ラクロス

連載:ラクロス応援団長・おばたのお兄さんコラム

「おばたのお兄さん」誕生は、あの時、肯定してくれたラクロス部のみんなのおかげ

日体大時代のある出来事が、その後、「おばたのお兄さん」の誕生につながった(撮影・全て齋藤大輔)

最近受けたとある取材で、お笑い芸人になろうと思ったきっかけを聞かれた。いくつかあるのだが、決め手となったのは日本体育大学4年生の冬に出場した「R-1グランプリ」と答えた。

このお笑いの大会は誰でも参加でき、4年生だった僕はラクロス部のみんなからの後押しもあり、出場することにした。そこで受けたプロと素人との差に驚愕(きょうがく)し、感銘を受けてお笑い芸人の道を志した。きっかけはこれだが、そもそもなぜ僕が素人にもかかわらずこのような大会に参加したのか。これは、日体大で「ラクロス部」に入っていた影響がとても大きい。「ラクロス部なのに、なぜお笑い?」と思うだろう。しかし、大学ラクロスの環境が今の僕をつくったと言っても過言ではない。

おばたのお兄さんの「ラクロス4years.」

「日体大の一発芸のやつ」として浸透

日本における大学ラクロスは、12、13年前の僕が在学時、今よりも更にまだまだマイナースポーツで、ラクロスの普及活動自体を学生が一生懸命していた。ラクロスの大会運営や行事などは学生が中心。ラクロスの認知度を上げるために、各大学の選手達が手と手を取り合う。大学は違えど、ラクロスをしている学生としての仲間意識は非常に強かった。

1年生の時には、フレッシュマンキャンプという多くの大学が集まる合宿がある。慶應義塾大学や早稲田大学、東京大学、そして我らが日体大など、関東の大学15校ほどが参加し、2泊3日で技術の向上や他大学との交流を深めていた。また春休み期間には、全国から大学ラクロス部が集結し、これまた合宿形式での大会が行われる。

これらの大会合宿に欠かせないのが、夜の交流会である。この交流会では、各大学対抗「一発芸大会」という地獄のイベントがお決まりであった。このイベントが、お笑い芸人「おばたのお兄さん」の誕生に拍車をかけることとなる。

自分の一発芸をきっかけにして、他大学に知られる存在になった

1年生でのフレッシュマンキャンプの一発芸大会で、日体大代表として僕はものまねショーをすることとなる。吉本の先輩芸人の「たむらけんじ」さんの格好をしながら、アニメのものまねを中心に繰り広げて爆笑をかっさらった。自分で言うことではないと分かっているが、あの日、僕は爆笑をかっさらったのだ。この日から僕は、ラクロス選手として他大学に名前を覚えられたのではなく、「日体大の一発芸のやつ」として関東大学ラクロス界に名を轟(とどろ)かせた。これが4年間続き、R-1グランプリへの挑戦につながるというわけだ。

みんなが肯定してくれたから、挑戦できた

ラクロス部で先輩や後輩、同期のみんなの前でギャグやものまねをやっていた日々を思い出す。きっと、毎回毎回面白かったわけではないし、「何やってんだよこいつ」と思っている人も中にはいたと思う。しかし、僕のことを腐すような人間はひとりもいなかった。ノリノリの僕を、みんなが肯定してくれた。挑戦する者を肯定することは、ときに、その人に何か新しいきっかけを与えることになる。そんなみんなの肯定に僕は支えられていた。

僕の場合はお笑いだったが、これは全てのことに共通することである。スポーツでも仕事でも教育でも恋愛でも。肯定することは人のやる気を促進させるし、逆に否定することは、その人のやる気にブレーキをかけることになる。あの時、ラクロス部のみんなが否定的なことを言っていたら、絶対に僕は人前で何か面白いことをしようという気持ちにはならなかったし、むしろ恥をかかないようにしようという保守的な気持ちになっていたはずだ。僕の行動を肯定してくれたあの時のラクロス部のみんなに、改めて感謝したい。みんなの肯定が、「おばたのお兄さん」が誕生した理由のうちのひとつなんだ。

聖火ランナーとして地元・新潟を走り

6月4日に僕は東京オリンピックの聖火ランナーとして、地元の新潟県南魚沼市のコースを走らせていただいた。この日の聖火リレーのスタートは新潟県の糸魚川市で、トップランナーは吉本の先輩でもある横澤夏子さん。聖火リレーは悪天候ながらも順調に行われ、僕の元に火が届いた。

ありがたいことに僕はこの日のアンカーで、トーチ皿という点火台に聖火をつける係。たくさんの報道陣や地元の人に見守られながら、盛大なイベントとなった。スポーツにいくどとなく救われてきた身としては、スポーツの最大の祭典であるオリンピックに地元で関われたことは、この上なくうれしかった。

みんなのおかげで自分が挑戦できたように、今度は自分が誰かのきっかけになれたら

ここまでたくさんの人たちが僕のやることを肯定してきてくれたから、僕のやる気を引き出してくれたから、今があり、こんな夢のようなことが叶(かな)ったんだと思う。だから今度は僕が、誰かの何かを頑張るきっかけとなる言葉をかけて、誰かの夢の実現に影響を与えられる人間になりたい。

ラクロス応援団長・おばたのお兄さんコラム

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