陸上・駅伝

〈対談〉女子陸上の新星・兒玉芽生と青山華依 地元の応援を背に世界へつなぐバトン

ライバルでもあり友人。兒玉選手(左)と青山選手

大分県出身で福岡大学4年生の兒玉芽生(こだま・めい)選手と、大阪府出身で甲南大学1年生の青山華依(あおやま・はなえ)選手は、短距離ではライバル、リレーではチームメートとして、日本の陸上競技をけん引する存在だ。世界の舞台でも勝負を繰り広げるふたりは、明治安田生命「地元アスリート応援プログラム」の支援アスリート。地元と競技への愛情にあふれるホープに、多くの人々に支えられて乗り越えた激動の2021年、さらに今後へと広がっていく夢について聞いた。

国を背負って戦うプレッシャーあった

――現在は日本代表のチームメートですが、初めて会った時のことを覚えていますか。

兒玉 私が大学2年生の時、福岡で行われた日本選手権大会の決勝で一緒に走り、はじめて存在を認識しました。高校生ながら勝ち上がってきたので、本当にすごい選手だと思いました。話すまでは、こんなにテンションの高い子だとは思いませんでした(笑)。

青山 私が覚えているのも、日本選手権の決勝です。私も、最初は真面目な方だと思っていたので、とても話しかけられませんでしたよ(笑)。すごく真剣な表情でしたから。

「世界の壁はすごく厚いと感じました」兒玉選手

――話すようになって、どんどん仲良くなっていったのでしょうか。

兒玉 数年前からあった世界大会に向けてのプロジェクトで出会ってからですね。私たちは2021年の3月から参加しました。4×100mリレーで、青山選手が第1走者で、私が第2走者でした。普段はテンションの高いムードメーカーなのですが、青山選手はやる時には絶対に決めてくれます。だから、バトンパスでも信頼が強まっていきました。

青山 馴染んでくるにつれて、私も兒玉選手の穏やかさがわかり、話しやすくなりました(笑)。第1走者と第2走者で組んだこともあって、頼れる先輩だなと思いました。

兒玉 穏やかさ!? でもそうですね、信頼関係は大事ですね。

――5月のポーランドでの世界リレーから一気に注目が高まりましたが、どんな1年間でしたか。

兒玉 これまでと違って国を背負って戦うことになるので、プレッシャーもありました。去年の日本選手権女子100mで優勝していたこともあり、自分の中では日本の試合では勝たなければいけないという気持ちが大きくなりました。

青山 3月にうまくスタートを切った後、ちょっとしたケガをしてしまいました。日本選手権であまり良い結果ではないのに世界大会のメンバーに選ばれたことで、周りの声もあり、落ち込むこともありました。とにかく、注目度はまったく変わりました。

――世界の舞台で勝負して、何を感じましたか。

兒玉 自分たちがやれることは最大限に発揮できたと思いますが、やはり世界の壁はすごく厚いと感じました。私たちリレーメンバーはすごく若い世代で、世界での経験がない選手が多く、足りないところだらけだと感じました。

青山 私も同じ思いです。力不足な部分は、たくさんありました。本番の舞台に立ってみて、それを実感することができました。

「子どもたちの声援が力になった」青山選手

――コロナ禍により世界中でスタンドに観客の姿がなく、やりにくい雰囲気だったのではないでしょうか。

兒玉 世界大会独特の雰囲気を味わえなかったことは、少し残念でした。ただ、無観客だから力が発揮できないということではなかったと思います。

――徐々に観客が入るようになり、応援される気持ちを思い出しますか。

兒玉 観客の前で戦うありがたみを感じました。パワーをもらえるというか、私は応援によってスイッチが入ります。

青山 私も応援が力になりますね。今年のある大会で、観客はいなかったのですが、小学生の部に出場していた子どもたちが声をかけてくれました。そうやって、見てくれている人に声をかけられるというのも、力になるんだなと感じました。

自分が走ることで地元の方に力を届けたい

――明治安田生命の「地元アスリート応援プログラム」も、おふたりを物心両面から応援しています。

兒玉 地元に応援していただけるという機会があることは、すごくうれしいです。今までは自分のために陸上をするということが多かったのですが、こういう厳しい時期だからこそ、自分が走ることで地元の方に力を届けたいとか、頑張っている姿で子どもたちがチャレンジする勇気づけになれたらいいなという気持ちになりました。おかげで、モチベーションを高く保てています。

青山 私も支援を受けられてうれしく思っています。また、資金面でも支援していただき、治療費や体のケアに充てることができて助かっています。疲労が積み重なるとケガする確率が高くなるので、体のケアは欠かせません。

――兒玉選手は、昨年までアルバイトもされていたそうですね。

兒玉 今年はスケジュール的に厳しかったのでしませんでしたが、それまでは仕送りももらわず、奨学金とアルバイト代でやり繰りしてきました。青山選手と同じく、競技面で治療やケアを増やす必要がある時には、節約して生活するしかない、といった状況でした。今は支援をいただくことで、栄養的にもバランスの良い食事をとれるようになりましたし、必要な時にはしっかり治療を受けることができます。

まずは2022年の米オレゴン世界陸上が目標と話すふたり

「もっと結果で恩返ししたい」と思うように

――世界大会に出た後には、おふたりの地元も盛り上がったことでしょう。

兒玉 地元の市長さんへ表敬訪問に行きました。大会前はコロナ禍などで挨拶に行けなかったのですが、地元の方々にオンラインで応援してもらい、似顔絵入りの小旗や缶バッジもつくっていただきました。中学時代や高校時代にお世話になった陸上関係者の方々にも、「良かったね」「職場で皆と一緒に応援していたよ」と声をかけてもらいました。地元から世界大会に出た選手が少なかったので、喜んでくれました。

青山 私もメンバーに選ばれた後、母校の小学校や高校に報告に行きました。小さい子は誰だか分からないようで一緒に遊んでいるだけでしたが、お話しができました。大会後は、通っている大学の職員さんたちに報告をしました。

――「地元アスリート応援プログラム」の一環として、クラウドファンディングも実施されていますが。

兒玉 はじめてだったので、「どれだけ支援していただけるんだろう」と不安の方が大きかったのですが、まずは地元の方々がすごく支援してくださいました。さらに地元以外の方も応援してくださっていることが分かり、「もっと結果で恩返ししたい」と思うようになりました。それに、走る姿だけではなく、自分自身の振る舞いも見られていると思うので、そうした面でもアスリートとしてもっとしっかりしなければいけないという気持ちになりました。

青山 どういう方に支援していただけているのか見えるので、それがまた力になります。私も本当に支援してくださる方がいるのか不安だったので、うれしかったです。

兒玉 このプログラムの支援アスリートの人数は限られています。その分、結果を残さないといけないという気持ちも強まるし、アルバイトをしていた頃と比べて陸上に集中できる環境が整いました。支援を受けられて、本当に良かったと思います。

――今後はどんな目標に挑みますか。

兒玉 まずは来年の世界陸上への個人種目での出場と、リレーでの日本記録更新です。さらに、勝ち上がっていくことを狙います。

青山 難しいかもしれませんが、私も世界陸上での個人種目の出場を狙っていますし、リレーのメンバーにも選ばれたいです。冬季が明けると一気に試合が始まり、2022年はハードスケジュールなのですが、メンバーに選ばれるように頑張ります。

福岡大学で行われた対談は終始和やかな雰囲気

【profile】
こだま・めい/1999年6月8日生まれ。大分県臼杵市出身。小学1年生で姉の影響で陸上クラブに通うようになり、小学5年生での100m優勝を皮切りに、全国大会の常連に。高校3年生でインターハイと国体で2冠を達成した。福岡大学に進学後も2年時に日本選手権200mで優勝。翌年には日本インカレで3冠など活躍を続け、2021年には日本代表として東京五輪で女子4×100mリレーを走った。卒業後も陸上競技を続け、世界での飛躍をめざす。

あおやま・はなえ/2002年8月26日生まれ。大阪府大阪市出身。高校時代にリレーでインターハイ優勝経験のある父と、走り高跳びの選手だった母のもと、幼少時からスポーツに親しむ。小学5年生から陸上競技に取り組み、高校2年生だった2019年には日本選手権100mでの3位入賞に続き、国体の女子100mで優勝。2021年に入り、高校卒業直前に100m走で自己ベスト更新、5月の世界リレー大会では日本チームの決勝進出に貢献など、世界の舞台でも開花。東京五輪では女子4×100mリレーを走った。

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