野球

特集:第68回全日本大学野球選手権

東洋大・村上頌樹、戦国東都を制した新エース 選手権の顔・1

東洋大のエース村上は春のリーグ戦最終カードで11回被安打1で完封

野球の第68回全日本大学選手権が6月10日、神宮球場と東京ドームで開幕します。4years.では、出場27校から4人の注目選手を「選手権の顔」と題して紹介します。最初はこの春、東都大学リーグ1部で6勝を挙げ、東洋大の2シーズンぶりの優勝に貢献。最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインと三つのタイトルを獲得したエースの村上頌樹(しょうき、3年、智弁学園)です。

春は6勝無敗で防御率0.77

この春、村上は東都で9試合に登板して6勝0敗、うち4完封。70イニングを投げて自責点6、防御率0.77、奪三振70。見事と言うしかないピッチングを続けた。

圧巻だったのは第5週の対亜細亜大1回戦。9回2死までパーフェクトピッチングを続けた。27人目の打者をフォアボールで出したが、9回を終えてなおも被安打はゼロ。味方打線も得点できず、延長戦へ。10回1死からヒットを打たれ、ノーヒットノーランもなくなったが、11回を投げきって被安打1で完封。5回には自己最速の149kmもマーク。東洋大はこの勝利で優勝に王手をかけた。
「去年1年間は何もできなくて悔しい思いをしたんですけど、その経験がいま生きてると思います」

選抜V投手として好発進も……

奈良・智弁学園高校の2年生から3年生になる春に出場した2016年の選抜大会では、エースとしてチームを初優勝に導き、鳴り物入りで東洋大に進んだ。1年春からリーグ戦に登板し、2勝を挙げて優勝を経験。3カード目の対専修大2回戦で、完封でリーグ戦初勝利を挙げている。華々しいスタートに、村上の大学野球は順風満帆かと思われた。しかし、春のリーグ戦終盤に右ひじを痛めたこともあり、調子を崩してしまう。秋は3試合、6回3分の1を投げ1勝を挙げるにとどまった。

コントロールのよさには定評がある

2年生になると、2学年上の上茶谷大河(現・DeNA)、甲斐野央(現・ソフトバンク)、梅津晃大(現・中日)の3投手の活躍もあり、春秋合わせて6試合、19回3分の1の登板に終わった。
「けがよりも、自分の気持ちに原因があったと思います。上茶谷さん、甲斐野さん、梅津さんがいいピッチングをしていたので、負けたくないという気持ちが空回りしたところもあって、バッターとの勝負ができてませんでした」

引っ張る立場になり、遠投で復調

3人の先輩投手はそろってドラフト会議で上位指名されてプロへ。偉大な3投手が抜け、今度は村上が投手陣を引っ張る番になった。
「冬場、遠投で自分の投げるボールを1球ずつ確認しながら投げました。指にしっかりかかったときは質のいいボールがいく。逆に、指へのかかりがよくないときは、いかない。ボールの質を高めるために、確認しました」

質のいいボールがいくときの感覚を、体に覚え込ませた。すると春のオープン戦では、徐々にいい感覚で投げられるようになったという。

もともとコントロールには自信があった。直球にも緩急の差をつけてバッターのタイミングを崩す。変化球の精度も高く、この春から投げるようになったフォークボールもさえた。

智弁学園時代はエースとして、選抜大会で初の全国優勝に導いた

杉本監督「受けたい投手は村上」

現役時代は捕手だった杉本泰彦監督は「僕がもし現役のキャッチャーだったら、いちばん受けたいピッチャーは村上ですね。上茶谷でも甲斐野でも梅津でもなくて、村上です。キャッチャーやってて、いちばん面白いピッチャーですよ。リード通りにボールがくるんですから」と、村上の高い制球力をたたえる。

大学選手権では過去4度の優勝を誇る東洋大だが、一昨年、昨年と2年連続で初戦敗退している。村上は2度とも登板していないので、大学選手権で登板すれば初めてとなる。今大会は2回戦からの登場で、中京学院大-桐蔭横浜大戦の勝者とぶつかる。
「3年連続で初戦負けというわけにはいかないです。出るからには優勝を狙って、一戦必勝で目の前の試合を勝っていきたいです」

火の玉ストレートにもあこがれ

高校3年生のときからプロ入りの希望はあったが、藤平尚真(横浜高校~楽天)、今井達也(作新学院~西武)、寺島成輝(履正社-ヤクルト)ら、同学年のトップレベルのピッチャーたちを見て、自分とのレベルの差を感じた。

初登板となる選手権への思いを語った(撮影・小川誠志)

「大学で4年間鍛えて、プロで通用するようなレベルにもっていきたいと思って進学することに決めました」
そしてこの春の活躍で、来年のドラフト候補としての評価を一気に上げた。

目標にしている選手には、金子弌大(ちひろ、現・日本ハム)の名前を挙げる。快速球とキレのいい変化球をコントロールよく投げ込むクレバーなピッチャーだ。村上の将来像として十分にうなずけるが、実はもう一人、まったく違うタイプのあこがれのピッチャーがいる。
「阪神の藤川球児さんです。あの火の玉ストレートはすごい!! 子どものころからあこがれてます」

球速に対する強いこだわりはないと言うが、前述のように最速149kmまできている。クレバーなピッチングを見せながら、火を噴くような剛速球を投げ込む村上の姿も見てみたい。

in Additionあわせて読みたい