野球

特集:第68回全日本大学野球選手権

東京六大学制したイノシシ明治、全日本選手権で38年ぶりの頂点狙う

完全優勝を決め、喜ぶ明治ナイン

明大野球部が5シーズンぶり40度目の栄冠を手にした。〝猪突猛進〟のチームスローガン通りに勝ち進み、勝ち点5の完全優勝を飾った。

開幕から見せた〝粘りの明治〟

立大との開幕戦は、オープン戦で絶好調だったエースで主将の森下暢仁(4年、大分商)がまさかの4失点。打線も音なしで零封負けを喫する。翌日は先発した2年生の竹田祐(履正社)が5回1失点と粘った。自身にとってのリーグ戦初勝利が、チームの初勝利となった。

第3戦で初戦の悔しさを晴らした森下

1勝1敗で迎えた第3戦は、膠着状態にあった8回に喜多真悟(4年、広陵)がタイムリー二塁打。投げては森下が完投し、初戦の悔しさを晴らした。開幕カードから3試合を戦う展開になったが、伝統の勝負強さで勝ち点を挙げ、幸先のいいスタートを切った。

流れをもたらした早大戦2連勝

明早戦で覚醒した和田

続く早大とのカードは〝打ち勝つ野球〟で勝利をつかみとった。初戦は1点ビハインドの6回に4番北本一樹(4年、二松学舎大附)、5番喜多の連続タイムリーで逆転。続く7回にも追加点を挙げ、突き放した。2回戦では和田慎吾(4年、常総学院)に2本のホームランが飛び出すなど、5得点で試合を決めた。入学以来、期待を受けながらもいい結果を出せずにいた主砲が覚醒。「周りの選手、ファンの皆さんが応援してくれてたので、いい結果を残せてよかった」。和田はホッとした表情で言った。小宮山悟新監督の指導のもと、好投手が揃った早大相手に無傷で勝ち点を奪い、優勝への流れを手中に収めた。

勝ち点3を獲得

空き週を挟み挑んだ東大戦。土曜日は延長にもつれ込む投手戦となった。相手先発・坂口友洋(4年、日比谷)の緩急の差を駆使した投球を前に、明大は10回まで無得点。一方の明大先発・森下もゼロを並べる熱投。9回までの18奪三振は歴代3位タイの記録で、結局20三振を奪った。そして10回、エースの意地の投球に応え、添田真海(4年、作新学院)がサヨナラヒットを打った。

意地のサヨナラ打を放った添田

なんとか勝ったが、「勝つんだという気持ちが足りない」と善波達也監督も苦言を呈した。打って変わって2回戦は、10安打8得点で相手を圧倒した。試合後、主将の森下は「ここまできたからには、優勝をつかみとりたい」と、改めて意気込んだ。

天王山制し大きく前進

勝ち点3同士で迎えた慶大との首位攻防戦。1回戦は幸先よく先制すると、終盤にも追加点を挙げ、追い上げを許さなかった。9回の攻撃では、開幕戦で3番に座りながらここまで不調に苦しんでいた内山竣(4年、静岡)がダメ押しのタイムリーヒットを放った。

ダメ押しの適時打を放った内山

試合後の内山は「少しはチームの役に立ててよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。投げても森下が圧巻の投球。9奪三振、2失点で完投勝利を収めた。翌日は竹田が大車輪の活躍。2回にレフトへ満塁本塁打。投げては5回1失点にまとめた。6回からは伊勢が登板し、4点のリードを守り切った。2016年の秋を最後に勝ち点を挙げられなかった相手から、価値ある連勝を飾った。

投げては5回1失点、打っては満塁ホームランと、大活躍の竹田
竹田から継投し、リードを守りきった伊勢

〝血の明法戦〟で40度目のV

明大が1勝すればその段階で優勝が決まる状況で迎えた法大とのカード。土曜日は3点リードで迎えた終盤に悪夢が待っていた。先発の森下は7回まで無失点、許した安打はわずかに1と抜群の投球。しかし、8回に走者を二、三塁に抱えると、代打中村迅(3年、常総学院)の一打は無情にも右翼スタンドへ。勝ちムードに沸いていた中でのまさかの同点弾に、明大スタンドも沈黙。それでも9回に喜多が意地の一発で同点に持ち込み、翌日への希望をつないだ。森下は試合後、「自分の一球で流れを変えてしまって……。野手のみんなには支えてもらってるのに」と、ふがいなさを悔やんだ。

翌日の2回戦も1回からまさかの展開に。先発の竹田がいきなり6失点と大乱調。3回にも追加点を許し、不穏なムードがスタンドにも漂った。しかし、4回から打線がチャンスを生かし、毎回得点。8回には代打松下且興(3年、九州学院)が勝ち越しの二塁打を放ち、大逆転に成功した。9回のマウンドにはエース森下が登板。テンポよく2死を奪うと、最後の打者は139kmのカットボールで見逃し三振。その瞬間、両手を大きく広げ天を仰いだ。40度目の優勝にスタンドも大いに盛り上がった。森下は「最後、投げさせていただいた時には感謝しかなかった」。総力戦を自分の右腕で締めくくり、大事な1勝をつかんだ喜びをかみしめていた。翌日も勝ち、完全優勝を達成した。

いざ日本一へ。6月10日に開幕する全日本大学選手権での優勝は、1981(昭和56)年が最後。「令和の最初に、平成で勝てなかった分、勝ちたい」と、善波監督は強く意気込んだ。ユニフォームの袖にはイノシシワッペン。明大はリーグ戦の勢いそのままに大学一をつかみ取る。

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