野球

春2勝の京大野球部、新入生獲得には「リクルート班」が大活躍

熱烈な勧誘を受け、京大野球部に入った手塚(手前左)と牧野(同左から2人目)

入学試験は極めて難しい、もちろんスポーツ推薦もない。そんな京都大学硬式野球部が、強豪私大の集う関西学生野球リーグで奮闘している。今シーズンも最下位に終わったが、関西大学と関西学院大学から1勝ずつをあげて、秋に10シーズンぶりの勝ち点獲得へ希望をつないだ。その京大野球部にこの春、朗報が飛び込んできた。

「甲子園に出場したピッチャーと、大阪選抜のピッチャーが合格した」

この情報を受けて「リクルート班」が動いた。

「膳所の手塚と北野の牧野が受かった」

「膳所(ぜぜ)の手塚が合格した」「北野の牧野も浪人で受かった」。「膳所の手塚」とは、昨春の選抜大会に出場した膳所高校(滋賀)のエースだった手塚皓己。「北野の牧野」とは、甲子園出場はないが、140km近い直球とキレのあるスライダーを武器に2016年秋の大阪府予選で8強入りし、大阪選抜にも選ばれた北野の元エース牧野斗威だ。

京大はリーグ戦5勝をあげている藤原風太(東海大仰星)が4回生になり、後継の育成が急務だ。情報を受け、新入生獲得の作戦を練る「リクルート班」は、手塚と牧野のそれぞれの出身校の先輩にあたる部員と綿密に打ち合わせ。練習やリーグ戦の観戦に誘い、時には食事をしながら京大野球部の魅力を説いた。ただ、高校まで野球に熱中していたとはいえ、勧誘はなかなか一筋縄にはいかない。

京大の入学式で勧誘のビラを配る野球部のリクルート班メンバー

「100%入部すると思います」。入学式直後に、勧誘担当の部員がこう自信を持っていた牧野は、4月下旬になっても入部届を提出しなかった。過去4度の日本一、6度の学生日本一を誇るアメリカンフットボール部「ギャングスターズ」から「一緒に日本一を目指そう」と熱烈な勧誘を受けていたのだ。「こんなアツい人たちと日本一を目指してみたい」と、牧野の心は揺れていた。

リクルート班は粘り強く説得を続けた。「左ピッチャーは貴重や。力を貸してほしい」「京大野球部も強くなってきた。一緒にさらに上を目指そう」と。その熱意に牧野も「スポーツに熱中できるのは最後。それならやっぱり野球やな」と思い直し、5月1日に入部を決めた。

アイドル好き、との情報得て形勢逆転

手塚は、燃え尽きていた。「野球でできることは、高校までにやりきった」と言いきる手塚の入部を、部員たちは半ばあきらめていた。だが、リクルート班は手塚が大のアイドル好きだという情報をキャッチ。同じ趣味の部員がいることや、アイドルのライブなどに通う「ヲタ活」と部活は両立できると説いた。

なんとか気持ちをつなぎとめると、4月中旬、青木孝守監督が入部を迷うほかの新入生とともに懇談し、「高校時代に実績を残した選手が入ってくれれば、優勝を口にしてもいいレベルのチームができる」と熱弁。手塚の体験入部にこぎ着けた。そこから手塚の背中を押したのは、牧野の存在。「想像以上にレベルの高い選手が入るのを知って、『おもしろいことを起こせるかも』という気になれた」と、ゴールデンウィーク明けに入部届を提出した。

最下位が定位置でも、部員は増加傾向

京大が所属する関西学生野球リーグは、近年では立命大の辰己涼介(現楽天)や東克樹(現DeNA)ら、プロから上位指名される選手が続々と出ている。そんな中、京大は2001年春以降、6チーム中最下位が定位置になっている。

京大は今春のリーグ戦も最下位だったが、2勝をあげた

スポーツ推薦などで有望選手を確保できる私立の5大学とは異なり、京大は超難関入試というハードルがある上、入学後も大学から競技を始めるケースの多いアメフト部やアイスホッケー部、ラクロス部などと、運動能力の高い新入生を奪い合うことになる。それでもリクルート班の活動やリーグ戦での健闘もあって、部員数は増加傾向にある。

スタッフ志望者も、いらっしゃーーい

野球にも力を入れる進学校を中心に有望選手も集まるようになり、今年の新入部員には膳所と北野に加え、昨夏の南大阪大会4回戦に進出した天王寺の計3校の元エース6人が顔をそろえた。青木監督は「力のある4回生が抜けるので、この6人から先発の柱が育ってくれたらいいです。非常に楽しみ」と期待を寄せている。

近年は部員が80人を超えて活気づく一方、スタッフが足りないのが悩みにもなっている。リクルート班は「チーム一丸となって勝利を目指すのは、大きなやりがいがあります。一緒に部の運営を担ってほしい」と、スタッフ志望での入部も呼びかけている。

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