亜大・虎谷貴哉 昨年は代打で1打席だけ、悔しさ胸に飛躍の春
東都大学野球第4週の亜細亜大-中央大は4回戦に及ぶ激闘の末、中央大が2勝1敗1分けで勝ち点2とした。
勝ち点を逃した亜大でこの春、ファーストのレギュラーに定着したのが虎谷貴哉(3年、星稜)だ。対中大1回戦では2試合連発となる先制の今シーズン3号本塁打。昨年味わった悔しさから、強い気持ちでリーグ戦に臨み、攻守でチームに貢献している。
チームに勢いもたらす先制弾
第1週、第2週と勝ち点をとっていた亜大だが、第3週は國學院大に痛い連敗。優勝戦線への生き残りをかけた第4週の対中大1回戦は、両先発投手とも立ち上がりが好調で、3回までスコアボードには0が並んでいた。
4回、先頭打者として打席に立った虎谷は、1ボール2ストライクからの4球目、中大の植田健人(2年、興國)が外角低めに投じた133kmの直球をすくい上げた。打球は伸び、バックスクリーンに飛び込む先制の3号ソロ本塁打に。「まっすぐ低目を、体を開かずにセンター方向へ、というイメージで打ちました。ピッチャー陣がここまで頑張ってくれてるので、なんとか楽をさせたいと思って、塁に出ようと思った結果です。入ってくれてよかったです」
虎谷の一発で勢いのついた亜大はこの回、丸山大(3年、鶴岡東)のソロ本塁打などでさらに2点。6回に追いつかれたが、9回、主将の安田大将(だいすけ、4年、駒大苫小牧)の2点タイムリーで勝ち越し、連敗を止めた。
2週目からスタメンに定着
「2年のときはまったく試合に出られなくて、ベンチにもほとんど入れなかったんです。去年1年、本当に悔しくて……。いま、爆発できてるなって思います」
昨年の悔しさが、いまの力になっている。第4週を終えた時点で27打数9安打、3本塁打で4打点、打率はリーグ6位の3割3分3厘と好調だ。亜大にとって欠かせない存在になってきた。
リーグ戦デビューは早かった。1年生の春、3カード目の対中大3回戦。9番セカンドでスタメンに抜擢(ばってき)された。秋は開幕から7試合続けてサードでスタメン出場。レギュラーをつかみかけたが、4カード目以降、虎谷の名前が呼ばれることはなかった。2年生の春秋のリーグ戦は、春に代打で1打席に立っただけだった。
この春の第1週、対駒澤大戦では3試合とも途中出場し、3回戦で今シーズン初安打を放った。立正大との第2週、1回戦に6番ファーストでスタメン出場を果たすと、3安打の活躍。2回戦では5番に打順が上がり、リーグ戦初本塁打となる2ランを放った。チームは連勝。試合後、亜大の生田勉監督は「虎谷は努力でチャンスをつかんだ」と語った。
第3週は國學院大に連敗を喫したが、虎谷は2回戦で2号ソロ本塁打を放った。
「練習では、誰にも負けない、チームで先頭に立ちたいと思ってやってきたんで、それがいまの結果につながってると思います」
星稜時代に伝説の試合を経験
名門星稜高校では1年生の夏からショートのレギュラーをつかんだ。前述のように大学1年生のときはセカンド、サードで試合に出場。出場機会を得るため、今春からファーストに挑戦している。対立正大2回戦では2度、相手のスクイズを冷静に処理、いずれも本塁で刺し、チームのピンチを救った。
「ファーストでチャンスをもらったので、なんとか結果を出したいと思ってやってます」
高校時代は1年生の夏、3年生の夏と2度、甲子園出場を果たした。
1年生の夏には、伝説の試合にも出た。石川県大会の決勝、小松大谷戦だ。0-8で迎えた9回裏に9点を挙げ、大逆転サヨナラ勝ち。全国的に話題になったこの試合、虎谷は8番ショートで9回表まで出場していたが、9回裏の猛攻の中で代打を送られた。
「あの試合を経験できたのは、いまの自分にとって本当に大きいです。9回の攻撃には参加できなかったんですけど、先輩たちの最後まであきらめずに戦う姿がすごかったんです」
泥臭くても、チームのために
第4週の対中大2回戦は1-2の逆転負けを喫したが、虎谷は7回、二塁打で出塁し、安田のタイムリーで先制のホームを踏んだ。3回戦は延長14回、0-0の引き分け。4回戦は3-6で敗れた。勝ち点を落として優勝の可能性はついえたが、虎谷自身にとっては収穫もあり、課題もはっきり見え、今後につながる4試合となった。
「自分の弱いところを突かれて、対応しきれなかったのが課題です。次の東洋戦には、そこを修正して臨みたいと思います。絶対にチームの勝ちに貢献します」
敗れた4回戦の第3、第4打席ではショートゴロの際、一塁ベースへ気合のヘッドスライディング。アウトになってもチームに勢いをつけたい。泥臭く、泥臭く。それが虎谷貴哉のプレースタイルだ。1年の苦しみを経てつかんだレギュラーの座。絶対に手離さない。