ラクロス

慶應が5度目の学生日本一、4年生の鈴木勧智HC“大きな責任”を胸に日本一へ挑戦

慶應は第1Qから関学を突き放し、強さを見せつけた(撮影・全て松永早弥香)

第12回ラクロス全日本大学選手権大会 supported by Simplex Holdings, Inc.

11月28日@駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場(東京)
慶應義塾大 9-3 関西学院大
慶應義塾大が3大会ぶり5度目の優勝

ラクロスの全日本大学選手権が2年ぶりに開催され、11月28日には男女の決勝が行われた。男子は慶應義塾大学と初優勝を狙う関西学院大学が対戦し、9-3で慶應が3大会ぶり5度目の優勝を果たした。優勝回数はこれで慶應と早稲田大学が並んで5回となった。

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慶應が第1Qで一気に逆転

第1クオーター(Q)、慶應はAT(アタック)小川司(3年、慶應NY)らが積極的にシュートを打ったが、相手G(ゴーリー)に阻まれ先制点ならず。関学がパスカットから一気に攻める。MF三坂天真(てんま、3年、関学)が相手DFを挟んだ正面からシュートを放ち、先制点をあげた。しかし慶應のMF貝柄海大(うた、3年、大宮)がすぐにランニングシュートで追いつき、試合再開のFO(フェイスオフ)を慶應がものにすると、連係プレーからAT中名生(なかなお)幸四郎(3年、慶應)が逆転シュートを決めた。慶應は1Qのうちに4点を重ねたが、第2Qは攻防戦が続き、ともに1点ずつあげ、5-2で試合を折り返す。

第3Q開始のFOを慶應のFO(フェイスオファー)阿曽寛之(4年、慶應)が仲間につなぎ、慶應の攻撃からスタート。関学ベンチメンバーも「7番(小川)が来てるよ!」などと声で選手たちを支え、守りを固める。膠着(こうちゃく)状態が続く中、慶應が2点を入れて7-2で最終Qへ。慶應はファウルやアンスポーツマンライクコンダクト(クロス違反)で一時退場者が続いたが、主将のDF八星輝(4年、慶應)やDF中根之斗(3年、慶應)らが守りでチームに貢献し、関学の怒濤(どとう)の攻撃を1失点にとどめた。慶應は2点を追加し、9-3で力を見せつけた。

八星(22番)は相手にディフェンスでプレッシャーを与え続け、関学の流れを絶ちきった

3大会ぶりの優勝に、主将の八星はまず「素直にうれしいです」と言った上で、「(クラブとの)全日本で優勝することが自分たちの最終目標なので、ここで出た課題を修正して必ず日本一になりたいです」と淡々と答え、すでに気持ちは12月19日の全日本選手権に向けられていた。ただ駆けつけてくれた応援団やチームメート、友人や家族たちを前にしてからは、「皆さんの支えのおかげで優勝できました!」と満面の笑みを浮かべた。

HCの業務を細分化するためにも自分がHCになる

慶應は今年、4年生のけがが相次いだこともあり、3年生以下に頼らないといけない場面も多かった。実際、2021年男子20歳以下日本代表にも選ばれた中名生幸四郎や貝柄をはじめ、小川司やFO石井ヴィクトール慶治(慶應NY)など、3年生がチームの主力として活躍してきた。AT中名生三四郎(4年、慶應)も「僕たちは見守る感じで、それぞれが伸び伸びとプレーしてくれたと思う」と下級生をたたえる。

石井(右)はFOを取り切り、自ら攻めるという積極的なシーンもあった

その一方で4年生たちはチームの一体感を大事にし、幹部の独断ではなく話し合いを設けながら部を運営してきた。その1人、鈴木勧智(4年、慶應)はラストイヤーの今年、データ分析を担うアナライズスタッフ(AS)を兼任しながら、ヘッドコーチ(HC)としてチームを支えた。慶應のHCはこれまでOBが担うことが多く、「学生HCは近年いなかったと思います」と鈴木は言う。

鈴木は高校時代、ラクロスのプレーヤーだったが、大学では「スタッフとしてチームをサポートしたい」と考え、ASを希望して入部した。ただASとしてチームを見ていると、HCが担うべき業務があまりに多いことが気になり、「自分がHCをやって、OBにはコーチとしてオフェンスやディフェンスの戦術に集中してもらえたらいいんじゃないか」と思うようになったという。実際、鈴木は上級審判の資格を取得し、ルールを把握しているのはもちろん、審判ともコミュニケーションがとれるようになっていた。チームメートにそれとなく自分の意向をアピールしつつ、八星から「やってみたらどうだ?」と背中を押されたことで、鈴木はHCになることを決意した。

全国に挑めなかった去年の4年生の分も

OBのコーチにはオフェンス・ディフェンスを任せ、鈴木はフライ管理(試合中の選手交代)や審判とのコミュニケーション、フィールド全体の指揮、クロスチェックの申請など、HCとして様々な業務を担った。「試合中はいろんなことが同時に起きるので、細分化することでやりやすくなったと思います」と鈴木は言う。しかし卒業してからもHCを続けるという考えは今のところないようだ。1つは後輩たちに自分が新たに得た知見も含めて引き継ぎたいという思いから。もう1つ、「ちょっとしんどかった」というのも正直な気持ちだ。「自分がミスをするとチーム全体に影響を与えてしまいます。試合前は普通に緊張しますし、HCとして大きな責任があります。だからこの1年頑張ろうという気持ちでやってきました」

鈴木(前列右端)ら4年生が先輩たちの思いも引き受け、チームを1つにまとめてきた

昨年はコロナ禍で全国大会は開催されず、リーグ戦の代替大会として関東学生ラクロス2020特別大会のみとなった。慶應は早稲田を決勝で破って優勝し、昨年の4年生たちは「日本一」の夢を後輩たちに託した。1年前、同じこの駒沢で先輩たちが話してくれた言葉を鈴木は今も忘れていない。「学生日本一は素直にうれしいんですけど、八星も言っていたように、社会人を倒すのが目標なのでまだ道半ば。次はしっかり勝ちきりたいです」

歴代の先輩たちの思いも背負い、12月19日、クラブチャンピオンとの全日本選手権に挑む。

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