陸上・駅伝

特集:第101回関東学生陸上競技対校選手権

國學院大・伊地知賢造が男子2部ハーフマラソン優勝「結果を残せて自信になった」

伊地知はガッツポーズを掲げてゴールした(撮影・すべて藤井みさ)

第101回関東学生陸上競技対校選手権大会 男子2部ハーフマラソン

5月22日@国立競技場をスタート・ゴールとする周回コース21.0975km
1位 伊地知賢造(國學院大3年)  1時間02分50秒
2位 花尾恭輔(駒澤大3年)    1時間02分56秒
3位 西久保遼(青山学院大4年)  1時間03分01秒
4位 山野力(駒澤大4年)     1時間03分03秒
5位 横田俊吾(青山学院大4年)  1時間03分04秒
6位 ルカ・ムセンビ(東京国際大4年)1時間03分10秒
7位 田中悠登(青山学院大2年)  1時間03分10秒
8位 鶴元太(國學院大2年)    1時間03分14秒

5月22日の関東インカレ最終日、男子2部ハーフマラソンで國學院大學の伊地知賢造(3年、松山)が優勝した。國學院大の関東インカレ種目優勝は2019年のハーフマラソンで優勝した土方英和(現・Honda)以来。レース後、「ホッとしている」と素直な感想をもらした。

躍進続く國學院大 10000mで中西大翔と平林清澄、1500mで鈴木景仁が入賞

冷静にペースを刻み、15km過ぎで飛び出す

9年ぶりの国立競技場開催となった今大会。ハーフマラソンは競技場をスタート・ゴールとし、神宮外苑の軟式野球場のまわりを19周するコースで行われた。男子2部には54人が出場。レース序盤は大きな集団が形成され、細かいペースの上げ下げがありつつ進んだ。周回を重ねるごとに集団は徐々に小さくなっていったが、15km手前ではまだ先頭集団は10人超だった。

15kmを過ぎたところで伊地知はペースを上げ、ひとり集団から抜け出した。そのまま先頭を走り、18km過ぎでさらにペースを上げて後続を引き離す。リードを保ったまま競技場に戻り、ガッツポーズで喜びを表現しながらゴールした。

伊地知(5番)は冷静にイーブンペースで走り続けた

集団の中で位置取りを前後に変えていたように見えた伊地知だが、実際は集団のペースが変化していたため、自分のペースを刻みながらイーブンペースで走っていたという。その溜めが生きて、15kmでの飛び出しにつながった。前田康弘監督からも「レース中はとにかく溜めて。後半勝負だ」と言われていた。

トラックに入ってからのスパートにはあまり自信がないといい、その前に勝負を決めたいと考えていた。「誰しもが『仕掛けるのは早いだろ』と思ってたと思うんですけど、自分の中では『いけるな』と思っていたので、それがうまくハマった感じです」と充実した表情でレースを振り返った。

学生ハーフ入賞も悔しさ、地道な努力が実を結ぶ

伊地知は3月の学生ハーフマラソンに出場して8位に入賞したが、チームメートの平林清澄(2年、美方)が優勝、中西大翔(たいが、4年、金沢龍谷)が2位となり、6月に開催予定だったワールドユニバーシティーゲームズの代表に内定した(その後、大会の延期が決定)。チームメートが活躍する中での8位入賞には「まったくうれしくなかった」と言い、そこから作り直そう、と地道に努力してきた成果が実を結んだ。「上半期ここに賭けるところもあったので、素直に勝ててうれしいです。今シーズン入ってから思うように結果が残せていなかったので、(今日勝てて)ホッとしています。一つ形にできたので、少し自信がつきました」と話す。

思うように走れない悔しさから、地道に努力を重ねてきた

学生ハーフで悔しい思いをしてからは、トラックのタイムを持っていないこともあり、まずは狙っていこうと考えて4月25日の日体大記録会10000mに出場したが、29分00秒90と自己ベスト(28分56秒08)も更新できずだった。「そこから自分のやるべきことを見つめ直して、補強もしっかりやって、ちょっとずつ変えてきた感じです」。パーソナルトレーナーとも体の使い方などを相談して、このレースに向けてシフトしてきた。

チームでも個人でも、大きな目標に向かって

箱根駅伝後に3年生ながら副将に任命された伊地知。副将は伊地知と鈴木景仁(3年、國學院栃木)の2人体制だ。鈴木は2日目の男子2部1500m決勝で4位に入賞。初日の10000mでは中西が5位、平林が6位と結果を残した。そのことは刺激になりましたか?とたずねると、「もちろんそうですね」と大きくうなずく。「この4日目まで短距離、長距離含めて頑張ってくれていたので、かなり熱い思いはありました」。副将になってからはチームを広い目で見なければいけないと考え、コミュニケーションを大切に、チームづくりという面をかなり意識して取り組んできたと話す。

副将としてチームの雰囲気づくりにも取り組んでいる

関東インカレでの種目優勝は19年の土方以来ですね、と話を向けると「本当に光栄でしかないし、本当にうれしいです」と笑顔を見せる。伊地知が入学する前、土方たちの代は関東インカレからの勢いそのままに出雲駅伝優勝、箱根駅伝総合3位の結果を残した。どうしても強い代として比べられることもあると言うが、「自分達は自分達らしく、自分の色に染められるように。チームスローガンも『変革』なので、いいところは残して変えていくべきことは変えて、ということで頑張っています」

今年のチームの目標は「3大駅伝表彰台」。そこの目標に対しての現在地は、と問われると「ちょっとずつ形になってきてると思うけど、選手の層を考えたらまだまだだと思います。夏合宿を超えて、もう1回勝負できるチーム体制を作っていきたいです」

マラソンに挑戦し、MGC出場権獲得を。鍛錬の夏を迎える(中央が伊地知)

個人では今年、マラソンにも挑戦すると表明している伊地知。昨年の全日本大学駅伝、アンカーの8区で区間賞を取った時に、前田監督に「マラソンに挑戦するのはどうだ」と声をかけられたという。将来的にマラソンを走りたいと考えていたため、話をもらった時にも戸惑いなく受け入れられた。今回のレースもマラソンに向けての収穫となった。夏はそこを意識して走り込み、距離を伸ばしていくつもりだ。タイム的な目標は置いていないが、順位にこだわってMGCの出場権を取っていきたいと目標を語る。

高校の時はほとんど実績もなく、無名だった。「大学に入ってから泥臭くやってきて、高校では勝てなかった選手たちに勝つことができて本当にうれしいです」。努力を続けて力を伸ばしてきた伊地知。今後もチームの中心選手としての活躍が楽しみだ。

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