東都1部残留の駒澤大 悔しさ忘れず、新グラウンドでリスタート
東都大学野球入れ替え戦は、1部6位の駒澤大が初戦を落としてからの連勝で2部1位の専修大を下し、1部残留を決めた。過去11度の大学日本一(全日本大学選手権6度優勝、明治神宮大会5度優勝)、27度の東都1部優勝を誇る名門。今春は投手陣の調子が上がらず苦しいシーズンとなったが、土壇場で踏みとどまった。
投手陣の経験不足が不安材料だった
入れ替え戦3回戦の9回裏、ゴロを捕球したショートの新田旬希(2年、市立呉)からセカンドの林琢真(1年、東邦)へ。そしてファーストの小西慶治(3年、東邦)へとボールはきれいに渡った。6-4-3のダブルプレーが完成。この瞬間、駒澤大の1部残留が決まった。
駒澤大は2017年秋の入れ替え戦で日大を破って1部に復帰した。復帰後初のシーズンとなった昨春は3位、2シーズン目の昨秋は優勝した立正大と勝ち点、勝率で並ぶ1位。優勝決定戦では敗れたが、順調にステップアップしてきた。
平野英丸(4年、静岡)、菅力也(4年、崇徳)、緒方理貴(3年、京都外大西)、若林楽人(3年、駒大苫小牧)、新田旬希ら、野手陣は昨年からリーグ戦に出場していた選手たちが残った。しかし、辻本宙夢(現・東邦ガス)、多崎蒼司(現・日本製紙石巻)らが抜けた投手陣の経験不足が今春の不安材料だった。
1勝1敗から落とし続けた勝ち点
第1週、亜細亜大との開幕戦は4-2で勝ったが、2、3回戦でいずれも敗れ、勝ち点を落としてしまう。第2、第3、第4週は続けて1勝1敗から3回戦に敗れて勝ち点を落とした。最終週の立正大戦に連敗し、最下位が決まった。14試合を戦って4勝10敗。うち、1点差の負けが6試合。競った試合で勝ちきれなかった。
投手陣の軸として期待されていた上野翔太郎(中京大中京)や開幕戦で先発した平嶺悠斗(文徳)ら4年生投手の調子が上がらず、やりくりに苦労する中、第3週の対東洋大2回戦でルーキーの福山優希(1年、八戸学院光星)が初先発初勝利を挙げ、光が見えた。
土壇場で選手たちが力を発揮
入れ替え戦の初戦は登板した5投手が計12安打を浴び7失点、7四死球と崩れた。3-7で負け、あとがなくなった。この土壇場で、ようやく選手たちが力を発揮した。
2回戦に先発した福山は、低めを丁寧に突くピッチングで7回3分の2を被安打4、3失点(自責は2)と好投。リリーフ陣が終盤につかまり、追いつかれたが、9回裏に4番平野がサヨナラ3ランを放ち、1部残留へ踏みとどまった。
福山は翌日の3回戦でも先発。9回を投げ切り、被安打5、1失点と専修大打線を抑え込んだ。2日間で計263球を投げる力投。3回戦の試合後に主将で捕手の鈴木大智(4年、関東一)が「福山は昨日より今日の方が思ったところに投げられてました」と話すほどのタフネスぶりを披露。打線も9安打で6点を奪う快勝だった。
今春のリーグ戦では全14試合が複数投手による継投だった。入れ替え戦3回戦、この春の最後の最後で福山が完投勝利を挙げた。
8月、人工芝の新グラウンドが完成予定
昨年11月から東京都世田谷区のグラウンドの改修工事が始まり、全体練習が制限されるというハンディを背負っての戦いだった。それでも主将の鈴木は言う。
「環境を言い訳にはできないです。全体練習の時間は短くなりましたけど、その分、それぞれが自主練習やウェイトトレーニング、ピッチャーだったらフィールディング練習、野手なら振りこみなど、全員ができることに取り組んできました」
リーグ戦を終えてから入れ替え戦までの間は、社会人チームやほかの大学のグラウンドを借りて全体練習。8月には改修工事が終わり、人工芝のグラウンドが完成する。中畑清、石毛宏典、新井貴浩ら多数の野球人たちが4年間を過ごした旧祖師谷寮はすでに建て替えられ、部員たちは昨年3月から新しい寮で過ごしている。
「寮の窓から、グラウンドができてくるのが見えるんです。最初は全部ぐちゃぐちゃになって何もなくなって、どうなるのかなぁと思ってたら、フェンスができたりとか、芝がちょっとできたりとか。あそこがマウンドになるんだろうなぁとか、分かるようになってきて、それをみんな、ワクワクしながら眺めてます。できあがるのが楽しみです」と鈴木。
1部残留を決めた直後のロッカールームでは、大倉孝一監督がゲキを飛ばした。
「ナイスゲームだった。でも、入れ替え戦で満足しているようじゃダメだ。目指してるのは日本一。6位に終わった悔しさを忘れずに、日本一を目指して今日からスタートするぞ」
新しくなったグラウンドで、駒澤大学硬式野球部は12度目の大学日本一を目指してリスタートを切る。