ラクロス

立教大・桑木麻衣主将、歴代の主将が見せた背中、自分だからこそのリーダーシップを

2022年度リーダーを務める12人(内2人は不在、下段右から2人目か桑木)

7月、3年ぶりに行われた世界選手権で日本代表は目標としていた5位入賞を果たした。立教大学女子ラクロス部ULTIMATES(アルティメッツ)からはOGを含め5人(内2人は6人制ラクロス代表メンバー)が日本代表に選出された。現役メンバーからはエースを務めるジョーンズ萌仁香(4年、東京成徳)が出場。1年生の頃から代表メンバーの主要アタックとして得点に絡んできた彼女が、日本代表でもエースを担った。

ジョーンズら4年生は、3年前に達成した創部初の全国学生日本一を知る現役最後の代。なかでも日本一奪還に闘志を燃やすのが、今年度の主将を務める桑木麻衣(4年、東京成徳)だ。副将として迎えた昨年度の関東リーグ1部FINAL4。立教大は最終クオーター残り20秒で逆転を許し、ベスト4で敗退した。「来年こそは自分が主将として日本一を奪還する」。試合終了をベンチで迎えた桑木は覚悟を決めた。

「おりさんみたい」な主将に

部にはリーダーと呼ばれる幹部集団がいる。部員全員の前でスピーチし、選挙投票によって例年10人ほど選ばれる。学年やAチーム・サテチームといった属性は問わない。練習の統括や係活動の管轄を始め、月に一度行われる全体ミーティングの進行等、幅広く部の運営に尽力している。

ラクロスの強豪・東京成徳高校で部長を務めた桑木。その経験を生かして部に貢献する一つの道がリーダーだった。1年生の時から主将を視野に入れ、歴代の主将を見て自らの主将像をイメージしていたという。なかでも大きな影響を受けたのは、2020年度主将を務めた折笠みきだ。

折笠(中央)と桑木(左)は“親子制度”と呼ばれるメンター制度で“母娘”の関係だった

「どうしたらおりさん(折笠)みたいになれるのかな」。同じAチーム所属、同じリーダー。2人は境遇が似ていた。ラクロスのこと、組織のこと、プライベートのことも折笠には相談できた。折笠を母と慕い、その大きな背中を追った。しかし、同時に葛藤もあったという。折笠に近づこうと真似をするほど、自分らしさから遠ざかる。主将就任早々、らしくない自分に1人、生きづらさを感じる日々が続いた。

大川コーチの言葉に救われ

ある日の練習終わり、見兼ねた大川祐季コーチが声をかけた。「まい(桑木)がおりちゃん(折笠)みたいになれないように、おりちゃんもまいがやりたいリーダーシップはできないんだよ」

立教が明治を破って関東制覇 立教の1番を背負った櫻井美帆と大川祐季の絆

大川コーチは、立教大学女子ラクロス部OGで折笠とは同期。学生日本一を達成した3年前、史上初めて3年生でエースナンバー1番を付けた彼女も、桑木と同じように1人苦悩の中にいた。「1番だから弱いところを見せちゃいけない」。プレッシャーに押しつぶされそうな自分を何とか奮い立たせる毎日だった。そんな弱さも受け入れようとしたのが折笠だ。誰にも弱点があるから、誰かに頼ればいい。「もっと本音で言っていいよ」。折笠からのそんな声がけに心が軽くなったという。「おりちゃんみたいにならなくていいじゃん」。折笠のリーダーシップに影響を受けた大川コーチの言葉だからこそ、桑木の胸に響いたのだろう。

大川(中央)は4年生になってから、悩みを周囲に話せるようになった

2年前、主将だった折笠は部の特徴を“多様性”で言い表した。「立教って多様性なんですよ。誰が主将になってもいいチームが立教なんですよ」。もし誰もがうまいチームを目指していたら、1番うまい人が主将になる。あるいは努力というスローガンがあったら、1番努力できる人が主将になるだろう。しかし、立教大学女子ラクロス部は「ずっと強い立教」「社会で活躍する女性を輩出する」という2つの理念に向かい、一人ひとりが最善を尽くし、それぞれの道で一流を追い求めてきた。

3年ぶりの集客試合をみんなで盛り上げる

2020年度には折笠を中心としたリーダー発案の下、組織形態をスター型組織と名付けた。三角形のヒエラルキーではなく、どこにでも突出でき、無数の頂点を持つ星。誰の真似でもない、自分らしいリーダーシップを発揮していこう。桑木らしさを追求することが翻って、真の折笠らしさに通じていた。

今年度より保護者への広報として“ULTIMATES通信”の発行を始めた(画像提供・立教大学女子ラクロス部)

そんな桑木の強みは、保護者とフラットにコミュニケーションが取れること。ここ2年、コロナ禍で保護者の観戦は叶(かな)わなかった。だが今年度、晴れて有観客で行われた明治大学や同志社大学との定期戦では多くの保護者が応援に駆けつけ、現状を見てもらうことができた。8月7日開幕した関東リーグも有観客で行われている。今年こそ、ULTIMATESファミリーの目の前で学生日本一を奪還したい。そして、保護者との交流を盛んにし、ULTIMATESファミリーの結束を高めたい。

桑木は立教大代表チームの1枚目ドロワーとしてフィールド上でも躍動する

今年度のリーグ戦では3年ぶりに集客試合も予定している。舞台は整った。部員159人の織りなす“ULTIMATES星”の中心で、桑木は唯一無二の輝きを放つ。

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