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特集:北京冬季オリンピック・パラリンピック

北京パラリンピック、戦時下の幕開け 「平和の祭典」脅かされる理念

北京冬季パラリンピック開会式で日本選手団の旗手を務める川除大輝(撮影・柴田悠貴)

 ロシアのウクライナへの軍事侵攻が激しさを増す中、北京冬季パラリンピックが4日、幕を開けた。ウクライナの選手は当初の予定通り全20人が出場。北京入りしていたロシアとベラルーシの選手は、出場が認められなかった。

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 ウクライナの選手にとっては、不安を抱えながらの大会になる。代表最年長のビタリー・ルキアネンコ選手(43)は、母国にいる妻と娘と連絡が途絶えたという。「家族に何が起こったのか非常に心配している」と同国パラリンピック委員会の広報担当が明かした。首都キエフから避難する車の渋滞がひどく、通常なら車で約7時間で着く場所まで、30時間かかった人もいるという。

 パラリンピックは1948年、第2次世界大戦の負傷兵を受け入れていた英ロンドン郊外のストーク・マンデビル病院で実施された競技会が始まりだ。脊髄(せきずい)に損傷を負った兵士のリハビリテーションを起源とする大会は、多様性を認め合い、誰もが個性や能力を公正に発揮できるよう願いがこめられた「平和の祭典」に発展した。

 今、その理念が脅かされている。昨年12月にロシアを含む173カ国が共同で提案し、国連で採択された「五輪休戦決議」は守られなかった。国際パラリンピック委員会(IPC)は2日、ロシアとベラルーシの選手について、個人資格となる「中立」の立場での出場を認めたが、翌3日に撤回に追い込まれた。両国の選手にとって、国の責任を個人で負う形となった。

(北京=藤田絢子)

=朝日新聞デジタル2022年03月04日掲載

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