カーリング

SC軽井沢クラブJr.がカーリング・日本ジュニア選手権優勝 その強さの理由とは

日本ジュニア選手権で優勝し、笑顔で表彰を受けるメンバー(左から上野結生、荻原詠理、上野美優、山本冴、フィフスの金井亜翠香。すべて提供:カーリング SC軽井沢クラブ)

札幌市のどうぎんカーリングスタジアムで開催された第30回日本ジュニアカーリング選手権は、女子はSC軽井沢クラブJr.の優勝で幕を閉じた。名寄協会JCとの決勝では延長のエキストラエンドで、先攻だったSC軽井沢クラブJr.が得点を獲得し、スティールとなる劇的な結末。数センチの差で勝敗が分かれる、カーリングの魅力が凝縮された熱戦を見せてくれた。

軽井沢で技術を高め、昨年の雪辱を果たす

チームとしては2019年の結成年以来、2年ぶり2回目の優勝となるが、リードでスキップの山本冴、セカンドに上野結生、サードに荻原詠理、フォースが結生の姉である上野美優という現行のメンバーでは初戴冠。大会前に上野美優は準優勝だった昨年を振り返り「最後の最後に悔しい思いをしたので、今年は最後の最後は笑いたい。泣いたとしても嬉し泣きをしたい」と語っていたが、その思いを結実させた。

チームのストロングポイントは、アイスへの高いアジャスト(適応)能力だ。予選では2敗を喫するなど決して順風満帆な道中ではなかった。アイスリーディングに苦しみ、パス(ストーンの軌道)を読み違える場面がありながらも、プレーオフに向けて修正を重ねた。

荻原と上野結生のスイープの質は世代でもトップクラス

大会中のアジャスト能力の高さは、軽井沢という環境で育まれた部分が大きい。「練習環境が非常に素晴らしい。日頃から強化チームと練習試合ができるほか、軽井沢はNTC(文部科学省指定のナショナルトレーニングセンター)も兼ねているので、そこに合宿に訪れるチームとも試合ができて、助言をしてもらう機会も非常に多い」。そう指摘するのは西室雄二ヘッドコーチだ。

ホームリンク「軽井沢アイスパーク」では、男女のSC軽井沢クラブをはじめ、男子のTM軽井沢、女子の中部電力など、トップチームが常時、アイスに乗っている。ナショナルトレーニングセンターの練習拠点としても指定されているため、その他国内トップチームも集う。強化には格好のロケーションだ。これらのチームと練習試合をはじめ、トレーニング環境を共有する。技術や戦術など活きた情報を交換できるのはチームとしては大きなアドバンテージだろう。

アイスパークのある風越公園にはジムやプール、体育館などのトレーニング施設も完備している

学業と競技の両立も刺激に

その一方で、選手4人はそれぞれ違う大学に所属するクラブチーム、というチームのあり方もプラスに働いている。カーリングは4人という、チームスポーツとしては最少編隊ともいえる人数で連戦をこなさないといけない。国内外問わず1シーズンで新チームの誕生、あるいは解散や再編、選手の入れ替えなどは頻繁に行われるが、変化の機会が少ないチームによっては閉塞感や伸び悩みが生まれやすい側面もある。

その点、山本は日本女子大学家政学部通信教育課程、上野結生は長野大学環境ツーリズム学部、荻原は立教大学コミュニティ福祉学部、上野美優は日本女子大学文学部と、違う学校でそれぞれの分野を受講している。

山本は十分なトレーニング時間を確保するために通信教育課程を進路に選んだ。「裁縫とかは好きなので、そこで被服を学んでいます」と笑顔を見せる。上田のキャンパスに通う上野結生は「別所線(上田電鉄)は1時間に1本とかしか電車が来ないので、待ち時間を使って次の駅まで1時間歩いたりします」とトレーニングに替えている日も多いと言う。

都内まで新幹線通学をする上野美優と荻原は、長野新幹線での往復約90分ほどを主に睡眠と休息に充てる。それぞれ効率的に時間を使い、週2~3回のオンアイス、ジムでのトレーニングを週2回というトレーニング量を維持する。もちろん通学のメリットは時間の使い方だけではない。スポーツウェルネス学科を専攻する荻原に1年目のキャンパスライフについて質問すると「楽しいです」と即答。

「甲子園に出てたよという人がいたり、バトン(トワリング)とかハンドボールで全国大会に出場した友達ができたり。スポーツを色々な視点から見る学部なので、一流のアスリートがどのようにスポーツに関わっていくのか、選手として有益な情報をもらっています」

それぞれ違う大学に通う4人が集まることで、良い循環が生まれている

カーリングはショットごとに完璧が存在しない、ある意味では無限の思索的スポーツだ。違う分野から受けた刺激、多角的な視点は欠かせない。だからこそ文武両道を貫く彼女らが得る学びと刺激は、強化にいい還元と循環をもたらして、ここまでのチームに成長した。

今季の目標については「世界ジュニアでの優勝」とメンバー全員が口にする。これからチームは、来年3月にスウェーデン・ヨーショーピンで行われる世界ジュニア選手権に向けて国内でトレーニングを重ねる。あわせて5月に北見市常呂町で行われる日本選手権に出場すべく、地区予選からの戦いも始まる。軽井沢から世界へ。ジュニアの枠を超えてトップへ。4人は次世代カーラーの旗手になれるだろうか。

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