野球

駒大の指名打者「お祭り男」の菅力也、盛り上げ役を担いつつブレークの春

1部残留決定後、ベンチに戻る途中で泣き崩れた

春の東都1部リーグにおいて、駒大の副将である菅力也(4年、崇徳)がマークした通算打率は3割5分1厘だった。得点圏打率は4割5分5厘。ともにチームトップの成績をたたき出した。この数字からも分かるように、菅の強みは勝負強さにある。自身を「お祭り男」と称し、チームの劣勢でもその明るさは変わらなかった。

自他ともに認める目立ちたがり屋

今シーズンのリーグ戦はすべて、指名打者での起用。ベンチにいる時間が長いからこそ「盛り上げるとか、大きい声を出すという部分は意識してます」と話す。そんな菅に、盛り上げ方を教えてくれた先輩がいた。学生コーチを務めていた石田猛人(2017年度卒)だ。石田も菅と同じようにチームの盛り上げ役だった。試合中、菅の横で声を出すべきタイミングなどを教えてくれたという。その教えを受け、ベンチが静かになってしまうような場面で積極的に声を出す。それが指名打者である菅のもう一つの役目だ。

菅の両腕には必ず、黄色いリストバンドがつけられていた。「目立ちたいからつけてます。俺はここにいるよ、っていうアピールです」と笑う。自他ともに認める目立ちたがり屋で、守備につくチームメイトに向かって声をかけ、時にはなかなか声の出ない後輩に声をかけて回ることもあった。

今シーズンは入れ替え戦も含めてすべての試合に出場したが、昨年まではなかなか出番に恵まれなかった。代打での起用が多く、歯がゆい気持ちでベンチから試合を見つめていた。「スタメンで出してくれれば、きっといま以上に打てる」。自分を使ってほしいという思いがあったと、当時を振り返った。

1部残留を決め、泣き崩れた

実際、試合に出てみて分かったのは勝つことの難しさだ。今シーズンはとくに勝ち星に恵まれず、一つも勝ち点を得られないまま2部との入れ替え戦行きが決定した。

「ここまで本当にキツかった。長かったです」。専修大との入れ替え戦で1部残留を決めた3回戦のあとに、菅はそう話した。入れ替え戦を迎えるまで、駒大には1カ月弱の準備期間があった。初戦は2部で16本の本塁打を放った専大打線に太刀打ちできず敗戦。しかし、2回戦は4対4の同点で迎えた最終回に4番の平野英丸(4年、静岡)がサヨナラ3ランを放つ劇的勝利。3回戦では福山優希(1年、八戸学院光星)の力投が打線の援護を呼び込み、1部残留を決めた。「二つ上の先輩たちが1部に上げてくれた。絶対に落ちてはいけないと思ってました」と菅。選手たちには相当なプレッシャーがかかっていた。普段チーム一、いやリーグ一明るいであろう菅も、それは変わらなかった。

入替戦3回戦の8回表に、ホームへ生還し喜ぶ菅(背番号3)

無事に1部残留を決めた試合の直後、菅はベンチに戻る途中で泣き崩れた。その横で菅の肩を抱いた主将の鈴木大智(4年、関東一)は仲間の涙に「勝つ喜びの少ないシーズンだったからこそのもの」と言った。菅に限らず今年の4年生は昨年まで出番に恵まれていなかった選手ばかりだ。鈴木は「試合に出て勝つ喜びというのは、また違う」と続けた。

菅は言う。「もし負けて『4年生は去年まであんまり出てなかったから仕方がないよ』と言われるのだけは嫌だった」。結果の伴わないシーズンで、2部降格の瀬戸際に立たされたプレッシャー。「出場機会が少ないから」という周りからの声も、選手に届いていただろう。その重圧の先に、光はあった。「自分たちがやってやる」。最後の年に、そう誓った最上級生たちが躍動した。

入れ替え戦で残留を決めた駒大。だが、リーグ戦で最下位だった事実は変わらない。「目に見えないミスもある」と鈴木。リーグ戦、入替戦を通じて明らかになった課題に向き合い、一つずつ潰していく姿勢はこれからも変わらない。菅は「これで日本一になる権利は残った。そこしか見ていません」と力強いまなざしで語り、神宮球場を後にした。

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