野球

特集:第68回全日本大学野球選手権

立命館のトップバッター渡邉理玖は一般入試組の星 選手権の顔・2

出塁し、仲間の声に手を挙げて応える渡邉

野球の第68回全日本大学選手権が6月10日、神宮球場と東京ドームで開幕します。4years.では、出場27校から4人の注目選手を「選手権の顔」と題して紹介します。2人目は関西学生リーグを制した立命館大学の渡邉理玖(3年、東大津)です。

身長167cmと小さくても、俊足で守備は安定

立命のトップバッターでセンターを守る渡邉は、一般入試で入学した。甲子園経験者やプロから注目されるようなスポーツ推薦組の集まりに分け入り、スタメンを勝ち取った。

春のリーグ優勝を決めた5月26日の対同志社大学2回戦。この日も1番センターで先発した渡邉は1回、センター前ヒットで出塁し、1死二塁で相手ピッチャーの暴投の間に一気にホームへ。ヘッドスライディングで生還し、チームを勢いづけた。持てる力を十二分に発揮し、2シーズンぶりの優勝に貢献した。

身長167cmと、ベンチ入りメンバーの中では最も小柄だ。だが、持ち前の俊足を生かし、貪欲に次の塁を狙う姿勢や、安定した守備を買われ、この春初めてベンチ入りを果たした。

大学に入って実力差に呆然、でもコツコツ努力した

出身の滋賀県立東大津高校は進学校で、野球部は春夏通じて一度も甲子園には出ていない。渡邉自身も3年夏の滋賀大会は初戦敗退だった。大学でも選手として野球を続ける意志が固かった渡邉は、迷わず関西の強豪である立命を選んだ。厳しい環境の中で自分を磨き、「可能であれば試合に出てみたい」との目標を胸に受験勉強に励み、産業社会学部スポーツ社会専攻に合格。名門の野球部に飛び込んだ。

春の関西学生リーグを制し、喜ぶ立命館大学の選手たち(右から5人目、ひときわユニフォームの汚れているのが渡邉)

入学当初は、予想通り周囲とのレベルの差に驚いた。同じポジションには、昨秋のプロ野球ドラフト会議で楽天から1位指名を受けた辰己涼介もいた。2学年上の偉大な先輩について渡邉は「スケールが違った」と表現する。

不安を抱く渡邉に、後藤昇監督が声をかけてくれた。「ゆくゆくは試合に出られるように頑張れよ」。「明らかに実力差がある自分も見てくれてると感じて、励みになりました」
渡邉の挑戦が始まった。

限られた時間の中で自主的に課題を見つけ、どうすればいい結果につながるのかを考え抜いた、その過程で高校時代の経験が生きた。かつてピッチャーの経験もあった渡邉は、大学入学当初から打撃投手を買って出た。そこでバッターを観察した。辰己にも積極的に質問して、いろいろ教えてもらった。守備の際の足の運び方や、打球への反応の仕方などを必死で学んだ。

コツコツと積み上げた努力は、3回生になったこの春、実を結んだ。

全員に与えられたチャンスをつかんだ

近年は辰己や東克樹(現・DeNA)といった突出した存在がいたが、今年度のチームにはいない。底上げのため、今年の年明けに実力に関係なく選手全員を4チームに分け、リーグ戦をやった。全員にチャンスが与えられた。渡邉はそこで活躍し、2月のAチームの合宿メンバーに選ばれた。春先のオープン戦から試合で起用されるようになり、今シーズン終盤、第7節の対関西大学2回戦で、ついにリーグ戦初の先発出場を果たした。

立命館大学のトップバッターとして打席に立つ

渡邉を先発で使った理由について、後藤昇監督はこう話す。「渡邉が間違いなくいちばん練習したことを、部員たち誰もが認めてます。試合経験はないけど、起爆剤にしたかったんです」。その期待に応えた。渡邉が先発メンバーに入ってから4試合連続で勝ち、チームは優勝をたぐり寄せた。

初の全国舞台へ臨む渡邉は「持ち味を生かして、チームの勝利に貢献したい」と、6月11日の1回戦、東海大学戦を心待ちにする。彼の卒論のテーマは「大学野球における関西と関東の注目度の差」。晴れのグラウンドに立ち、そのヒントも見つけてくるつもりだ。

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