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特集:第68回全日本大学野球選手権

初出場の高知工科大 全員野球貫き、延長で散る 全日本大学野球選手権

高知工科大は攻撃が始まる度に円陣を組んでいた

第68回全日本大学野球選手権第2日

6月11日@神宮球場
1回戦 高知工科大(四国地区大学) 2-3x(延長10回) 大阪体育大(阪神大学)

曇り空の広がった神宮球場の第3試合、高知工科大学が全国の舞台に初めて立った。高知勢としては21年ぶりの出場。高知工科大は公立で、残り26の出場校はすべて私立だ。彼らの初陣はタイブレーク方式の延長戦の末に、大阪体育大学に敗れた。

福田直史監督は選手たちに「また来たらええんや」と声をかけ、神宮球場をあとにした。

エースの好投が先制点を呼び込む

高知工大の絶対的エースである尾崎修志(4年、徳島北)は、抜群のコントロールとキレのある変化球が持ち味。福田監督も「全日本の舞台でどこまで通用するのか非常に楽しみ」と期待していた。尾崎は大舞台でも変化球を巧みに操った。大体大を5回まで被安打1に封じ、得点を許さない。尾崎の好投がいい流れを呼び込む。高知工科大は3回、相手のエラーと2本のヒットなどで1死満塁。続く3番當田(とうだ)陽太郎(3年、大島)はデッドボール。押し出しで先制点を挙げた。高知工科大として、全国の舞台に初得点を刻んだ。さらに4番河原光明(3年、佐渡)の犠牲フライで1点を追加。2-0とした。

尾崎はバッターを見て投げる練習を重ね、打たせてとるピッチャーとして成長した

高知工科大の6回の守り。先頭打者をエラーで出してしまい、2死一塁で打席に2番木村翔(3年、大手前高松)。カウント1-1からの3球目、尾崎のスライダーが甘く入った。木村に振り抜かれ、ライトスタンドに飛び込む同点2ラン。だが尾崎は粘り、9回まで被安打2の2失点にとどめた。試合はタイブレーク方式の延長に。10回表の高知工科大はゼロ。裏の大体大に2死二、三塁とされる。打席には8番大西進太郎(3年、明石商)。尾崎のこの日142球目が大西の一振りでレフト前ヒットとなり、高知工科大はサヨナラ負けした。

遠征費の支援を募って東京入り

高知工科大学硬式野球部は1997年に創部。四国地区大学リーグを昨秋、今春と連覇し、東京に乗り込んだ。「全員野球」をモットーに掲げる。主将の岡本祥吾(4年、岡山学芸館)は言う。「全国には強いチームばかりで、四国でも厳しい戦いが多いです。それで勝つには一人ひとりの力が大事になるんです。本当に全員でやらないと勝てませんから」

河原は犠牲フライで2点目をもたらした

先発メンバー10人のうち7人が2、3年生という若いチームで、主将の岡本も控えだった。「元々ファーストの當田も調子がよかったですし。僕たちはキャプテンだから試合に出るというようなチームじゃないから。キャプテンとしてできることは、ほかにもあるんです」と岡本。そして「僕たちは全員で勝つチームなんで」と、再び口にした。

今回の出場にあたり、チームは高知から東京までの遠征費の支援を募った。選手自身も周りの人たちに声をかけた。岡本は「全国大会で1勝でもできるように、という気持ちを受けとりました」と振り返る。

高知工科大の4年生は例年、春のシーズンで引退する。試合を終えた尾崎と岡本に尋ねてみると、その決心は変わらないようだった。尾崎は「後輩の育成が大事ですから。ずっと僕が投げてきたから、経験をつませるためにも引き際が大事なのかなと思います」。これから就職活動を始める予定だ。岡本は「最後に、全国でも通用するんだっていうのを後輩に教えることができたんで、また神宮を目指してほしい」と、3年生以下に思いを託していた。

「キャプテンにできることはほかにもある」と岡本(右から2人目)。最前線で選手たちにエールを送っていた

尾崎はたった二つの失投やった

高知工科大学・福田直史監督の話
「それほど緊張せず、うちの試合ができたかなと思います。最後もある意味、うちの試合っぽかったんですけど、思った以上に選手たちは頑張ってくれました。たった二つの失投やと僕らも思ってますので、1球の恐さを彼(尾崎)も含めて改めて知ったと思います。エースが投げて、本来打つべき選手が打点を挙げるというのはできたんですけど、あまりにもスムーズにいきすぎてたのがあって、ちょっとベンチの中でも心配していたところはあるんです。そこがやっぱりツメの甘さや、大舞台を知らない我々の弱さだったのかなというのは感じてます。秋のリーグ戦は新しいチームで挑みます。ここで負けて、とくに最後に打てなかった子たちは2、3年生ですので、相当悔しい思いをしてると思います。来年また連れてきてくれるだろうと信じてます。得たものは大きいです。何から何まで。代表に決まってから今日まで、本当に勉強だったと思います。それは選手もスタッフもみんなが感じてて、引退する尾崎にしても得たものはあると思います。それで『引退やめました』と言ってくれたらうれしいんですけど。期待してますけどね」

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