大学野球

令和初の通算100安打にリーチ 慶應・柳町達「勝ちきる力を」

柳町は今シーズン7試合終了した時点で、99安打を記録している(撮影・浅田哲生)

慶應義塾大学野球部のトップバッター、柳町達(たつる、4年、慶應義塾)が第5週を終えて打率争いのトップに立っている。5割3分8厘で、2位の加藤雅樹(早大4年、早稲田実)に8分の差をつけている。そして何より、令和初の通算100安打へリーチがかかっている。18日からの明治大との首位対決は優勝の行方占うカードであると同時に、柳町の大記録にも注目が集まる。過去に東京六大学で通算100安打以上を達成したのは32人だ。

昨秋の屈辱を忘れない

柳町は、昨秋の“あのシーン”を忘れることができない。リーグ3連覇へあとアウト3つとなった早慶3回戦だ。宿敵早稲田に逆転を許し、ほぼ手中にしかけていた「優勝」の2文字が、するりとこぼれ落ちた。勝ちきる力の重要性を改めてかみ締め、最終学年を迎えた。副将の重責も担うラストイヤーの春、ここまではバッティングでチームを引っ張ってきた。

リーグ戦開幕前に掲げた目標は「打率3割5分、打点8以上」。彼は1年生の春に打率3割1分1厘でベスト9という華々しいデビューを飾った。2年生の春からは、慶應では珍しい大型スラッガーの岩見雅紀(現・楽天)らと組んだクリーンナップで、ファンを熱狂させた。今シーズン開幕までに、現役最多の85安打を積み重ねてきた。

シャープな振りでとらえる(昨秋の早慶戦にて、撮影・浅田哲生)

「バッティングの基本はセンター返しですから。意識してます」

柳町はこの鉄則を守り、実践する。例えば開幕戦となった4月13日の立教大1回戦。1回に先制点のきっかけとなる中前安打を放つと、3回と7回にも打球はセンター前に抜け、5打数3安打。翌日も1回に同じくセンター前へ、2本目はライト前へと運んだ。

コンパクトかつシャープな振りで、ヒットを量産し続ける。開幕カードを2連勝したあと、得点圏に走者を置いての打席で力が入っていたように見えたと指摘すると、「たまたまだと思います。ランナーの有る無しで意識が変わることはありません。いいスタートが切れたので、もっとレベルアップしていくのが大切と考えてます」。涼しい顔で返した。

そのことを、2カード目の法政大戦で証明した。バッティングの好調は続き、「柳町のバントは珍しいなあ」と、OBをうならせる犠打も決めた。1勝1敗で迎えた3回戦の6回裏、4-4と同点のシーンで、法大2番手の三浦銀二(2年、福岡大大濠)から、勝ち越しの3ランを右中間に叩き込む。これが決勝点となり、5回から慶應のエース髙橋佑樹(4年、川越東)に代わっていたルーキーの増居翔太(彦根東)にリーグ初勝利がついた。

法政大戦では珍しくバントも披露(撮影・浅田哲生)

昨シーズンまではクリーンナップを打つことが多かった。「1番は野球人生の中で初めてです。でも、打順で意識が変わることはありません」と、きっぱり言った。

副将として弱さは見せられない

1年生の春からレギュラーで出場し続けた柳町のラストイヤーは、主将の郡司裕也(4年、仙台育英)を支える副将だ。大久保秀昭監督からは「とにかく優勝するために鍛錬に励むこと。個人的な100安打越えやプロ野球に関する目標はあると思うけど、チームが優勝することを第一に考えて行動してほしい」と言われている。

柳町自身も「副将として責任を感じてます。弱さは見せられない。チームとして、そのスタッフとしてしっかりと形にしていきたい」と、気持ちを引き締める。シャイな慶應ボーイだが、今シーズンは積極的に後輩らに気を配り、声をかけていきたいとも話す。「そして何より、最後に取りきる力をもっと意識していきたい」と、2シーズンぶりの優勝をみすえる。

父や兄の影響で野球を始め、中2のときに地元茨城の取手シニアで全国優勝。そのチームでも先輩だった小原徳仁にあこがれて、高校からいまと同じグレーのユニフォームに袖を通した。甲子園は遠く、神奈川のベスト4が最高。関東大会も初戦で負けた。大学でもリーグ2連覇は経験したが、大学日本一は果たせていない。チーム一丸となって、頂点へ向かう。

ニックネームは「マッチ」。小学生ファンにサインした直後、優しくほほえんだ(撮影・浅田哲生)

身長180cm、体重72㎏。野球選手としては決して大きくはないが、技術でも、ハートでもチームを引っ張る。「郡司と並んで、いまの慶應の看板選手。注目され、警戒される中、優勝するために活躍してほしい」と、大久保監督もまっすぐな期待を寄せる。

「あまり意識はしてないですけど、通算100安打を達成できるぐらい打てば、チームの勝利に貢献できると思って毎試合やってます」

自分のひと振りの重みを、痛いほど感じている。