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「日本人、戦えるじゃん」 山中智瑛選手が語るGTの魅力と普及への思い

意気込む山中智瑛選手

「グランツーリスモ」(GT)の日本人選手たちの間で、精神的支柱となっている山中智瑛選手。どのようにしてGTと出会ったのでしょうか。普及への思いとともに、聞きました。

最初は「遅かった」

ツイッターのアカウント名は「やまどぅー」(@yamado_raciong38)。

中学校時代の友人がつけたあだ名で、「やま」は「山中」の「山」だそうですが、「どぅー」が何なのかはいまだに分からないそうです。

ゲーム歴は、2、3歳の頃からとか。親が買ったスーパーファミコンが家にあり、「スーパードンキーコング」などをプレー。4、5歳の頃、初代のGTがいとこの家にあり、「やってみたら面白かった」と話します。

「いろんな車に乗れて、うれしいな」と思っていたところ、14歳だった2007年に「GT5プロローグ」が発売。オンラインレースに初めて挑戦してみたところ、「やってみたら、遅かった」。

トヨタチームの一員として走る山中智瑛選手

でも、いろんな人たちの走り方を見て学ぶうちに次第に上達し、「中3の終わりには速く走れるようになってきて、高1で出たオンラインのタイムアタックの大会で10位に入った」。

10位まで、スーパーGTの年間パスが景品となっていたそうで、「必死こいてやった。高校生だったので、親と一緒に行くのが精いっぱいだったけれど、普通では入れない場所に入れました」と振り返ります。

GTの魅力は「公平」であること

GTの魅力について、好きな車に乗れることとともに、世界中のサーキットなどがそのままに再現されていることを挙げます。

「普通ならば、そういう場所で走るとお金がかかるのに、誰でも体験できるものになった。実際の車でサーキットを走った時も違和感がなかった。音、コーナーワークと、違和感を抱かない。そこがすごい」

2018年からワールドツアーに参加し、初めて世界の強豪のオフラインで対戦。「日本人、戦えるじゃん」と感じたそうです。

「リアルだと難しいけれど、GTの世界は公平で、誰もが自身の才能を世界にチャレンジできる場所」

ツアーを連戦する間に、他の国の選手たちとの交流も深まります。

「最初は緊張したけれど、みんな顔なじみ。次第に雰囲気が柔らかくなった。言葉はそこまで通じないが、みんな一緒のレースを戦えば、こういう人だと分かる」

会場前で集合写真に収まるシドニー大会の出場選手たち

普及への思い

昨年転職し、栃木から東京まで通勤。

転職先はゲーミングに関するサポートを積極的に実施する企業で、トッププレーヤーサポート活動の一環として、山中選手が学生時代から、ステアリングコントローラーなどのデバイスサポートをしてくれていました。

前職と選手活動との両立が厳しくなりつつあった際、両立を支援する姿勢を示してくれたことを受け、入社を決めたそうです。

通勤時間は長くなりましたが、練習時間は最低でも1〜2時間は確保できるように。

レースのオンライン予選に参加する際は、業務の割り振りを調整してくれてレースに臨む態勢を整えてくれたり、会社に大会と同じ環境を用意してくれたり、大会直前には業務のほとんどの時間を練習時間に当てさせてくれたり、と支援体制が充実しているそうです。

「学生時代ほどの練習時間は取れなくなりましたが、これまでの経験を生かすことで、練習メニューの効率化を図ることができるようになり、速さを維持することができています。他のプレーヤーと比較しても少ない時間、少ない走行距離でも、他のプレーヤーと戦える速さを手に入れることができました」と語ります。

将来の目標としては、選手として勝ち続けることとともに、普及への思いを挙げました。

「自分はモータースポーツが好きで、どうしたらみんなに見てもらえるのか、知ってもらえるのか、というのをすごく大事に思っている」

小さい子どもたちが習い事をする中に、GTが入れば、と願っています。

「1回触れてもらい、通過点になってくれればうれしい。好きになってくれて、いずれはライバルになってくれるかも」

国体の文化プログラムにGTなどのeスポーツが入ったことで、いろんな地方自治体が注目するようになったことを、チャンスととらえています。

「みんなが訪れるような場所で体験会や小さな大会を開き、そこで活躍して楽しんでもらえるような場所づくりが大切。どうやったら敷居を低くしていけるか、やってみたい」と話しています。

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(文・永田篤史)

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