野球

特集:第68回全日本大学野球選手権

【野球応援団長コラム】意地と意地のぶつかり合い、最高の決勝戦を見て

熱く燃えた日々も、あっという間に終わり。本当に夢のような時間でした!

4years.「野球応援団長」の笠川真一朗です!   全日本大学野球選手権もあっという間に終わってしまいました。本当に早かったです。連日、東京ドームと神宮球場へ通い、試合を見て部員の話を聞いて、自分の思いをすぐに原稿に書く。気付けばそれが僕の日々の楽しみや生きがいになってました。毎日すごく幸せでした。

今回4years.の野球応援団長に指名してもらい、このようにコラムを書いてみなさんに読んでいただけて、本当にありがたいことだと強く思います。ありがとうございます。

すみません。序盤に最終回のような雰囲気を出してしまいましたが、6月17日の決勝戦のことをしっかり振り返ります(笑)。

親のような気持ちで試合に臨む

朝起きたときから「今日で大学野球日本一のチームが決まる!」と、めちゃくちゃ気持ちが熱くなってました。

決勝のカードは明治大学ー佛教大学。ここまで「さすが東京六大学優勝チーム!」と言いたくなるほどの実力と持ち味をしっかり発揮して勝ち上がってきた明治大。そして終盤の大逆転で試合を勝ち取り、恐ろしいほどの勢いをつけながら決勝に駒を進めた佛教大。
「両チームとも後悔のないように力を出し切ってほしい」と、若干25歳にも関わらず、勝手に親のような気持ちで試合を見てました。

結果は6対1で明治大の勝利。細かい試合内容については今日も一切、触れません。これがポリシーになってきました。決勝戦ですから、それこそプロの記者の方にお任せします!笑

最高にかっこいい決勝戦

佛教大は明治大の好投手、森下暢仁君(4年、大分商)から4回以降、毎回ヒットを放ってチャンスをつくりますが、得点は最終回の1点のみでした。しかしその1点に佛教大の執念を強烈に感じました。ファーストの芝と土の変わり目に打球が当たり、イレギュラーして外野に転がっていくタイムリーヒット。どこか佛教大らしさを感じる、泥臭くも美しい得点に心を打たれました。

最終回、仏教大の八木くんが放った2ベース。意地を見せました!

佛教大は高くそびえる崖に必死に手をかけるように、何度も森下君に食らいついてチャンスを作っていきました。しかし明治大は「絶対に登ってこさせないよ」と、それをしっかり突き落としていく。そんな風に見えて仕方がありませんでした。逆転を繰り返して勝ち上がってきた佛教大に、最後に明治大という厚くて大きな壁が立ちはだかったのです。

しかし僕は6ー1という点差ほどの力量差を感じませんでした。「負けてても絶対ここから勝ちにいくぞ」という佛教大の意地と「いや絶対に優勝は譲らんぞ」という明治大の意地が最後までバチバチにぶつかる、最高にかっこいい決勝戦でした。技術では決して推し量れない部分が随所に垣間見えたのです。それも野球の魅力だと思います。

今日も僕が試合を見て純粋に思ったこと、そして気になった選手に話を聞いてきたので、そちらを書いていきます。

「自分たちらしく」を貫いた明治大

まずは明治大から。3得点した3回のあと、四死球でチャンスをつくってもなかなかヒットが出ず、点に結び付けられません。勝っている展開でも決しておごることなく、気を引き締めていました。主将の森下投手と西野真也捕手(4年、浦和学院)のバッテリーを中心とした堅い守りで相手のミスをどんどん突き、ピンチを切り抜けてきました。そしてその守りからしっかりいい雰囲気をつくることが、最終回の3得点につながったんだと思いました。この3点は佛教大の根気を断ち切るかのような得点に見受けられ、明治大の強い意地を感じました。

明治の森下投手は、決勝戦でも素晴らしい投球でした!

相手の佛教大はここまで、3点ビハインドの試合を3度もひっくり返して決勝に駒を進めていました。同じ3点差を試合中どう思っていたのか、明治大を支える学生コーチの川村勇斗君(4年、高知西)に聞いてみました。

「言い方は悪いかもしれませんが、試合前から『相手の勢いをつぶす!』という気持ちを持って挑みました。どっしりと自分たちらしく構えて、相手をのみ込むくらいの覚悟は常に持ってました。相手より声を出し続けることで、雰囲気をしっかりつくるようにしました。打線は途中なかなかヒットが出ませんでしたが、浮き足立つことなく、暢仁を筆頭に守りで我慢強く耐えられたから、最終回の得点につながったと思います」

これほどまでにチーム力って上がるんだ

学生コーチとしてチームを支えた川村君。彼もまた、かけがえのないものを得たはずです!

そして川村君は「学生コーチとして優勝をうれしく思います。これほどまでにチーム力って上がるんだな、と感動しました。新チーム結成のころに比べると、4年生を中心にチームに貢献できる人が増えました。選手みんなが自分の結果が悪いときでも、まずチームのことを考えられるようになった。一人ひとりの成長が日本一につながってうれしいです。この春日本一になったことを誇りにしつつ、日本一のチームが負けたら恥ずかしいぞという気持ちを持ってチームを締め直します。そうやってまた秋のリーグ戦に臨んで、優勝して日本一になりたいです」。今大会の喜びをかみしめて、次の秋に向けての思いまでハッキリとした口調で語ってくれました。

本当にうれしそうな笑顔を見せる川村君の表情はとても清々しく、力強かったです。彼も学生コーチとして明治大学の大きな戦力として立派に戦い、優勝に貢献しました。彼のうれしそうな顔を見ていると、僕もすごくうれしい気持ちになりました。日本一のチームの学生コーチとして、今後の活躍も楽しみです!

めちゃくちゃかっこいいキャッチャー

この決勝戦の勝敗を大きく分けたのは、四死球だと思います。佛教大は明治大に対して計12個の四死球を与えました。試合後、佛教大のキャッチャーの坪倉斗真君(4年、近江)に話を聞いてみました。準決勝での坪倉君を見て「このキャッチャーめちゃくちゃかっこいいな」と気になっていたので、純粋に話をしてみたかったのです。かっこいいなというのは顔の話ではありません。キャッチャーとしての姿勢です。

キャッチャーとして考え抜いて戦った坪倉君(右)

坪倉君は「相手の打線にはいい打者が並んでいます。序盤から甘く入らないように厳しいコースをついて投げないと打たれると思ってリードしました。先発の中山は四死球をそんなに多く出すピッチャーじゃない。今日はすごく力んでました。それをうまく立て直せなかったのは僕の責任です」と、ピッチャーをかばいました。

「普段から投げたい球を気持ちよく投げてもらえるように、いろいろ考えて工夫してます。もちろん相手によって対応していかないといけません。自分のチームの投手の魅力を生かしつつ、相手のこともしっかり観察して、どうやって打ち取るかという配球を考えてます。僕、野村克也さんが好きなんです。よく本を読んで勉強してます」。キャッチャーについて笑顔で語ってくれました。坪倉君の純粋でまっすぐな言葉を聞くと、この子はキャッチャーというポジションが本当に好きなんだろうなぁ、と思いました。

あきらめずに、頑張り続けること

「僕は高校のときも甲子園に出たけど、控えだったので試合には出てません。大学も野球推薦じゃなくて、受験勉強をして入ってきました。全国の舞台は初めてです。本当に手探りでプレーしながら、一つひとつ勉強できました。全国で通用することと、通用しないことをたくさん学んだので、もう一度秋に向かってまた勉強し直します」。坪倉君がここまで歩んできた過程も教えてくれました。

明治の強力打線にも果敢に立ち向かった中山投手

坪倉君は社会人チームにも内定しているそうです。「長く野球を続けることを目標にしてたんですけど、正直ここまで長くなるとは想像はしてなかったです」。少しほほえみながら、正直な気持ちを語ってくれました。野球が好きで自分で信念を持って必死に取り組めば、高校で花が咲かなくても、大学で咲くことがあります。

あきらめずに頑張り続けた坪倉君を、僕は心からかっこいいと思います。高校でうまくいかなかった選手が大学野球の世界で頑張って成長していく姿は、いま思い悩んでいる高校生の希望にもなるはずです。若い選手は、どうか希望や願望の芽を自ら摘むことなく、好きなことにはどんどん挑戦してほしいなと思います。そこでうまくいってもいかなくても、頑張ったということは自分の人生に残り続けます。それがいちばん大切なことです。

そして頑張り屋さんの坪倉君はここから秋の日本一に向けて、そしてまだ続く先の野球人生に向けて、この全国大会での経験を生かして再スタートします。

手探りが「経験」に変わった

佛教大学の主将、吉村颯君(4年、龍谷大平安)は「日本一になれなかったのは悔しいけど、純粋にここまで勝ち上がれたことはよかったと思います。全国は誰も何も経験してないので、みんなで手探りの状態でやってきました。全国に来たことで手探りの状態が『経験』に変わりました。この経験はものすごく大きいです。それをムダにしないようにしっかり生かして日本一になりたいです」と、この大会の収穫について話してくれました。

ベンチから選手に声援を送る主将の吉村君(中央)

吉村君はこんな話もしてくれました。「笠川さん、目標を書いて見えるとこに貼っとくのはほんまに大切やと思いました。これをロッカーにもベンチにもどこにでも貼って、いつでも見えるようにしてきました。チーム全員で目標を共有できたのが、この結果につながったのかなと思います」。そう言って指差したのは、コチラの貼り紙。

佛教大のベンチに貼ってあった張り紙。有言実行のためには不可欠です

有言実行するためには、そのための行動や思考が必要不可欠です。彼らはそれと向き合い、努力し続けて準優勝という快挙を成し遂げました。

大学としても、京滋大学野球連盟としても初の準優勝。これを経験した4年生はもちろん、これからを担う下級生たちにとっても大きな財産です。そしてこの大事な経験を持ち帰り、佛教大が更に成長していくことでリーグ全体の底上げにもつながると思います。彼らはものすごく大きくて立派なお土産を手にして京都に帰ります。

強いチームにふさわしい学生コーチ

佛教大の学生コーチ、軍嶋聡明君(4年、西南学院)は「ベスト4というチームの目標に対して常に計画性や具体性を持って取り組んできました。オープン戦でも『今日は5点取る』と決めたらどうやって5点を取るか。「今日は2点で試合を抑える」と決めたらどうやって2点以内に抑えるか。目先の勝敗にとらわれず、常に具体性を持って考えて取り組んできました。明治大の打線はたしかにいいけど、プロのバッターが9人並ぶわけじゃない。今日はムダな四死球が多かった。それに尽きると思います。だからそれを秋に生かしたい。僕はいろいろなことをチームに対して厳しく言うのでみんなは相当嫌がってると思いますけど、気にしません」。そう話してくれた軍嶋くんの表情は、本当に悔しそうでした。

「メディアの方は逆転勝ち、逆転勝ちと口を揃えて言うけど、自分たちはそれが試合でできるように、ベスト4を目標に戦ってきました。みんなが目標に対して大切に積み重ねてきたので、僕は当然の結果だと思います」と、チームの取り組みへの自信も口にしてくれました。佛教大の準優勝に、彼もまた大きな力で貢献しています。軍嶋君の口調や表情から、チームに対する熱い気持ちを感じました。明治の川村君も、佛教の軍嶋君も、ここまで全国の舞台で勝ち上がった両チームの立派な学生コーチです。強いチームには強い学生コーチがいます。ふたりとも強いチームにふさわしい、かっこいい男でした。

一つひとつを、人生の糧に

令和初代王者の座をつかみ、大学日本一の栄冠を手にした東京六大学野球連盟の明治大。そして準優勝は京滋大学野球連盟の佛教大。両校のみなさま、本当におめでとうございます。

決勝戦が終わり、閉会式で心に残る言葉がありました。それは全日本大学野球連盟の大橋英五会長が閉会式でおっしゃっていた言葉です。「大活躍した選手もいれば、痛恨のミスをした選手もいる。この大会中に経験した一つひとつのことをこれからの人生の糧にしてほしい」。本当にその通りだな、と純粋に思いました。

僕にとってもこの大会は人生の糧になる経験ばかりでした。
一生の思い出になる最高の大会に、感謝で胸がいっぱいです。
ありがとう全日本大学野球選手権大会。
ありがとう大学野球。

これからもよろしくお願いします!

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