもういちど日本一を

明治大野球部の2019年のチームスローガンは「猪突猛進」。かつて明治大野球部を37年間率いた島岡吉郎元監督(享年77歳)がイノシシを好んだこと、今年の干支がイノシシであることから「2019年は明治の年」と、イノシシのワッペンをユニフォームの袖につけて今シーズンに臨んだ。

春のリーグ戦を他の5大学すべてから勝ち点を奪っての完全優勝で制し、1981年以来38年ぶりの全日本大学選手権優勝も果たした。まさにパーフェクトシーズンだ。それでも森下は言った。「自分自身、もっとレベルアップして、秋もリーグ優勝して、明治神宮大会でもう一度大学日本一になりたい」。イノシシ軍団は、まだまだ猛進をやめない。

秋にもこのシーンが見られるか

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